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A world destroyer【3】

さて、デスゲームの始まりです。

「さて、続けましょうか。イデアで生まれたモノは『あれかし』に縛られる。それは当然私にも当て嵌まりますでは私はどう定義されたのかそれがこちらです♪」


挿絵(By みてみん)


 ババンと言うセルフSEを挟みながら次の紙を出した。相変わらず字はふわっとしていて重要な事が記されているのだろうがやはり気が抜ける。


「基本的に私は外なる神……即ち外なる宇宙の片隅に住み着く神であり大いなる魔王アザトースの意志の代行者。故にアザトースがこの地を住処とした際にハッピーセットのような感じで私もここに顕現しました」


 ……そしてアザトースはこの世界初の魔王となり、邪神討伐の為にオルクィンジェを始めとする『天使セラフィム』が戦いに動員された、のだったか。


「ご明察です。しかしフラゲとは関心しませんね。ただでさえ貴方のチームは情報の格差が酷いんですからその先を知っていたとしても考えないようにして下さいよ」


 さて、と言うとまたページをめくる。


「こうしてこの世界にやって来た邪神なのですが、まぁ邪神と言うだけあって悪逆非道の限りを尽くします。私を含め数多の邪神が新天地にて弾けました。地球人と接触して良からぬことを企むのは茶飯事ですし、うっかり文明を幾らか消し飛ばしたりとかもザラですね」


 少し楽しそうに「あの頃は青かった」と語るがその内容は酷く悍しい。文明が幾らか消し飛ぶようなうっかりがあってたまるかと思う。だが、それが真実なのだとも思った。人間如きが邪神を推し量ろうとするのは出来ないだろうがどうにも嘘偽りのない真実を言っている気がした。

 それと同時にゾワリと体の芯が寒くなる。


 ――これは、無理だ。


 アレは人間では絶対に超えられないし、超えてはならない線引きをいくつも飛び越えた先にある埒外の超常生命体なのだ。そう理解させられる。


「それでアースもイデアもズタズタのボロボロ。だからイデアは作ったんですよ。邪神に対抗し得る対邪神用絶滅兵器『天使セラフィム』を」


 次のスライドに描かれていたのは一人の『天使セラフィム』……オルクィンジェの姿だった。


「彼らは邪神を狩り、時に邪神に狩られながら戦いました。そんな中最強の『天使セラフィム』が誕生したんですよ。オルクィンジェって言うんですけどね。いやぁ、彼一人のせいで沢山の被害が出ましたとも。難敵でした。難敵でしたが……えぇ、結局私が殺しました」


 分かっていた。分かり切っていた。だが、それは余りにも胸糞悪い宣言だった。


「私とアザトースはこの地で彼を迎え撃ったんですが、その際彼一人の手に負えないと仲間を募り始めたんですよ。それが邪なる神への叛逆を目指す一段『魔王軍』。ま、この世界にまともな人間なんている筈が無いんですけども」


 ……それはそうだ。だってこの世界は邪神の支配する世界なのだから。


「先も言った通りこの世界は狂気の渦巻く不毛の世界。普通に考えてそこに真っ当な人がいる訳ないじゃないですか。もしそこに人がいるとしたら――それは私が戯れに作った分身体、しかあり得ません♪ 故に、オルクィンジェは仲間を作ったつもりが邪神の手の上で踊らされていた訳です」


挿絵(By みてみん)


「そして、私はこれを好機と見ました。これを機にアザトースの使い走りを辞めて、私が全知全能の邪神になろうとしたんですよ。とどのつまり謀反ってヤツです。その為に打倒アザトースを掲げるオルクィンジェに加担して見事アザトースを打倒したオルクィンジェを殺害して今の私――全知全能の邪神に至ります」


挿絵(By みてみん)


「そして全知全能になり退屈し始めた私は退屈を紛らす為にゲームを始める事にしました。……三つの世界の存亡を掛けたデスゲームをね」


 ここまではいつか聞いた話と殆ど同じだ。だとしたら違うのはきっとこの先……。

 一体どんな爆弾が投下されるのかと思うと身体は冷え切っているのに粘り気のある汗が噴き出てくる。


「現在私の分身体がアースとイデアに干渉しています。この分だと多分そう遠くない内に滅びるでしょうね。で、す、が、ご安心ください。それを回避する方法もキチンと用意してあります。それは私を倒す事。私を倒せばアースとイデアの分身体は消滅し、滅びを回避する事が出来ます。……但し、その時はゲームをクリアしたとみなし――私の死亡と同時にこの世界をちり一つ残らず爆破します」


「なッ!?」


 なんて自作自演だ!!

 負ければアースとイデアが滅びて、勝てばこの世界が滅びるなんて!!


 いや、そもそもオルクィンジェが完全復活してもこの世界は滅びないし、ニャルラトホテプが世界を巻き込んで自爆するだけで……ああ、言ってる事がまるでめちゃくちゃだ!!


「さぁ私が貴方達に投げ掛けるのは究極の二択です。アースとイデアを救い、この世界を破滅させるか。この世界を選び、アースとイデアの滅亡を知らん顔して過ごすか。私はどちらでも構いません。どちらも尊き選択と認めましょう。さて、貴方はどうします?」


 ハッキリと分かった。コイツは独立病巣だ。コイツはどう転んでも悪にしかならない。


「そんなの、選べる訳ないだろッ!!」


「はぁ、まったくもってナンセンスです。失望しましたよ。貴方の半身は答えを出したと言うのに」


 そう言うと今までのスライドを片付けながらニャルラトホテプは清人に視線を向けた。


「選んだ……? 選んだってどう言う事だよ!! 答えろよ、清人ッ!!」


「……そのままの意味だ。俺はもう既に選んだんだよ。だからお前から『欠片』を奪った。……なぁ、天空の花嫁覚えてるか? あれと同じだ、ビアンカとフローラとデボラ全員とは結ばれる事は無いんだよ。だから――」


 清人は真っ直ぐに俺の目を見ながら口を開いた。





「だから俺は、例え地球とイデアが滅んだとしてもこの世界を守り抜く」


 ――ああ、今日は何て厄日だ。

清人の選択、それはアース……地球とそれに連動するもう一つの異世界イデアを犠牲にしたこの世界の存続。

人を辞め、大切なものを殆ど取りこぼして来た彼のその真意とは……?

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