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決戦直前・オープニングゲーム

世界一物騒なジャンケン、勃発

 ナイツ・オブ・デイブレイクの本拠地に足を踏み入れると……たった一人の人物が発したまばらな拍手が俺たちを出迎えた。

 その面を拝むまでもない。奴だ。

 世界の終末を決める一大決戦をおっ始めようと言うこの場面を拍手で歓迎するようなメンタリティをしている奴を俺は一人しか知らない。


「ようこそおいで下さいました、杉原叶人御一行。此処に来た、と言う事は我々と戦う、と言う理解で構いませんね?」


「ああ、それで良い」


 各々が武器を手に取る。そしてその殺気はたった一人……ニャルラトホテプにのみ向けられる。


「ああ、しかし。しかし、多勢に無勢とは主人公らしからぬ。勿論私は全知であり全能ですからこの程度の人数の屠殺は容易ですが……前にも言った通り全知全能を自ら封じた身の上ですからね。それは少々困ってしまいます。なので♪」


 糸が、銃弾が、焔が、斬撃が、俺たちの有するありとあらゆる攻撃手段が外道の神の命を奪わんと殺到し、


「満を辞して。私も、お仲間を呼びましょうか♪」


 指の一鳴らしでその全てが掻き消え、その代わりに三人の男女をその場に呼び出す。

 包帯をグルグル巻きにしたミイラの様な女性は恐らく『傲慢』のテテ、一番年若く背丈の低い少年は俺の前世での友達で……『色欲』のクロエ。大森林で襲撃をして来た壮年の『怠惰』よエクエスと、清人を殺した『強欲』のシュヴェルチェ。

 それはナイツ・オブ・デイブレイクが誇る大幹部、即ち『六陽』だった。


「さて、これで役者は揃いました。しかしこのまま一斉に乱戦ヨーイドンでは格好が付かない。ほら、スーパーヒーローが揃いも揃って大乱闘していてもイマイチ盛り上がらないでしょう? それと同じ理屈です。戦いとはフォーカスあっての華。それをみすみす捨ててしまうのは実に惜しい。ですので――オープニングゲームと行きましょう」


 そこまで言うと思い出した様に、「あ、因みに今は概念的な無敵ですので攻撃しても無意味です♪ 他の面子を呼ばれる前にと思ったのでしょうが、残念。一撃分の徒労、お疲れ様です♪」なんて事を煽るように口にした。

 そこは腐ってもラスボス。そうそう簡単にはいかないらしい。まぁ、此処で一気に封印まで持っていけるなどとはハナから考えてはいないのだが。


「さて、オープニングゲームの内容ですが……戦う相手と階層を各々が選択して頂くというものです」


「相手を、選ぶ?」


 ……という事は、これは恐らく。


「ええ、予想通りかと。本拠地の各階層に一人ずつ『六陽』メンバーを配置します。貴方達はそれを倒して前に進んで頂くのですが、やはり人数差がありますよね? こちら一人に対してそちらのフルメンバーでは幾ら何でも不利です。なので、貴方達も各階層に人員を配置して頂きます。つまるところ、仲間か敵の乱入の可能性のある勝ち抜き戦ですね」


 ――勝ち抜き戦。

 だが『六陽』は清人が欠けて五人。対するこちらは七人。何処かでこちらの数的有利な戦いが展開出来る……ように見える。

 だが、最初からニャルラトホテプとかち合う可能性がある以上リスクは高い。

 いや、最悪の展開だとニャルラトホテプが最下層スタートなら一人でごぼう抜きにして封殺も有り得る。ゲームバランスも何もあったもんじゃない。


 けど、だからこそ確信がある。

 ニャルラトホテプはゲームバランスを公平に保つ為の何かを提示して来ると。


「勝ち抜き戦、という訳で勝った方が上の階層に助太刀、ないし挑戦が出来る訳ですが。そうなると私が最下層になった場合貴方達は数的有利があったとしても一瞬で死にます。ですのでここで、オープニングゲーム、『選択ピック』の出番です」


 すると案の定ニャルラトホテプの口からそんな言葉が出て来た。


「やる事は至極簡単。お互いに代表を一人決めてジャンケンをして貰います。そしてジャンケンの勝敗で先攻、後攻を決め、先攻プレイヤーは後攻プレイヤーのチームのメンバーと階層を指定。戦闘事はそこでその人物と戦って頂きます。そして補足として、叶人さん御一行は数的に有利ですからこちら側複数人を選択ピック不可、こちら側は六層の選択ピック不可に加えて、叶人さん御一行から私に対する選択ピックがなされなかった場合の私の階層は第六層に固定するものとします」


 つまり、ニャルラトホテプは選択ピックさえしなければさっき考えたような最低は起こらない訳だ。

 だけどもニャルラトホテプが六層固定なら相手側の選択ピックの数は実質的に四。誰かがタイマンをやろうとすれば後の人間は必然的に複数人と戦う事になる。

 こちら側が複数人で掛かれるのは大きな利点になるかも知れないがこれがクロエとぶち当たったら目も当てられない。『色欲』の権能でお互いに何もせずに地球とイデアが滅んで終わりなんて事態になりかねない。

 つまり、クロエはなるべく早期に選択ピックしなければならない。でもそうするにしとも一体誰をぶつければ……。いや、それ以前にジャンケンゲーを制さない事には始まらないか。


「では、各自代表を。こちらは……そうですね。エクエスを代表としましょうか。そちらは叶人さんで構いませんね?」


 反対の声は上がらない。俺は無言でエクエスの前に立つ。


「いやぁ、世の中物騒なジャンケンがあるもんだ。そうは思わないかい? 杉原青年?」


「……」


「随分と硬いなぁ。まぁ、世界の命運を決める大役担ってんだ。そういう風にもなるか。……しっかし、悪くない。あん時と比べて結構良い顔つきになったもんだ。おっちゃん、嫌いじゃないぜ。嫌いじゃないついでに――」


 最初はグー、ジャンケン――!!


「おっちゃんの道楽に付き合えや」


 ポン!


「あ――」


 俺の出したのはパー、対するエクエスは……チョキ。


「おっちゃんが選ぶのは当然先攻。選択ピックはそうだなぁ、杉原青年一人、階層の指定は三階、って事でどうよ?」

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