God doesn't bless you【2】
畜生!! まだ出せない情報があるからかなり違和感の残る感じになってしまった!!
それから、俺は知った。
俺自身の悍しい生態を。そして――この世界の真実を。
……まぁ、全てを知ったときにはもう引き返せなくなっていたのだが。
♪ ♪ ♪
「駄目ですねぇ、死体なんて食べて。普通に犯罪ですよ、コレ♪」
そう言って彼は俺を見下ろす。その目は眠たげだったが、嘲笑の色がありありと見て取れた。
「黙れよ! 俺は、俺はこんな事……ッ!!」
しかしそんな否定の声は冷淡な声に掻き消される。
「――でもいつかはは食べる。貴方は必ず誘惑に屈する」
それはゾッとする程冷たい絶対零度の声だった。
「……」
「それは違う」と言おうとした。否定しようとした。けれど喉から漏れるのは壊れた笛から出るような声とも呼べない掠れた声だけ。
「頭ではもう理解しているんじゃないですか? 貴方はもうこれしか食べられないと。これこそが自分の糧になるんだと。故に貴方は『暴食』なのだと」
『暴食』。その言葉はことの外すんなりと頭に染み込んだ。それは自覚してしまったからかもしれない。俺は、人を喰らわなければ生きられないのだと。
「さて、そんな人喰いの殺人鬼予備軍な貴方にとっておきの朗報です」
「……何だよ」
「罪悪感無く空腹を満たしつつ、貴方の体質改善に貢献が出来る職場がありますよ♪」
そんなうまい話があるものかとニャルラトホテプを睨み付ける。
冷静になって考える。そもそも人肉の最初の一口を俺の口に入れたのはニャルラトホテプ本人だ。あのまま自制出来たかは怪しい所だが着火剤に火を付けたのは間違いなく彼だ。それがどうして俺を詰れる。それに俺が普通の食品を食えない事はまだ証明されてはいない。
それに体質が改善できると言うのも眉唾物だ。
「……」
無意識に喉がゴクリと鳴る。それはニャルラトホテプのうまい話に魅力を感じていると言う証拠だった。
「身体は正直なようですね♪」
「……言ってろ。俺はペテンには掛からない」
そう言うと彼は「困りましたねぇ」と眉根を寄せた。けれどそれが単なるポーズに過ぎないことを俺は直感した。
そしてその直感通りにニャルラトホテプは口を三日月型に歪め――。
「体質改善の方法だけでも聞く気はありません?」
先っちょだけ、先っちょだけ、みたいなノリでそんな事を言い出しやがりました。
正直なところ非常に腹立たしい。しかしここで聞かないのは余りにも幼稚だし、それに損だ。先程ペテンだと断じたのはソース不足だったから。なら、ここで聞かないのは筋が通らない。
Koolになれ。ここで聞かないと言う選択肢は無い。……あれ、スペルミスってないか。
「……分かった。信用するかは別として聞くだけ聞く」
「それは良かった。さて、端的に言いますか。――私と契約して勇者になって下さい」
「は?」
ここでニャルラトホテプを殴らなかった自分の理性を俺は褒め称えたいと思う。
♪ ♪ ♪
物語の勇者とは様々な種類がある。例えば歴戦の古兵だったりとか、『魔王』を倒すスタンダードな勇者、異世界転生チーレム無双しだす勇者、イキったあげく主人公に敗北する似非勇者、使命を果たした途端に国に使い潰されたりするブラック勇者etc……。兎に角沢山ある。
「ですから文字通り世界を救う勇者ですよ♪」
ではコイツの言う勇者とは一体何か。……と言うかそもそも体質改善と文脈が繋がってないし、それにこの活用用途不明な知識は一体何なのだろうか。
「具体的には何をするんだ」
そう尋ねるとニャルラトホテプは頬も裂けんばかりに笑みを深めた。
「『魔王』の打倒です♪」
そう言うと尋ねてもいないのにそのままスラスラと口を動かし始めた。
「かつてこの世界をめちゃくちゃにしようとした『魔王』と言う存在がいるんですけども。それが復活しようとしてるんですよね。復活したらこの世界が危ない。ではどうするか、倒すしかありませんね?」
「その『魔王』とやらを倒したところで俺に何のメリットがある」
「簡単な話です。貴方は『魔王』を食べれます」
呆気に取られたのは一瞬だった。
「『魔王』は強力ですがその代わりにとても強大なエネルギーを保有している。それを食べれば空腹……即ちエネルギーの枯渇の心配がなくなると言う訳です」
もう食べなくて済む。そう思うと心が幾分か軽くなるのが分かった。
……きっとこれもコイツの筋書き通りなのだろう。けれど縋らずにはいられない。また血肉を貪る獣になる位なら。
「……勇者に、なる」
俺は、黒幕の手駒になろう。
「承知しました。『暴食』の勇者よ。『ナイツ・オブ・デイブレイク』の頂上に立つ『六陽』が一人、ニャルラトホテプが貴方の『デイブレイク』入団を祝福しましょう」
公開されているハンドアウト
・【暴食】について
オタ知識あり。←new
その正体はゾンビである。←new
記憶喪失中←new
主人公と似た背丈と顔を持つらしい狐面の男。
光と闇と言う中二病全開な魔法の適性を有している。
現在三つの『欠片』を有している。
コイツは一体誰なんだ……。




