Handout【First anniversary!!】
記念ssにございます!!
イラスト付き!!
その日、俺のアホ毛ははお祭りの予感を敏感に感じ取っていた。
「感じるぞ……ドキドキの感謝祭の波動を……!!」
何やら起こりそうな雰囲気を受けたアホ毛は元気に左右にブルンブルンと揺れている。それはもうヘッドバンキングしたのと同じくらいのレベルで。
具体的に何が起こっているのかは分からないが取り敢えずベッドから体を起こすとクローゼットの中に死蔵していた一枚のTシャツを引き摺り出す。
『I❤︎人生』とデカデカとプリントされた白ティーは個人的にはめちゃくちゃ好みなデザインなのだが清人が『それだけは絶対着るなよ』と封印してしまったのだ。
未だにその封印は健在だが――これを今着ずしていつ着ると、問答無用で袖を通す。
「……おい、サボロー」
清人の声が聞こえた気がしたが無視して着々と着替えて行く。衣服だけに。
「おい、デザインの敗北者」
と、そこで着替える手を止める。
「はぁ、はぁ……敗北者? 取り消せよ、今の言葉」
「いや、どうやったらそのクソダサTシャツがオサレに見えるんだよ。と言うかそれ、封印した筈だぞ」
『I❤︎人生』。俺的には素晴らしいと思うのだけれど主観の相違があるらしい。悲しい事だ。
「でも今はこれを着るべきなんだよ。……確実にな」
「いや、何でだよ」
冷静にツッコミ。俺でなきゃ見逃しちゃうね。……流石にこれは無理があるか。
「清人は感じないのか? この、何かよく分からないけど一周年っぽい波動を」
「一周年っぽい波動」
自分でもよく分からないが、きっと何かしらの一周年アニバーサリーなのだ。……何気に一周年っぽい波動ってパワーワードだな。
それはさておき、腕まくりをしてこちらの準備は完了だ。
「ふぅセット完了」
「おいおいサボロー。お前一体何するつもりだ?」
怯えを含んだ問い掛けを無視して机に無造作に放られたスマホのカメラを立ち上げる。
「なぁ、やっぱ一周年用に何かしらサービスショット欲しい感あるよな?」
「サボロー、お前まさか……!!」
机に置いてからタイマーをセット!! 良い感じに写るような位置に立つと。
「さて、あと任せたぞ」
ポイと、表出する意識を清人に入れ替える。
「おい待てよ!? これどうすんだ!?」
「あんまり騒ぐと映り悪くなるからな程々にな? あ、あと笑顔と一周年っぽいポーズも頼む」
「注文多いなぁ!?」
そう言う間にも時は流れ――。
「ほいニカッと笑顔」
カシャと、写真が撮影された音がした。
再び意識を入れ替えて撮れたてホヤホヤの写真を見るとそこには。
「一周年なのにピースかよ。それ二周年のときだろ」
笑顔でピースをしながら笑う少年の姿がそこにはあった。
清人のピースに苦笑を浮かべつつ暫くその写真を眺めてみる。
濃いクマはもう無いし、口元が引きつった感じもしない、何とも感じの良い笑い方だ。まぁ少し自棄気味な感じがしないでも無いがそこには目を瞑ろう。
「……俺もそろそろお役御免か」
清人の復活。それは俺の消滅を意味する。……この分だと俺が消える日はそう遠く無さそうだ。
「ま、今日は嬉し恥ずかし一周年だ! 湿っぽいのはナシナシ!! 思いっきりはしゃがないとな!!」
いつか清人が『I❤︎人生』と言える日を願いながら、俺はそのままの服装で部屋から出た。
今日は一日清人と一緒にショッピングと洒落込もうか!!
この後清人に何やってんだとめちゃくちゃ怒られた。




