表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/257

Fate【1】

ブレパン遂に一周年であります!!

現時点での総字数36万字!!

気付けばいつの間にかこんなことになっておりました。

文章は相変わらずそこまでではありますが読んでいただいたおかげでここまでモチベーションを繋いで来れました。

ありがとう!!

さてさて、前置きはここまで。終わりの近付く新章をどうぞご覧くださいまし!!

 大森林を超えた先にあったのは荒廃し切った大地だった。

 空は常に陰り、人通りも疎ら、その上空気が乾燥しているのか喉がひりつく。その様は正に退廃の都。独特の風はまるで死者の呻き声にも似ていて少し気味が悪い。


「……本当にここが旅の終着点なのか?」


 思わず俺はそうひとりごちる。

 アニの記憶で見ていたからある程度のイメージはあったが、それにしても何というか……華がない。まあ、荒廃した土地に華なんて望むべくもないのだけれども。

 ただ何というか、ラスボス直前のステージ特有の『目に見えて分かるヤバさ』と『ラスボスが待ち構えてます感』が全く無い。あるのは虚しさと寂しさだけだ。


 兎に角、俺はここが旅の終着点なような気がしなかった。


「何だか少し不気味な場所だな」


「……ん。けど、前より酷くなってる……ような気がする?」


 何故そこで疑問形? と苦笑する。ただアニがここに居たのは十年にも満たないし、その上久方ぶりの帰郷だから街の印象なんて朧げになるのが普通なのかもしれない。


「取り敢えず着いたは着いで良いんやけんどこっからはどうするん? その『暴食』とやらもここに居るのが分かっていても詳細な場所までは分からんのやろ?」


「確かに場所は知らない。けど幽波紋同士は惹かれ合うって相場が決まってるから遠くないうちに会えると思うぞ」


「成る程。……つまりどう言う事なのだ?」


「『暴食』は『欠片』を持っていて、尚且つ彼もどう言う理由かは分からないけど『欠片』を集めている。だから、『欠片』を狙う彼は確実に叶人を標的にする筈だよ。だから確実にエンゲージする……って事だと思うかな」


 要領を得ない様子の篝に答えたのはジャックだった。すると今度は納得したようで「ふむ」と頭を微かに縦に振った。


「しかしそれで良いのか? 受動的な態度では決して先手は取れないぞ。今こそ先手を取るべきではないのか?」


 それはもっともだ。

 意見を翻すようだが俺の今回の目的はあくまでも『暴食』の打倒。先手が望ましいのは言うまでもない。

 だが、そもそもの話『暴食』は俺たちが大森林にある唯の家で色々と準備してきた間もずっとここに居た訳だ。となると『暴食』はここの地理に慣れ切っている可能性が高い。となると下手に奇襲しようとすると逆張りされて尚更不利になる可能性だってある。


 だから俺たちは今回、奇襲をしない。


「奇襲はナシだ。寧ろ逆を狙う」


「むん?」


「奇襲してきた悪党をヒーローが返り討ちにするのって一番カッコいいと思わないか?」


 今回だけは相手から奇襲してくれるのなら寧ろ好都合だったりする。何せこっちは糸を使った罠の構築で地理の有利を打ち消せるのだから。幾ら『暴食』に地の利があったとしてもその場所自体を先んじてこちらのテリトリーにしてしまえばプラマイゼロどころかお釣りが来る。それに糸のある状況下での戦闘経験はこちらが勝る。これなら理不尽極まりない能力を有していようが無理矢理有利を作れる訳だ。


「とは言え何処を拠点とするかとか、そう言ったところは全くの未定だし、偶発的に『暴食』と出会う可能性も――」


「ぼ、『暴食』だ!!」


 いきなり痩せた男性がそう叫んだ。


 『暴食』が現れたのかと咄嗟に辺りを見回すがそれらしき人影は見当たらない。

 ……男性の見間違い、だったのだろうか?


「……あー、あんさん。もしかしてあんさん勘違いされとるんやない?」


「勘違い?」


 何だか気まずそうな様子の凩に尋ねるとポツリポツリと。


「ほら、の。ハザミで会ったときに背丈とか髪とか色々と共通点多かったとか言われて冤罪ふっかけられとったやん」


 ……そうだった。俺の見た目は『暴食』のそれと瓜二つなのだったか。その後色々とあったからすっかり頭から飛んでいた。


「待って頂戴。叶人と瓜二つ?」


「ああ、ワリャはそう聞いたけんど。それがどうかしたんか?」


 唯は顎に手を添えながら何事かを考え始めた。唯も元は『六陽』だったらしいし何か思い当たる節でもあるのだろうか。

 ……いや、もしかしたら俺と全く同じ事を考えているのかもしれない。


「叶人、貴方は『暴食』の素顔を見た事はあるかしら」


「無い。途中から狐の面を付けてたしな」


「そう」


 そう言うと唯はそのまま黙り込んでしまった。


「……」


 こんな事を考えてしまうのは二週間程前に見たあの夢のせいだろうか。


『……俺さ、お前と出会って色々な楽しみを知ったけどさ。お前が居ないと全部灰色に見えるんだ。だからさ、死にたいと……そう思っても良い、よな』


 確信は無い。けれどあいつが『暴食』なような気がしてならない。


 俺は嫌な空気を感じながらも、退廃の町にまた一歩足を進めた。

感想欲しい!!

レビュー欲しい!!

ポイント欲しい!!

誤字脱字報告あら捜し等々バッチ来い!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここが通過点なのか、それとも終着点なのか気になります! いずれにしても山場目前ですね!! 今後の展開が楽しみで仕方がありません (*´▽`*)ノ [一言] 欲しがりさんに粗探し的なものを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ