表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想旅団Brave and pumpkin  作者: 睦月スバル
Report5:Rebuild
155/257

Goodbye Days【1】

サブタイトルで主人公が何やらかすか察する人居そう。

「……ッ!!」


 ホラー系の映画の一場面のようにハッと目をかっ開く。寝巻きは汗ばんでぐっしょり湿っており、動悸ももの凄いことになっている。


「俺のいない空白に、まさかあんな事が起こってたなんてな」


 少々ぶりに再来した悪夢は文字通りの悪夢だった。

 俺は高校の始業式の日に意識を取り戻し、その日以来清人が消えた。そう思っていた。

 だから、考えもしなかった。いや、意図的に思考に蓋をしていたのかもしれない。俺が消えた日と俺が意識を取り戻した日との間に空白期間がある事に。

 その間清人の身に何が起こり、清人が何を思ったのか。それを俺は知らないでいる。

 過去の事とあっさりと切り捨てられたならどれだけ楽だろうか。思うに過去は鎖にも似ている。前に進もうと言う意思を拒み、その場に縛り付ける。


「……でも今は、今だけは止まっていられないからな」


 だが、今だけは止まってはいられない。アニの件もそうだし、『暴食』の件もある。あと少しで全部が片付くと言うタイミングで今更過去の事で迷ってはいられない。

 だから、今だけ鎖は無いものと見做せ。鎖などないと思い込め。そうすれば後で幾らでも考える時間は出来る。


 ーー本当に?


 俺は何かを見落としているのではないか。そんな疑念が頭を過り中々寝付け無かった。



♪ ♪ ♪



 翌日、俺たちはいつものように朝食を取った。ただ、その空気はお通夜とまではいかないものの少し重たく感じられる。唯、篝、ジャック、オルクィンジェはいつも通りだが、アニは勿論、『怠惰スロウス』のエクエスの一件が尾を引いているのか凩の表情も優れない。あ、あと俺もか。


 ……正直言ってこのまま大森林攻略と言うのも少し難しい気がする。それにネイファ到着前にはアニの件を片付けておきたい。


「ぐぇ」


 と、眉間にシワを寄せながらウンウン唸っているといきなり頬を引っ張られた。それが誰か、なんてもう分かりきっている。


「いふぁい、いふぁいよ唯」


 が、抗議も虚しくつねりが止まる事はない。


「貴方がリーダーなのよ。リーダーがそのざまだと、その内全体に伝播して本当にどうしようもなくなるわ。しゃんとしなさい」


「そう、だな悪い」


「謝罪は不要よ。それより、差しあたっては何をするのかしら?」


 フムと考える。くどいようだが作戦はある。だが、そのタイミングがだけが決まっていない。そもそも俺の考えた作戦はタイミングがかなりシビアになって来る。つまりあれだ、『ぼくのかんがえたさいきょうのさくせん』に近い。決まれば効果は絶大な代わりに机上の空論レベルで前提条件が難しい。


「死なない程度に苦戦を強いられて、その上で主人公補正的なサムシングが期待できる場面……」


 自分で言ってて思う。何だこれ。

 今まで矢鱈とそう言った場面に遭遇してきたから無意識のうちに前提条件に盛り込んでいたのだが、正直これは無い。

 それに大体、ここら辺のモンスターでは力の差があるから凩と篝が瞬殺するし、アニも先日大虐殺を実演したばかりだ。……モンスター?

 脳裏に薬草の店主の言葉が過ぎる。


『森に強力なモンスターが住み着く様になったとかで大森林の浅い所にもモンスターが出現するようになっちゃったみたいでなぁ。そんな感じで薬草取りが激減したのよ。薬草自体の需要は変わらないけど、こっちに届く薬草の供給は少なくなるから価格は高騰しまくり。……一攫千金を狙った連中も次々に死んじゃうって塩梅でね』


「これだ」


 思わずニヤリと言う笑みが漏れる。


「ジャック!」


「おっと、久しぶりに僕の出番かなぁ?」


 問、強敵と出会い死闘を繰り広げる的なシチュエーションが必要です。貴方はどうします?


 これに対する俺の回答はこうだ。


「この辺りで俺たちが死なない程度に危険な一帯を教えてくれないか?」


「叶人がバトルジャンキーになっちゃったかな!?」


 強敵に自分から突っ込みに行く。


「さぁ、戦争デートを始めようか」


 さて、Keelに決めようか。



♪ ♪ ♪



 思い立ったら即行動。何やら悩んでいる様子の凩に真っ先にその旨を伝えると。


「成る程の。そりゃあ、渡りに船って感じやな」


 ……何故か大層喜ばれた。

 その時の表情は何と言うか、こう、新しい玩具を与えられた子供の満面の笑みにも似ていた。やはり生粋のハザミ人である凩の身体ら闘争を求めているのだろうか。


「何でそんなに嬉しそうなんだ?」


「何でって、そりゃあ新技の構想がイイトコまで漕ぎ着けたからの。これで昂らなきゃ男児じゃなかろう?」


 新技……グッと来る、良い響きだ。

 と、そうでは無く。つまり何か。もしかして凩は。


「さっきまで暗い顔してたのって……」


「あ、そりゃ勿論新技について考えてたからやらな。『すろうす』とやらの戦いで少し手数不足を感じたからの。篝との役割分担があるとは言えあって損にはならんと思っての」


 そう言うと凩は少し恥ずかしそうに頬を掻いた。どうやらエクエスの一件を受けて新技を開発しようと思ったらしい。……にしても新技の構想を僅かに一晩で済ませる辺り流石に『烈風』である。速きこと烈風の如く。


「因みにそれって一体どんな技なんだ?」


「それは見てのお楽しみ、と言いたいところやけど。仲間内で隠し事に得なんてないし、素直に言うわ。それはのーー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ