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Nobody knows【1】

ヤンデレ要素足りねぇな?

足りねぇなら足すしかねぇな?

けど急に増やせる訳でも無し、ここは布石を少々。

「何ですって?」


「ああ。とは言えあくまでもあたりがついただけで確証は得られてはいないが……そうさな、八割方正しいと直感している」


 暗中模索の中提示された八割という数値は一割すら見つけられていない唯にとって見ればほぼほぼ十割と言っても過言ではなかった。


「……是非ご教授頂けないかしら」


「……唯?」


 普段であれば余裕たっぷりに「あら、それは何かしら?」と言うところだった。しかし言い放たれた言葉は性格に反してどこまでも低姿勢、いや、いっそ卑屈に思えるほどだった。

 篝はその様子から彼女の焦燥を感じ取る。


 篝から見た高嶋唯という人物はどこまでも強かな人物だ。どこまでも自分を曲げず、必要とあらば倫理すらかなぐり捨て、目的を遂行する為には手段を選ばない。失敗あらば修正し、狡猾に隙を窺うその様は蛇のよう。

 しかし篝としてはその気質は決して嫌いでは無かった。いや、寧ろ好ましいとすら思っていた。自分はそうあれなかったが故に。


 だからこそ、察してしまう。

 高嶋唯が篝に対して下手に出なければならないほど彼女は追い詰められているのだと。


「承知した。それで、この角か。結論から言えばこの角は魔素で形成されている、というのが私の結論だ」


「……魔素。確か、あの天使も魔素から剣を生成出来たわね」


「ああ、それと同じと思って構わないだろう」


「けど解せないわね。魔素って確か世界に満ちる力の根源だったわよね。それがどうして物体になるのかしら。それも角限定で」


「何故物体になるのか。これに関して私は明確な答えを持ち合わせていない。しかし何故私の場合角が生成されるのかは分かる。……それは、私の心の在り方がこうだからだ」


 そう言うと唯は「はぁ?」と今にも言い出しそうな顔で首を傾げた。


「魔素と心、或いは感情は密接な結びつきが存在する。それは団長の超覚醒や魔獣化を見ていれば明白だ。つまり、心の形がそうであるならば現実の実体もその様になる。といえば良いだろうか。私は……鬼となって多くの民草に厄災を振り撒いた。故に私の心の在り方は変わらず鬼なのだ。だからこそ私にはその名残りとして鬼の角がある」


「心、ねぇ。心をもとにならぬもの無しってワケか。何というか仏教的ね」


「ブッキョー、が何だか私は知らないが、少なくとも私はそう理解しているし、それが真実だと思っている。心が不に傾けば魔獣に、正に傾けば超覚醒、とはいかずどもこんな風に瘴気は出なくなる筈だ。故に、唯が第一にすべきなのは心の整理になるだろうな」


「心の、整理?」


「そうとも」と篝は生真面目な風に頷く。


「唯の魔獣化は非常に緩やかだ。生来の気質か、将又心の強さ故かは分からないが、事実としてそうだ。そしてその時間を利用しない手は無い。絶望を超える強い感情……この際物欲でも愛欲でも何でも良い。それで、自分の心の在り方でもって絶望を塗り替え、絶望を呑みくだせばそれは必ず唯の力になる筈だ」


 イマイチ要領を得ない篝の説明に唯は眉を寄せる。結局のところ、根性論でしかないではないかと。


 勿論唯自身は篝に対して理論立った説明を求めていた訳では無い。だが帰結が二世代前のマンガのようになるのは、それは頂けない。

 やれば出来る! 気持ちが大事! 兎に角頑張れ! 自分の心に向き合え! そんな綺麗事が通用する世界なんて何処にも存在しないのだ。少なくとも唯の知る限りは。

 いや、そう言えば父の勤めていた会社の社訓がこんな感じだったか。その果てに生まれたのが実の娘を強姦する人間の屑なのだから皮肉なものだ。


「絶望を呑みくだせ、ねぇ。簡単に言ってくれるじゃない」


 ただでさえ冷めていた気持ちが一層冷めていく。そして冷めた心は声音にありありと反映されていた。


「私は唯ならば出来ると確信している。でなければこんな事は言っていない」


 根拠の無い信頼が、隙間風のように心に吹き込む。それは唯にとっての追い打ちと何ら変わりない。


「そう……。ま、参考にさせて貰うわ」


 そう言い残すと唯は踵を返す。しかし心なしか体から漏れ出る瘴気は来た時よりも濃く見える。


「……私は、また間違いを重ねてしまったのだろうか」


 遠のく背中を前に篝はそう呟いていた。



♪ ♪ ♪



 その夜は各々に少なくない変化を与えた。


 叶人はアニとジャックに自身が消失する結末を告白した。

 アニは己の願いにより身体の一部を異形へと変性させた。

 ジャックはこの世界の必勝法を考え付いた。

 凩は己の弱さに苦悩した。

 そして、唯は心の在り方という難題に直面した。


 それが良しか悪しか、それはまだ分からない。

 しかし泣けど喚けど残酷なまでに、朝日は平等に彼らの元に降り注ぐ。

おまけ、

もしこの世界が育成要素ありのギャルゲーだった場合のヒロイン別シナリオ攻略難度


アニ→C

備考:アニのルートは回収すべきフラグが少なくルートに入る事自体はさほど難しくは無い。しかしルートに入るとほぼ確実に魔獣化から復帰した主人公を刺しヤンデレ化してしまう。このヤンデレ化をいかに解消するかがこのルートのキモで、解消出来なかった場合大概バッドエンドに直行するためメインヒロインの癖に難度がやや高めに設定されている。

しかし解消してしまえば主人公の精神安定や戦闘補助、様々な攻略ヒントをもたらす為後半の攻略は安定し易い。


唯→B+

備考:アニルートからの分岐で発生するルート。アニのヤンデレ化を唯の権能で無理矢理解決するとこちらに入る。アニのような一回の破壊力の高いヤンデレイベントこそ起こらないものの彼女の過去は重く主人公の精神が段々と削れていく。一応ヒロインの証たる精神安定は持っているものの回復量はアニに劣り、イベント分のマイナスを補えない。それに加えて清人死亡ルートに入った場合の悲惨さは異様。ヤンデレが見たい人にはお勧め出来るが、難度はとても高いのが玉に瑕。


篝→D+

備考:脳死でシナリオクリアを目指したい人向けのキャラ。知力のパラメーターを犠牲にして真理(物理)を悟り真理を以って邪悪を祓う。このシナリオだけこっそりトリ●ー或いはクル●ポーが作っているのでは? とはよく言われる言葉である。苦悩はあるものの他よりは断然薄く、代わりによく分からない熱さだけが残る。ただ、ルート分岐がとても早い上に分岐の難度が高く、ハザミ編にて凩の養父の好感度を一定以上稼がなくてはならない。篝の初期印象に引っ張られてルートに入らないプレイヤーは多いが頭バクシーン! 出来る為篝のルートのみを周回するコアなファンが存在する。

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