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Farewell【3】

 今回ニャルが齎した情報は今の俺たちにとっては非常に重要なものだった。何せ俺の方針が間違いでない確証を得る事が出来たからだ。ただ判明したのは単に良い話だけと言う訳でも無い。

 それは肝心のニャルラトホテプの倒し方だ。

 俺は自己申告ではあるがニャルラトホテプの戦闘能力についてはそう誇張されたものではないと考えている。つまり純粋な戦闘での突破は不可能と言う事が判明してしまった。

 つまり、ニャルラトホテプを負かすには戦闘以外の方法でニャルを攻略するしかない。


「……」


『このゲーム望んだ未来へと変える為の切符』。今後はこれが鍵になるに違いない。そしてニャルラトホテプがこのタイミングで現れた事からして恐らく切符とやらの正体は『超覚醒』だろう。だがそれがほんの少しとなると……。


「クリア条件が本格的に天元突破な気がして来たなぁ……」


 それ位しか思い浮かばない。


「何やその天元突破って?」


「あぁ、天元突破ってのは……。天元突破って、何だろな」


 奇しくも例の『伝説って?』『ああ!』とニアピンしたがそれはさて置き。正直、天元突破を一から十まで理解している有識者が居るのであれば是非ご教授願いたいものだと思うくらいアレは難解で熱い何かなのだ。ある種の深淵と言って良い。


「あん時の青い火がドバーッってなったあれはちゃうんか?」


「あれは『超覚醒』だ。何というか絶望の反転みたいな感じだな。だから多分天元突破とは違う、と思うぞ」


「難儀なもんやの」


「……そうだな」


 ただ何か引っかかる。けれど何に引っかっているのか分からない。小骨が喉に刺さって中々取れないみたいな感じだ。いやこれは違和感というより……既視感の方が近いか。

 チート過ぎるラスボス、対策が不明瞭、失敗=世界滅亡。……こんな展開を何処かで見たような気がするのだがどうにも思い出せない。


「まぁニャルラトホテプに真っ当な力が通用しないのは大体察してたからそこは追々で良いとして。取り敢えず目先のメリットは増えたわね」


「ん、清人を仲間に引き込めればオルクィンジェも付いてくる。一挙両得。ぶいっ」


「となると清人を誘わない手は無いか。そうと決まったら早速動こか」


 そうして俺たちは一先ず清人確保を目標に動き始める事となった。




♪ ♪ ♪



「……どうして見つからないんだ」


 そして現在――清人が見つからなくて詰んでいるのだった。


「団長も機能不全な事もあるのだな」


 篝の言葉がグサッと心に突き刺さる。これで本人に一切の悪意が無いというのだから却ってたちが悪い。それだったら今の唯のように冷たい視線を向けてくれた方が感情的にも処理しやすい。……睨まれちゃってるのかよ。


「叶人、少し休もう?」


「アニ? その短剣の柄をどうするつもりだ?」


 あと、凄い優しい顔つきで師匠から貰った大切な武器で意識を刈り取ろうとするのも止めてもらいたい。

 いや、そもそもの原因は俺なのだ。調子に乗ったと言うか何というか。


『清人の居場所なら大丈夫だ。何せ俺は清人の思考を熟知してるからな。行きそうな場所くらいは簡単に分かる』


 なんて、軽はずみに言ってしまった挙句、歩き始めてからの三時間、俺は何の成果も得られていないのだから。


「い、いやぁ、清人も変わったもんだなぁ。ウン」


 何とかかんとか誤魔化そうとするも仲間達のジト目が痛い。


「……参考までに、どんな場所に行くと踏んでいたのか教えてくれるかしら」


「娯楽施設とか、玩具屋とか」


 そう答えると唯は俺のピョコンと伸びるアホ毛を鷲掴みするとそのままブンブンと振り回した。

 遠心力がとても気持ち悪い。


「それ、貴方が肉体の支配権を奪って無理やり突き合せた場所の間違いでしょう。それにこんなところに遊戯施設があるわけが無いし、あっても精々賭場とか娼館でしょう。世界観を考慮しなさい」


 まぁ、この場所は極端に貧しい。となれば娯楽に裂ける労力なんてたかが知れている。故に娯楽施設なんてある訳もない。……そういう理屈は重々承知している。けれど、そこに行けば会えるような気がしたのだ。


 だって清人は今傷付いていると、そう思うから。


 傷付いた清人を癒したのはいつだって俺であり玩具でありゲームだった。

 だから、一軒だけでも。子供相手に手作りの玩具を売っているような場所が一軒でもあるのなら。

 そこに清人は居るのではないかと、そう思ったのだ。

 と――。


「お前さん、いつも来るなぁ。まぁ金払いは良いから俺としてはそれで良いんだけどよ。こんな子供だましの何処が良いんだか」


 ふとそんな声が耳に入った。

 俺は誘われるようにそちらへと向かう。


 そして、疾駆の先に居たのは……。


「よぁ、清人。お互いに玩具、ゲーム好きは変わらないな」


「……どうしてここが分かった」


「そんなの決まってんだろ」


 俺は思いっきりドヤ顔を作りながら口を開く。


「俺が杉原叶人で、お前が杉原清人だからだ。何せ俺は清人の思考を熟知してるからな。行きそうな場所くらいは簡単に分かる」

……薄々この世界に於ける最良のエンディングの迎え方を察する人も出てくるのではないでしょうか?


現在公開されているエンディングについての情報

・ニャルラトホテプを殺害した場合この世界は爆破する。この場合はジャックの権能により現在のメンバーのみ世界を離れアース、或いはイデアに脱出する。(後半の件はWe cry "OPEN"【1】でジャックが明言している)

・不干渉の場合ニャルラトホテプの分身体によってアースとイデアは滅びる。

・ニャルラトホテプを倒した(敗北させた)場合のみアース及びイデアの侵攻は停止され、この世界の爆破を回避できる。但しニャルラトホテプを単純な力で倒すことは出来ない。

・叶人は既にニャルラトホテプを倒す方法の一端を掴んでいる。


超覚醒について

・絶望の反転。希望の具現化。叶人は『仲間の信じる自分』を信じる事により至った。しかしこれはグレン●ガンでいう第八話前半のシ●ンの状態でしかなく。『お前が信じる、お前を信じろ!』に至っていないことを自認している。それ故に叶人は現在の超覚醒のそのさらに上の領域、即ち天元突破的なサムシングの獲得がクリアの方法だと考えたが……。


・現状の既視感について

行き着く先はクリア方法そのもの。因みに既に何回もそれに関するネタを叶人自身が口にしているし、なんならステータス画面はそれのオマージュ。

ただ、そのクリア方法を実行すると……?

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