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Continue 【3】ーsecond partー

ヤバイ、字数が伸びまくってる……。

「なっ!?」


 俺はその光景を呆然とただ見ていた。美しい銀髪の少女が実の父親に殴られるその光景を。


「おっちゃん!? 一体なしてそんな事を!?」


「何故だと。決まっているだろう。この愚かな娘は大罪を犯した。人を殺し、そのまま姿を眩ませた。それを咎めない親が何処に居る。それとも、お前は娘が帰って来て一安心だと、おれがそう言うとでも思ったのか。だとするならおめでたい頭をしてるもんだ。人を殺して、魔獣に身をやつした娘が元に戻った。ならーー償いをさせるのも親の務めって奴だ」


 日本育ちで、こういった類の光景をあまり見たことはないが確かにと、そう思わないでもなかった。


 この世界ではあまりにも命が軽い。しかし、軽いが故に重くもある。矛盾するようだが、それこそがこの世界のリアルなのだ。

 魔獣が襲って来たら人は死ぬ。魔獣が襲って来なくても些細なことで人は死ぬ。些細な事柄が死に直結するこの世界は地球のどの紛争地域よりも危険な場所だと言える。

 しかし、死が地球よりも身近であるが故にこそ、その手で命を摘み取った罪は重いのだろう。


「おっちゃん! でも、でもワリャ達は全力で助けた!! 死ぬかと思ったけど、全員無事で帰って来た!! それで……それで、終わりで良えやろっ!!」


「馬鹿者ッッ!!」


 凩の必死の訴えはしかし、怒声に掻き消される。


「こ、殺してしまうなら!! ワリャ達は何の為に篝を救ったのか分からん!! 助けても殺すなら、いっそ、助けない方がーー」


「凩、それ以上は、ダメだ」


 目尻に涙を溜める凩を手で制する。

 ……凩の言う事は痛い程に分かる。俺だって凩を助けたいが為に篝を命懸けで助けようとした。それなのに、後で殺す為に助けたとなるなら、それは少し残酷だと思う。

 けれど、俺は凩の言い分を全面的に認められはしなかった。


 ……罪を犯した人間がのうのうと暮らすのは、きっとダメな事だから。


 それは俺の醜いエゴ。凩を救うと、そう宣いながらも、罪人に……篝に罰を望まないではいられなかった。


「何であんさんまで!! 命懸けだったやろ!? いや、あんさんが一番死にそうだった筈やろ!? 作戦考えて、絶望しかけてまで戦ってくれたやろ!?」


「……手前さんの方が余程利口だったみたいだな。これ以上、おれから話す事は何も無ぇ。ああ、そうそう。手前さんには手間を掛けるが、後でまた来てくれ。報酬や諸々の事を話したい」


「……分かりました」


「あんさん……なぁ、嘘やろ? 嘘やって、それもこれもぜんぶ演技だって。そうは言ってくれんのかよッ!!」


「馬鹿息子、手前は少し黙っていろ」


 弱々しい涙が、畳を濡らす。


「……それじゃあ、篝があまりにも浮かばれんやろ。篝が、どれだけ心を砕いたか、篝がどんだけ苦悩したのかも。ワリャは知っとる。だから、そんなのは……酷いわ」


「……そうなる、よな」


 篝を只管に庇う凩はーー何処となく清人によく似ていた。


 清人は最期の最期まで、一度も唯を咎めた事がなかった。どころか、ずっとその心の中心には唯がいた。……清人はずっと唯が好きだった。唯は、清人の人生を歪めた張本人だと言うのに。罪人であるはずなのに。


 そう思ってしまうのは凩と篝に清人と唯の面影を重ねているからなのだろう。

 助けたいのと願うのも、罪を償わせたいと願うのも。きっとそのせいだ。


 ……やっぱり、俺は清人にはなれそうにないや。


「……おれの話は以上だ。此処からは報酬の話をする。餓鬼共は出て行け」


 そう話をしめると養父は口を噤んだ。

 何とも形容し難い空気が辺りを漂っているようで胸が苦しくなった。


 凩は背を丸めながらトボトボと店を出て行った。そしてそれに追従するように篝も続く。その様は亡者の行進のようにも見えた。


「清人は、このままで良いのかな? ……これが君の望んだハッピーエンドの形なのかな?」


「それが、正しいだろ。少なくとも俺はそう思ってる」


「けど……」


「ジャック、それ以上の言葉は、蛇足。清人には清人の正義と理念がある。それに基づいた最終的な結論なら口を挟むのは、ダメ」


 アニもジャックも、それ以上は何も言わなかった。

 後は俺次第だとでも言うように。


 ……確かに報酬として篝をお咎めなしにする事は交渉次第では可能だと思う。けど俺はそうするつもりは……正直、無い。


 凩は篝を救う事が出来て、篝は人として罪を償い、人として死ぬ。正しい終わり方ではないか。後味は確かに悪いだろう。けれどそれが正しいはずだ。……正しい筈なんだ。


 だから、俺がここで「咎めるな」とそう駄々を捏ねるような真似は、しない。


「さて、手前さん達……いや、貴殿達。報酬の話をする前に少しだけ話がしたい」


 だから、俺はいきなりのかしこまった口調に困惑しないではいられなかった。



♪ ♪ ♪



「……どこまでも手前勝手な願いしてるのは分かってる。けど、貴殿に頼みたい。他ならぬおれの馬鹿な餓鬼共の為に」



♪ ♪ ♪



 凩と篝は屋敷の中で一言も発しないまま、ただ座り込んでいた。

 その顔には諦観と悔しさが滲んでいる。どうして間違えたのか。何処で間違えてしまったのか。

 両者ともそんな事を考えているようだった。

 そして、その静寂を唐突に破ったのはーー。


「ふぃー、たんまり貰った貰った。この面子だけじゃ到底使い切れない程貰ったもんだ」


「そうだねぇ。これでまた旅に出ても安心かな」


「ん! おやじさん、肝っ玉」


「それを言うなら太っ腹だろ……」


 報酬を貰ったのか、満足げな清人一行だった。


「っと、忘れてた。凩! 篝を連れてまた店に行けってさ!」


「……あんさん達は?」


「俺たちは次の旅に出る。おっちゃんからたんまり貰ったし、何よりも俺は旅人だからな。少し辺りをぶらついたら船着場の方に向かうつもりだ」


「そう、か。達者での」


 そう言うと清人は何故かニッと悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 やはり清人達は根っからの旅人気質なのだろう。宿と金を求めて、それが満たされれば幻想のようにふわりと去ってしまう。


「じゃあ、()()()()()また会おうな」


 そう言うとあっさりしたもので一行はそそくさとハザミの街へと消えて行ってしまった。


「縁があれば、の」


 彼らが居なければ篝を救えなかった事は間違いないだろう。だが、その奇縁もここで終わり後に待っているのはーー。


「ほいじゃあ、黄泉路を行こうか、篝」


「分かっている。……分かっているとも」


 震えた肩と、過酷な現実だけだった。

凩×篝と清人×唯は関係にある程度の類似性があります。


そして主人公は篝に対して罪を償うべきと考えている。


つまり……その関係をそのまま清人と唯にズラすとだね。


わー(白目)


そう言えばニャルが唯の顔になった瞬間、主人公ブチ切れて支配権まで奪って殴ろうとしましたね。

と言う事はつまり……。


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