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Enjoy your madness!【4】

……まぁ、読んでくれ。話はそれからだ。

「……面倒な事になったわね」


 唯は一人渋い顔をする。

 と言うのも分断の為にモンスターを放ったつもりが逆にモンスターを辿られ少女との合流の一助になってしまったからだ。

 しかもこの先からは少女が糸を張りまくった領域。これ以上進まれたら合流に王手が掛かる。それは何としても避けねばならない。


「『嫉妬エンヴィー』の能力で清人達を足止めするにも難しいし……」


 唯の大罪系統セブンス・シリーズである『嫉妬エンヴィー』は強力ではあるが無敵の能力ではない。それは唯が一番良く知っていた。

 『嫉妬エンヴィー』の欠点は大きく分けて二つ。

 一人につき三発までしか状態異常の弾を撃てない事。

 弾一発毎にタメの時間が必要になる事。

 今のところ唯は清人に二発、少女に一発の弾丸を撃っていた。

 最初に清人に撃った正気を削り、対象に極度の不全感を植え付ける『不全の弾(アルルベル)』、その後家に入ったタイミングで撃った『錯乱の弾(ルクベル)』。

 そして、先程少女に撃った『恐怖の弾(ダギベル)』。

 だから、唯は清人に対し残り一発。少女に対して二発。その他を三発ずつで済まさなければならない。

 弾のレパートリーは数あれど、回数制限と再装填の時間が必要になる事がここに来て相当響いていた。


「……仕方ないわね。あまり使いたくは無かったけど、こうなれば使ってやるわよ」


 唯が取り出したのは一つの宝珠。緑色に輝くその宝珠には『魔王』の力が封じられているのだと言う。ニャルラトホテプから貰った物を使うのは癪だがこの際は仕方ないかと割り切る。


 しかし、唯は自身でそれを使わない。


「目覚めなさい」


 その宝珠を床に落とすと宝珠は発光しながら木目に吸い込まれていく。


「グッドモーニング、マイ、スイートハウス」


 家が生物的に脈動する。

 ここは魔女の家。家でありながらモンスターがポップする奇妙なダンジョン。

 そして、そのダンジョンは『魔王』の力を得て大きな変化を遂げる。



♪ ♪ ♪



 ゴゴゴと、鈍い音が響いた。


「地鳴りか……?」


「いや……これ何処かで見た流れだぞ」


 記憶の奥深くを探る。確か、何かしらでこんなシチュエーションがあった筈だ。

 木の柱が問答無用でバキバキ折れるような音が耳元をつんざく。

 ああ、そうだ。家の改修工事の時ってこんなような音がしていたっけ。


「恨むぞカルシファー……っ!!」


 モンスターハウスでも、ましてや動く城でもあるまいし、こんな展開はまっぴらゴメンだ。


『誰がカルシファーだ。誰が』


 その言葉に反応したのは意外にもオルクィンジェだった。


『良いか、その場から動くな。恐らくこの家はどう言う訳か俺の力をーー『欠片』を取り込んでより強大になっている。それによって部屋同士の位置関係が変化したり、増えたりしているのだろう』


 ここに来て『欠片』まで絡んで来るとなると更に厄介だ。二人とも強いとは言え『欠片』のパンプの強さは俺が一番良く知っている。


「取り敢えず変化が止まるまでその場にステイだ」


「了解や。……にしても嫌な気配がする。何というか、悪意の巣窟と言うか。家に入るまでの流れもそうやったけど何処までも恣意的な悪意……いや、敵意、害意……憎悪。そう、憎悪や。そいつをヒシヒシと感じる」


「……憎悪、か」


 車に轢かれて、無様にも死んだ少女の顔が脳裏に過ぎる。

 以前のニャルラトホテプが言った通りであるのなら、ここに居るのは恐らく高嶋唯その人。


「何や、あんさん恨まれる心当たりがあるんか?」


 その問いに俺は静かに首を振る。


「寧ろ恨んで、憎みたいのは俺の方だ……って感じだな」


 寧ろ、何故唯が清人を憎むのか理解に苦しむ。清人は底抜けに善良で、優しい良い奴なのに。それをどうして憎めると言うのだろうか。


「……それって、ワリャの屋敷で話した恋話と関係あるんか。その、何て言うか、あんさんがヘタレ以外で負の感情を吐き出したのってあん時以来やから、何か関係あるんかなって」


 すると凩はそう尋ねてきた。

 戦いの時の勘が鋭いのは良い事だがこう言う時の勘が鋭いと少し困る。


「まぁ、無関係では無いな」


 言葉を濁す。

 あれだ。……君のような勘の良い剣士は嫌いだよ、ってやつだ。


「っと、そろそろ音も治ったかな。アニちゃんが心配だし、先を急がないとね」


「いや……どうやらそうもいかんらしいで」


 それはピリピリと肌を刺すような威圧感。圧倒的な力の気配。


「敵さんも本気、出したみたいやな」


 現れたのはモンスターではなく白い人形。ただし、その見た目はーー。


「オル、クィンジェ?」


 我らが『魔王』、オルクィンジェに酷似していた。



♪ ♪ ♪



 アニは奇妙な焦燥感を覚えていた。

 先程、家が軋んだかと思えばいきなりまた糸が切られてしまったのだ。その上、身に覚えのある嫌な気配も出現して大変不穏な雰囲気が辺りに漂っている。


「……『魔王』」


 その名を思い浮かべながら端正な顔を顰める。

 彼女は一度『魔王』に肉体を支配されサボロー(彼の名前が分からないので便宜上こう呼ぶ事にする)を殺しかけてしまった苦い思い出がある。これが歓迎出来る筈がなかった。

 急いでサボロー達と合流せねばと背後のドアを開く。


 あちらには凩がいるのはサボローの目を通して知っている。しかし、相手はあの『魔王』の力だ。戦力が大いに越した事は無い。


 しかし、ドアの先にはーー。


「っ!!」


 二本のシックルを構えた白い人形がアニを待ち構えていた。

言い訳をさせてくれ。

別にザフキエルを作ろうとした訳じゃないんだ。

いや、時崎狂三好きだけどさ、めちゃくちゃ好きだけどさ。

それとこれとは別の話で。唯まで前衛の持つような武器使うとバランス変だし。

主人公ですら杖使うような世界だからね。

となると遠距離武器が使いたい。→銃やんけ。

で、元々『嫉妬』の能力は精神操作、ないしそれに類する能力にする予定だった。デバフ要員としてのデザインだね。で、デバフは複数種要員するのが望ましいと思考。→あれ、何処かで見覚えが……。

そして、弾に名前を割り振るとあら不思議。


……結論、ヤンデレキャラは可愛い。QED

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