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A world destroyer【1】

微グロ&鬱注意です。

 いきなりだが、俺は黒い空間にいた。ただどうしてこうなったとは言わないで欲しい。だってそれは俺が一番言いたい言葉なのだから。……と言うか。


「何でいきなり心象世界?」


 この驚きの黒さ度合いを誇る空間なんて俺の心象世界しかあり得ない。だがそうなると本格的になんでここに居るのかが分からない。それにここに来る前の記憶がブッ飛んでいる。


 はてさてどうしたものかと眉を潜めているとグシャリと何かがひしゃげる様な音がした。

 ……心象世界でこんな音がなるような物が果たしてあっただろうか。

 ともあれ動かなくてはお話にならないと黒い空間を進んで行く。流石に何回目かの心象世界ともあり勝手知ったるとまではいかないがすんなりと何時ものオルクィンジェの子供部屋の前まで辿り着いた。……まぁ、音のする方を辿ったと言うのがより正確なのだが。


「……ここ、本当にオルクィンジェの部屋なのか?」


 部屋の前でひとりごちる。

 湿っぽい水音の響く部屋はいつもよりも立ち入り難い陰惨な雰囲気を醸し出しているような気がする。

 控えめにコンコンコンと三回ノックする。返事は無い。

 やむなしとそおっと少しドアを開くと異臭が漂って来た。余りにも臭気がキツくてそれが余りにも濃厚な血の匂いだと気付くのに数秒を要した。

 ただ事では無いと一気にドアを開くと――。


「ッッ!!?」


 地獄が、そこにはあった。

 子供部屋はむせ返りそうになる程の血で染まり、その中央では……。


「……ォェッ」


 清人が、何かを……いや、オルクィンジェを、喰べていた。

 肉塊がオルクィンジェだと分かったのは血に染まった中にくすんだ白の髪が一房混じっていたからだ。それが無ければ本人かどうかすら判別出来ないほどに酷い有様だった。


「何やってんだよ……」


 何もかもを思い出した。

 俺は『暴食』に……清人に腕を刺し入れられたのだ。


「…………」


「答えろよ、お前今何やったッッ!!」



♪ ♪ ♪



 心が暗闇に囚われていく。

 それは傷口から噴き出す膿のように。ドロリと垂れ落ちては心を赤黒く染め上げる。


 オルクィンジェが消えた。


 オルクィンジェが喰われた。


 オルクィンジェが死んだ。


 俺の中から温もりが零れ落ちていく。

 目眩がする。喉がカラカラに渇く。目が熱い。吐き気が止まらない。


 どうしてこうなった?


 俺はまた間違えたのだろうか?


 だとしたらいつだ?


 俺はいつ間違えた?


 俺はどんな間違いを犯した?


 それとも清人を救えなかった分際で、人並みの幸福を願ったのが間違いだったとでも言うのだろうか。

 あれだけ後悔しないと言ったことこそが間違いだとでも言うのか。そんなに、そんなにも俺は罪深だと言うのか。

 清人は敵となり、オルクィンジェは他ならぬ清人に喰われ、俺は腕を刺し入れられている。

 ……間違いが無いと言うのなら、こんな展開、余りにも理不尽過ぎるではないか。


 オルクィンジェは確かに『魔王』だ。高慢なところもあるし、捻くれたり拗ねたりして面倒なところもある。

 けれど、嬉しい時には笑うし、悲しい時には言葉を詰まらせたり、戦いに負ければ負ける普通の感性を持っている。悪戯を思い付いた子供の様な笑いはいつだって俺の背中を押してくれた。だと言うのに――。


 ドクンと一際強く心臓が脈打つ。


 許すな。決して赦すな。


「が……ぁ」


 吠えろ。猛れ。食い潰せ。


「叶人……?」


 心配そうな顔を見せても無駄だ。オルクィンジェを喰ったその顔は決して忘れない。


「おぁ……えぇ!!」


 手足は黒く染まりながら変形し、牙は鋭く伸びる。それはいつかの狂犬の再来。


「お前ェェェェェェッッ!!」


 依然として胸に突き刺さっている腕を引き抜くと無防備な腹部を獣の腕で殴り飛ばす。


「っぐ、待て叶人! 俺たちが戦う理由はもう無い!!」


「ガァァァァァッ!!」


 足がめり込むほどに強く地面を蹴り更なる一撃を加えようと清人に迫り――。


「はい♪ くだらない八つ当たりはストップ、です♪」


 いきなり現れた男の片手によって静止させられた。


「いやはや、これは全くもって興醒めですよ。怒りに任せて精神的な枷を取り払い、気の赴くままに殺す。実に興醒めです。私が見たいのは葛藤とドラマなんですよ。暴走も暴力も嫌いじゃありませんがぁ……」


 その男は顔面を鷲掴みにすると恐るべき膂力をもってそのまま地面に圧し潰した。


「貴方のソレは稚拙過ぎます♪」


 俺はその男の名前を知っている。

 ニャルラトホテプ。邪なる神にしてこの世界のラスボス。

 ソイツはいきなり乱入して来るなり好き勝手にそう口にした。


「自分が非情に徹し切れない事で仲間を失い、事情も知りもしないで八つ当たり。哀れですね。まぁ、非情に徹し切れないのは最初からわかり切っていましたがね。……あら、とすれば、この結果は必然でしたか。私とした事がいきなり要求のハードルを上げ過ぎましたね」


「何……なんだよ。何でオルクィンジェを狙う!!」


「さてさて、なんだかんだと尋ねたら答えてやるのが世の情けでしたか。では()()()()()として誠実に答えましょう」


 そう言うとニャルラトホテプは実に楽しげに目を細めた。


「それはね、彼が完全体になるとこの世界が滅びるからです♪ つまり、私たちは外来の世界の破壊者達を退けているだけなんですよ。理解しました?」


 …………は?

オルクィンジェ脱落

残りメンバー五人と一体


to be continued……

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