Resumption of the tragedy【1】
アイツが復活しますよー
そんなこんなあり、とても気恥ずかしい思いをしたものの段取りはとんとん拍子に進み遂に俺たちは大森林へと到着した。
「すごいな……クメロの森よりも森だ……」
「何か知能指数の低い感想だねぇ」
余りにも豊かな緑の風景に思わず頭の悪い感想が漏れた。
やはり大森林と言う事もあって木の本数は尋常ではない程多い。地面も苔むしていて下までしっかりと緑色だ。その様は正しく緑の大地と言うのが相応しいだろう。
「さてと、それじゃあ予定通りやるとするか」
今日ここに訪れたのは勿論観光目的ーーでは無い。
「さぁ、ワイルドハントの始まりだっ!!」
本日俺たちが実施するのは個人の力量の把握。まぁ、要するにモンスター狩りだ。但し、ただの狩りではなく縛りプレイの狩りなのだが。
その縛りの名前は一騎駆け。実質のソロプレイだ。
元々は俺とジャックとオルクィンジェでの旅だったから気にしていなかったのだが、一気にアニ、凩、篝の三名が加わり、今までのように好き勝手に動いていると仲間の足を引っ張るような事態に発展する可能性が増えてしまったのだ。
そうならないためにも各人の戦闘方法の理解は必須となる。だからこその一騎駆け。
パーティーから一人を選んで単騎で戦闘させ、その間残ったメンバーは観戦。ピンチになったり、キツくなったら合図を出し残りのメンバーを全投下する。
これなら戦闘のクセやスタイルもある程度把握する事が出来るって寸法だ。
「清人、清人」
そんな事を考えていると不意にジャックが霊衣の裾を引っ張ってきた。
「何だ?」
「オルクィンジェはあれからどうかな。あの時、凄く取り乱してだけど」
「オルクィンジェは……まだ、何とも」
『暴食』に『欠片』を食べられてから数日経ったがまだ何も反応が無い。目の前で食べられたのが相当堪えたのだろう。
何処かツンケンとしたあのノリが無いのはまだ数日しか経っていないものの何処か寂しい。
「……そっか。けど君自身は大丈夫なのかな? 君はオルクィンジェとの入れ替わりを多用してたから今回の趣旨には合わないんじゃないのかなぁ」
「まぁ、そうなんだけどな」
今回見るのはあくまでも個人の戦闘だ。
俺自身も強くなったとは言え、オルクィンジェに支援して貰えない俺など周りの仲間と比べれば塵のようなものだろう。
「けど、ずっとオルクィンジェ頼りって訳にも行かないだろ。いつか、たった一人で戦わないといけない場面になった時に無力のままじゃいられない。……それに不謹慎だけど、これも良い機会なんじゃないかって思うんだよな」
「どう言う事かな?」
「何処までやれるか、自分を試したいんだ。……その、あれだ。レリゴーってやつだ」
『……ふん、ありのままの自分を曝け出せない奴が何がレット・イット・ゴーだ。片腹痛い』
耳に響いたのは何処か呆れたような変声期前の少年の澄んだソプラノだった。その声に合致する人物など一人しかいない。
「オルクィンジェ……」
『他に誰がいる。俺は俺だ。例え両腕と他の一部分だけ辛うじて残っている程度に過ぎなくても、それでも俺だ』
「本当にオルクィンジェなんだな……良かった」
「あれ、でも確か清人ちょくちょくオルクィンジェに呼びかけてたよねぇボソボソって。それが何で今になって出てきたのかなぁ」
確かに。オルクィンジェが出て来てくれたのは素直に喜ばしい事ではあるのだが、一体何故このタイミングで出て来たのだろうか。少し釈然としない感じがする。
そう疑問に思っているとはぁ、と盛大な溜め息が耳の中にこだました。
『昨晩のお前の醜態を見て呆れ果ててな。お陰で怒っているのが阿呆らしくなった。何が悲しくてお前が抱き締められながら泣いている場面を延々と見続けなければならなかったのか。……お前にこの気持ちが分かるか?』
……成る程、解りたくない。
と言うか、昨晩のアレがここまで尾を引くとは正直思わなかった。
『まぁ、時間を置いたお陰で少しは気分の整理はついた。これからもお前が望むなら俺は力を貸そう。まぁ、今回に限っては要らぬお節介かもしれないがな。……お前自身が培った力。存分に活用してみるが良い』
「……応ッ!!」
その声に俺は大きな頷きを返す。
「じゃあ、一丁行くとするか!!」
実行順はここに来るまでに予め話し合ってある。その一番手を飾るのはーー。
「了解や。ワリャの実力、とくとご覧あれっての!」
ニカッと溌剌たる笑顔で応えるのは焔のような赤髪と蒼玉の瞳の快男児。
「一番槍は任せたぞ、凩」
「おう、任せとき!」
さて……改めて見せてもらおうか、ハザミ生まれのその実力を!!
オギャると全てが良い方向へ向く頭のおかしい世界線




