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We cry "OPEN"【3】

そろそろ更新しろと私のゴーストが囁くので初投稿です。

 俺の心はこれ以上無いくらいに、ゾクゾクと震えていた。それは、恐れからか? 大きな期待を前にして怖気づいたか? まぁ、あり得ないことではないだろう。何せこの世界のみを救う選択を怯懦だとまで言い切って、困難であれ全てが幸福に終了する都合の良い第三の選択肢を要求しているのだから。普通は無理だ。その期待は重過ぎる。


 その上で敢えて言おう。否、断じて否であると。

 俺の心を激しく揺さぶるのは期待に応えられそうだという、高揚感だった。


「残るは団長とアニだけだったな。……問おう、二人は一体何を選ぶ。何を望む」


 頬に汗が伝い、極度の緊張状態を全身に伝える。しかし、ニヤッとした笑いが込み上げてきて止まらない。


「私の望むものは叶人と一緒」


「ああ、そして俺たちの目指すものは……全てだ」


 それは余りにも強欲過ぎる理想論。

 けれど良いじゃあないか。人間なのだから。勝って総取りしたいと思うのも。

 だから俺は人差し指で天を突きながら堂々と宣言する。


「俺の選択はニャルラトホテプの打倒、及びィッ!!」


「ん、この世界と、アースとイデアの全ての世界の救済する……っ」


 凩が目を丸くし、ジャックはあんぐりと口を開き、そして唯は小さくふっと微笑んだ。


「そ、そんな事があり得るんか!? 根拠のない理想論や!!」


「根拠はある。……まぁ、半ばこじつけに近いからお前が納得するかは分からないけどな」


「……おちょくっとるんか。そんな不確定なモンに命掛けるのは阿呆のする事や」


 その言葉は正しい。これは理想論で、こじつけで、不確定要素の塊だ。命を懸けるに値しないどころか、下手を打てば全滅した上イデアとアース滅亡、なんて事が普通に起こりうる。……と言うかぶっちゃけるとどう試算してもそっちの可能性の方が高い。こんな案に乗っかるのは相当クレイジーな奴だけだと思う。


「私としてはニャルラトホテプをぶっ飛ばせるのなら賛成で良いわ。乗りかかった舟だし、ええ、最後の最後まできっちり付き合うわよ」


「……僕も賛成かな。根拠がこじつけっていうのは不安だけど、そもそも地球を救うにはニャルラトホテプを倒す必要があるからね。最初から難易度がnightmareなんだから、ついでに条件が幾つか追加されたところで誤差かな。きっと。うん。……誤差、に収まるかなぁ」


「私は当然賛成だ。この身、この力、存分に使い潰せ」


 けれどお生憎様、俺の旅団はクレイジーな奴が多いもんで。……本当に、揃いも揃って、って感じだ。けれど、だからこそ好ましい。このイカレ具合が。だからこそ誇らしい。俺がこの旅団の先頭を引っ張って行けることが。


「凩、お前は正しい。寧ろ俺たちの頭の螺子が合計で数十本行方不明になってるって考えるのが妥当だろうさ。けどな……そっちのが絶対楽しいだろう?」


 凩は絶句する。言葉を探して視線を彷徨わせるその様は何処か迷子の子供にも似ていた。


「最後に問うぞ。争いを一つもせず、駄々を捏ねた挙句二つの世界を見殺しにしてお前は誇れるか。……それと、これは個人的な話だが、私はお前と共に前線を担うのが好きだった。だから、今度の戦いも一緒に戦えたのならば。それは戦士わたしの至上の幸福となるだろう」


「……そか。そう思ってくれるんか」


 凩は小さくそう呟くと、バシリと自分の頬を強く叩いた。


「敵は神。ほいで、こっちの戦力はこんだけ。根拠は不確定要素。まるで話にならん。……そりゃあアレや、なんせんすって奴や。ましてや、言い出しっぺがワリャよりも弱い、なんてのは猶更や」


 凩はそこまで言うと養父から譲り受けた刀を手にした。その顔は先程とは一転して歴戦の古強者然としているように見える。戦うことを覚悟した人間のする、気迫の滲んだ強い顔だ。


「せやから、ハザミの人間らしく――戦いで全部決めよか。なぁ、杉原叶人。こんで勝った方の意見を総意とする。ほれで良えか」


「待ってよ! 言っちゃえばなんだけど叶人はこの中でも結構弱い部類だよねぇ。瞬殺、とは言わないけど、敗北は必至かな!?」


「そこまで言うかよ!?」


 ……しかしその言もまた正しい。勿論弱い部類、という所がだ。実際、俺の長所なんて敏捷性と耐久性だけだ。今まではオルクィンジェとのスイッチで実力以上の結果を掴んできたがそれはもう使えない。それに幾度となく窮地を救ってきた『災禍の隻腕』も『欠片』由来のスキルだから恐らく使えなくなっているだろう。つまり、現状俺の切れる手札など無いも同然。対する相手は新技を引っ提げた俺が見た中で最強の剣士。勝てる道理は無い。

 しかしそれがどうした。

 俺は神に勝利しなくてはならないのだ。その程度の無理を通せずして、道理を蹴っ飛ばさずして、何が出来ると言うのか。


「それに、勝ったら総意ってのは些か乱暴かな。それを強制するっていうのは……」


「この場にいる全員を後で纏めて伸すだけや。安心せい、命は取らん。それだけでも充分に譲歩しとるんやけんど。それでも不服か?」


「分かった。それで行こう」


 ジャックからは不安そうな視線が遣寄越されるがここはスルーする。この場はもう既に交渉の場ではない。戦場だ。ならば交わすべきは言葉ではなく力、ただそれのみだ。


「俺が勝てば、お前も一緒に戦ってくれるって認識で良いんだよな」


「それで構わん」


「じゃあ、俺が勝つな」


「ほざいとれ」


 そう言った瞬間、凩は全身の毛が逆立つ程に濃厚な闘気を放出した。

 やはりうちの最前線担当の闘気は凄まじい。いつもなら心強いが、この場面ではそれが果てしなく高い壁となる。


「あんたに、ワリャを打ち負かす力があるか……見定めさせて貰うわ――来な、幻想を歩む旅団の首魁」


挿絵(By みてみん)

付け足した個人的な話で無自覚にとんでもムーブをかます鬼ぇさんがいるらしい。

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