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Farewell【4】

百九十話!!

どんどん情報を増やしていきますよー!!

そして二十三話から引っ張って来た伏線が漸く回収されますよー!!

「また、俺を誘いに来たのか」


「おう、当たり前だ」


「……もしかして、それはニャルラトホテプの差し金か」


 清人は射抜く様な視線でもって俺にそう問い掛けた。それは半ばそうなのだと確信している様にも見える。

 ニャルラトホテプが清人に告げ口したのだろうか。


「どう言う意味だ?」


「隠さないで良い。あれからいきなりアイツが俺の前に現れてお前に語ったのと一切同じ内容を喋ったからな。だから知ってる。ニャルラトホテプ打倒に乗り出してる事も……お前が『答え』に辿り着きかけてる事も」


 ニャルラトホテプがあの内容を清人にも伝えたのは何というか意外だった。何せニャルラトホテプを倒す手段さえ確立出来れば清人は今のスタンスを取る必要は無くなるのだから。

 ただ、それよりも気になる事があった。


「お前、答えが何か知ってるのか!?」


 清人がサラリと『答え』と口にした事だ。情報を整理している中に感じた既視感。その答えを清人は既に知っている。俺はそう直感した。


「お前は未だ分かってなかったのか。いや、その方が良いか。分からない方が幸せな事もある」


「何を言って――」


「叶人。これは杉原清人としての最後の願いであり最終警告だ。今すぐに旅を止めろ。犠牲には目を瞑れ。耳を塞いで何も知らないまま穏やかな日々を過ごしてくれ」


 その言葉には強い意志が籠もっていた。前は自分の罪の意識に酔っている様にも見えたが今は違う。……振り切れたのだ。ニャルラトホテプの情報から何を察したのかは分からないが、覚悟を完了させてしまっているように見える。


「ふざけんな。俺は吉影じゃないから穏やかな日々なんてそんな物は要らない。俺が欲しいのは未来だ。……それでも俺は明日が欲しいんだよ」


「それは重々承知だ。その上で……俺はお前を否定する」


「……っ!!」


 ――俺たちは合わせ鏡だと思っていた。

 俺は清人の意思の代行者であり清人がどれだけ否定しようが、どんな思考過程を辿ろうが同じ結論に至ると、そう思っていた。


「俺は仲間にならない。そして、お前がもし旅を続行すると言うなら。その時は――俺がお前を捻じ伏せる」


 前言を撤回しよう。

 悲劇に酔っている? 殴らなければならない?

 最早そんな物は不要だ。目の前に居るのは何だ。男だ。覚悟を持ち、戦いも辞さない決意をした男だ。

 それをどうして叩き直せるなどと言えるのだろうか。


「前にも変わったって言ったけど……更に変わったな。霊基再臨でもしたのか」


「……どうだろうな。杉原ってのは覚悟完了するとこうなるって性質があるのかもしれないな」


 そう言うと清人は俺を真っ直ぐに見つめながら。


「……『ナイツ・オブ・デイブレイク』の本拠地は西の大陸のヒュエルツ=イェン=ヒェンにある。ここからは海路は使えない。もし進むのならもう一度大森林を経由してロウファに戻る必要がある。……だから俺は大森林で待つ。来なければそれで良し。来るなら俺は全力で打つかる」


「俺が勝ったらそん時は一緒に来いよ」


 清人は笑った。久しく見た笑顔は一緒に馬鹿やっていた頃と全く変わらず――。


「それは絶対に有り得ないな」


 けれど彼が吐き出すのは俺とは全く逆の結論だった。


「そうか。……じゃあ、次に会うときはきっと大森林だろうな。お前が全力で来るなら俺も俺個人のの持ちうる全てをぶつけてやっから、覚悟しろよな」


 清人が俺を止めるのは、俺の幸福を守るためだという。ニャルラトホテプから情報を得てもそのスタンスは変わらないのだろう。清人の言から察するに清人の得た『答え』とやらは彼にとっては許容し難いものであるらしい。それ故に、止めるのだ。

 しかし、俺は叶えると決めた。身の丈に合わない最高の結末って奴を。


「まぁ、お前がそう言う事位分かってたさ」


 あっけらかんと言い放つ。けれどその言葉には少し寂しさが滲んでいた。


「それじゃあ、またな」


 お互いに踵を返す。背を向けあい、正反対の方向に進むその様は清人と俺が元は同じであっても別の人間なのだと、そう言っているような気がした。

 来た道を引き返していると「あんさーん!!」と凩の声が聞こえた。


「いきなり走り出したからびっくりしたよ。それで、一体何があったのかなぁ?」


「清人の勧誘にまた失敗して、そんでもって近いうちにリアルファイトする事になった」


「何でそうなるのかなぁ!?」




♪ ♪ ♪



 ……言える訳がなかった。

 俺の言った事は概ね真実だ。けれど、一点だけ嘘を吐いた。

 ニャルラトホテプが俺に語った内容は清人と全く同じではない。


『叶人さんはこのゲームを望んだ未来へと変える為の切符をほんの少しだけ手に入れました♪ ……と、ここまでは叶人さんにも言ったのですが、ええ。我らが『ナイツ・オブ・デイブレイク』が大幹部『六陽』が一柱である『暴食』には追加で情報を与えましょう』



『叶人さんの手にした切符の一片、それは『超覚醒』の境地です。絶望を超え、希望を見出し、そして見出した希望で絶望を塗りつぶす事で酷く抽象的な希望という概念そのものを具現化させるというものなのですが……まぁ私には残念ながら届きませんけれども。けれど真に重要なのはそこではありません。『超覚醒』に至ったその精神性。それこそが重要なのです♪』


 『理解できますか?』と聞かれたが生憎サッパリだった。


『物語にはご都合主義というものが少なからず介入してきます。特に、絶対のものに抗う強い意志の持ち主には、ね。だからそのうち。えぇそう遠くない未来、叶人さんは天使セラフィムをも超え、私にすら届く力を得る可能性があるんですよ』



『――その力の名前を『世界ザ・ワールド』或いは『宇宙ユニバース』と言うんですけどね?』


 ニャルラトホテプは何時の間にか一枚のタロットカードを手にしていた。

 そのカードの柄は見なくても分かる。『世界』のカードだ。

 横っ面をブン殴られたみたいな最低な気分だった。かつて叶人とサブカルにどっぷりと浸かったから分かる。


『答えろ……どうしてそれを俺に言った』


『面白いものが見れそうなので♪』


 ……ああ、叶人。全ての世界を救う事は確かに可能だ。

 けれど俺はそれを望まないし、許さない。


 最早何振りかまってはいられない。建前とか……罪悪感とか。そう言う事を言っていられる時期はもう終わった。


 叶人を救う為ならば、俺は悪にでもなる。

……まぁそういう事だ。



一応ここの伏線は前々からありました。

Atlach-Nacha【2】(23話)タロットのくだり。

「――貴方の掴んだそのタロットを見せてくれませんか?」

「『The World』……『世界』、ですか」

「杉原清人さん。貴方はきっと、遠くない未来、想像を絶するような苦難が待ち受けているでしょう。しかし、それでも争い、闘い続ける意志があるのならば――」

「逆転大勝利、なんて事があるかもしれませんね?」


……コイツが言ってる時点でかなり確信犯。


清人が察してしまった内容はその内出しますが……。












Burn My Dread~last battle~

そりゃ止めるわ。

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