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Last stardust【2】

ちょっと不自然になるかもだけど強引に動かす事にした。

どん詰まり回避ヨシ!

尚、今回はジャックとハザミ組が空気。

 夜の大森林はとても静かだった。虫の音一つ聞こえないせいで自分の呼吸の音さえ煩く感じられる。

 そんな中、ガサリと草木の揺れる音がした。

 獣か、それとも清人か。それとも魔獣か。警戒しながら音の方向を向くと――。


「ご主人――ッ!!」


 何者かがとんでもない勢いで抱きついて来た。そう、抱きついて来たのだ。奇襲では無く抱き付き。急な事で頭が回らない。しかもその人物が『デイブレイク』の黒いローブを身に纏っている事が混乱を加速させる。


「いやいや、お久しぶりだね! 何年ぶり!? 元気だった?」


 抱きついて来た人物は顔を上げると人懐っこい笑顔を浮かべながらそう言った。……『デイブレイク』のローブを着ているし多分敵だと思うのだがどうにも調子が狂う。ただ……。


「俺、何処かでお前と会ってたか?」


 俺は眼前の少年にある種の懐かしさを感じていた。

 けれど流石に直接会ってはいないだろう。何せ瞳は月を押し込めたかのような黄金色で、髪は夜色、背丈は小柄で、全体を通して精巧な人形のような印象の美少年だ。一度会っているのなら相当深く印象に残るだろう。


「……お前は、誰だ?」


「あ、俺っちとした事が自己紹介がまだだったね。俺っちは『ナイツ・オブ・デイブレイク』の大幹部『六陽』が一人、『色欲』のクロエ。そして気になる俺っちの前世は――」


 パァンと、破裂音が響いた。

 そちらを向くと、クロエの方にむけらあた唯のジョウキキカンジュウが煙を吐き出していた。


「……高嶋唯」


 俺の時とは打って変わって憎々しげにクロエは唯を睨み付ける。それは単に弾を撃ち込まれ掛けたからと言うだけでは説明出来ないほど濃密な憎悪が滲んでいた。


「貴方も転生してたのね。猫が人になるだなんて大躍進じゃない」


「そう言うお前は生まれ変わってもご主人に付いて回ってるんだね。金魚のフンみたいに」


 『色欲』と唯との間にバチバチと火花が飛び散る様を幻視する。一体二人の間に何があったのだろうか。

 そんな事を考えているとクロエと俺との間にアニが割って入って来た。


「いつまでも叶人に引っ付かないで」


「ありゃりゃ、これは失敬。と言うか明るい方のご主人の名前って叶人だったんだ。良い名前だね。あ、それと一応貴方と叶人君の関係って何かにゃ? 友達? 仲間? それとも単なるパーティーメンバー?」


「夫婦」


 すると、いきなりクロエはポカンとした顔になりそのまま固まった。そして確認するように俺に人差し指を向けて「夫」、と言い、今度はアニの方に人差し指を向けて「妻」と言った。

 何が起きたのかと彼の一挙手一投足に注意を払っていると。


「にゃっはっはっはっは!! え、唯寝取られた!? あんだけご主人にご執心で、ベッタベタに依存してた癖に唯寝取られた!? にゃっはっは!! それ何てギャグ? 余りにも面白すぎて俺っち笑い死んじゃう」


 溜め込んでいたものを一気に吐き出すかのように大爆笑した。呵々大笑と言う言葉が良く似合う笑っぷりだ。


「あ、えっとピンクの奥方、並びに叶人君、結婚おめでとう。ピンクの奥方、叶人君は色々と背負い込んだりして苦労ごとが多かったり結構面倒な性格してるけど見捨てないであげてね」


「ん、もち」


「にしても寝取られとか……ププッ。今度は自殺しなかったんだ?」


「黙りなさい」


「なら黙らせれば良い。僕は『六陽』の中でも最弱だから元『嫉妬』の高嶋唯なら簡単なんじゃない?」


「それが出来たらとっくにやってるわ。それとも発動している大罪系統セブンス・シリーズスキルを解いてくれるのかしら」


大罪系統セブンス・シリーズっ!?」


 大罪系統セブンス・シリーズスキル。それは『六陽』にのみ与えられた通常のスキルとは一線を画す程絶大な効果を有する特殊能力。発動すれば最後、解決手段を見出さない限り絶対的な不利を押し付けられる事になる最低最悪の産物だ。

 けど、クロエは一体どんな能力を……? いや、それ以前にいつからそんな物を使われた?


「ばれちゃってるなら仕方ない。けど解かないよ。だってこれを解いたら最後、俺っちは約束を守れないまま負けちゃうからね。ああ、でも叶人君並びに奥方とそのご友人には一切危害を加えないから安心してよ。あ、ただ叶人君は俺っち無視して先に行って良いよ。もう一人のご主人が待ってるし、ご主人も決着を望んでる」


「……その感じだと、貴方の役割は私達の足止めみたいね」


「そうだよ。俺っち、ご主人思いの黒猫だからにゃ。殺されたとしても頼まれ仕事は守っちゃう愛らしい性質なのさ」


「殺された、それに黒猫って……まさか!」


「正解。ただ、それは今は関係ないよ。……叶人君、ご主人の所に行ってあげて。俺っちも色々とお話したいところだけどそれは後で出来るからさ」


「……分かった」


 馬鹿みたいな話だけども、俺は清人とぶつかるのであれば一対一が良いと、そう思っていた。仲間がいれば清人が能力を使っても勝ちを得られると思う。けれど……言葉が見つからないのが酷くもどかしいのだが――それをしたら、俺は何か決定的なものに負ける予感がする。

 要は言い方は悪いがこれは俺にとっての通過儀礼イニシエーションのようなものなのだ。だから、誰にも邪魔されたくは無かった。清人もそれを望んでいるのなら尚更。


「みんな、ちょっと先に行って来る」


 きっとメタ的な視点ではこれは大きな間違いだろうけど。


「ん、頑張って」


 俺は単身で清人の元へと向かった。

『色欲』の能力は大分前から決めてたんすよ。けどよくよく考えたら唯と若干被るけど『似たようなタイプの能力同士のバトル+因縁の関係』は少しエモいのでそのまま採用。

さてさてクロエ君の気になる能力ですが……いきなり抱きついた挙句役職COしても唯以外の誰にも攻撃されていない時点でお察しですね。

そりゃ生き残るわ。

そして散々煽りよる……。

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