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Tell me how strong you are【4】

イー↓シャン↑リンチー↓チン↑シャオ↓ラー!

(注意:今回は若干エグい感じになっております。が、ライトめなので大丈夫でしょう。ヘーキヘーキ!)

 嵐は口から漏れ出る血液を笑いと共に吐き捨てる。

 鬼は強かった。嵐の想定を超えて強かった。

 鬼が歩けば自重故に地面が悲鳴を上げ、鬼が吼えれば空が泣き叫ぶ。そして鈍重な歩みからも察せられる通りに身体は硬く、嵐の刀には既に幾つもの刃こぼれが散見される。


「幾らなんでも硬過ぎやせんかの……どしたらそんな硬くなんのか、ご教授願いたい位やわ」


 嵐は尚も刀を構える。敵は健在、自分は死に体。辛うじて幸いと言えることがあるとするならば、それはまだ刀が折れていないという事だろうか。しかしそう遠く無いうちに折れるであろう事を嵐は察していた。

 そして、魔獣が消失する明朝までは確実に保たない事も分かっていた。


「けんど、動きは鈍けりゃ図体はデカい。ならんなもんは少し硬い巻き藁とそう変わりゃあせん」


 嵐は鼓舞する様に口にする。

 自身を死に体にまで追いやった敵がまさか少し硬い巻き藁なんぞと同等だとは本気で考えてはいない。だがそう思い込まなければ、刀よりも先に心が折れる確信があった。


 ゆらりと巨体が動き始める。そこに合わせる様に嵐は一撃を放つ。


「……舞風!!」


 風を伴う飛翔する斬撃。妻の名前をいただくその一撃はこれまでに多くの魔獣を屠ってきた嵐の得意技だった。しかしそんな渾身の一撃をもってしても鬼を傷付けることは出来ない。精々がよろめかせる程度が限界だった。


 しかし嵐は諦めない。

 倒す事を、では無い。生きて妻子の待つ温かな家に帰る事を。

 狙われてしまった以上逃げるのは得策では無い。逃げる時期は既に逸している。ならば狙うは朝日が出るまでの耐久戦ただ一筋。

 攻撃が通らなくても構わない。時間が稼げて、尚且つ生き残る事さえ出来れば何でも。


「ワリャもつくづく、強欲になったもんやの」


 無論それが不可能に近い事は嵐自身も分かっていた。しかし分かったところで希求は止められない。


 そんな切なる願いは、強欲は、嵐を一段高みへと引き上げる。


つがい……舞風!!」


 それは先の焼き直しの様に見えた。しかし嵐は筋力にものを言わせて返す刃でもう一度飛ぶ斬撃を放つ。

 飛翔する二つの斬撃はまるで番の様にある地点で交差し、伴う風は暴風へと変化する。

 そして暴風は斬撃を前へ、前へと運ぶ。雨雲を切り裂き月明かりを超えて朝を迎える為に。


 着弾と共に耳を劈くかのような叫びが大地を揺らした。渾身の一撃は鬼の腹部を十字に切り裂いたのだ。

 初めて感じた手応えに嵐は内心で歓喜し……それを目撃してしまった。


 魔獣の赤い眼だ。先程までは煩わしい蚊を追い払おうという程度の対応でしか無かった為にその焦点は嵐に合っていなかった。

 だが、この一撃をもって鬼は明確に嵐が脅威になり得ると判断した。してしまった。


 猟師に曰く、手負いの獣は怖い。

 ではそれが鬼であればどうだろうか?

 言うまでもない。


 嵐はその視線の意図を正確に理解する。


『一族皆殺しだ』


 鬼は霞を吐き出すとそれに紛れて姿を隠す。


 そして、


「がぁ……っ」


 警戒する嵐を背後から急襲し、豪腕でもってその首を強く締め付ける。

 嵐は鍛えていたがその首は鬼の手に比べれば余りにも華奢だった。それ故に窒息を待つまでも無く、


 こきゅ


 ぶちぶちぶちっ


 骨が間抜けな音と共に折れ、鬼が頭と体とを無理矢理分離させる。


 鬼は久方ぶりに歯応えのあるものを壊せた事に喜悦を浮かべつつ滴る血の匂いで肺を満たす。


 強き者の血筋は強き者が集う。なればこそ、殺し尽くさねばならぬ。

 鬼は更なる惨劇と残虐を求めて前へ踏み出す。

 首だけとなった嵐を伴ってゆっくりゆっくり確実に。避けようとしようがしまいが確実に向かってくるそれはまるで死にも似ていた。

チョンパァ……(斬首)

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