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悲しみの転生  作者: 菊地真
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プロローグ

僕の名前は加藤聖人カトウショウト。名前の由来は12月25日に生まれたからだ。ただそれだけ。家族は父と母そしてまだ産まれたばかりの弟が一人、若い頃に自分の妻を癌で亡くした祖父の五人家族だ。

僕は東京から父の都合で引っ越して、地方の中学校に編入した中学一年生だ。僕は夏休み明けに編入し、9月から中学校に入った。その学校はかなり荒れていて教員も厄介な生徒に手を焼いていた。そこに東京からやって来た僕がいきなりは入ったもんだから早速、いじめという名の洗礼を受けた。いじめのリーダー格の三人、大翔(ソラ、男)、雅也(マサヤ、男)、充(ミツル、男)からいじめを受けていた。後にわかったことだがどうやらその三人は学年のガキ大将的な存在だった。

ただ最初はあだ名で馬鹿にされるくらいだったから無視していた。そんな時僕はいつも本に逃げていた。本を読めば自分の世界に入ることができるから。いじめはだんだんエスカレートしていき休み時間中にいきなりは教科書で頭をひっぱたかれたりした。

痛かったがそれも無視した。

月日は流れ僕は二年生に進級した。クラス替えも行われたが、またあいつらと一緒になった。

大翔「おー!またいっしょじゃねぇか!遊んでやるから覚悟しとけよ?」

雅也「ぜってー先公どもにチクんなよ」

充「げっ!またこいつといっしょかよ。もう飽きたんだよねー」

僕も充に全く同感だ僕だって君たちと一緒でもううんざりだ。

新学期が始まってからもいじめは続いた。放課後に呼び出され殴られたり蹴られたりなどもされた。とても苦しかった。教員に相談したが全く動いてくれない。意を決した僕は両親に相談した。

僕の両親はいじめっこの親に謝らせた。それからはいじめられることはなかった。

そうこうしている内にもう夏休みになっていた。夏休みの宿題は8月前半までに終わらせてしまったので時間が余った。なので僕は趣味の読書を進めた。事前にいくつかの本をピックアップしてあったので本選びは速やかに終わった。いつの間にか時間が立っていて気付けばもう夕方だ。今日は父の仕事が休みだったので父の料理当番だ。夕食を食べていると父が

父「今度夏休みの最後に旅行に行こうと思うんだけどどうかな?」

と言った。

母「それいいわね!もちろん聖人もいくわよね!」

祖父「おー!それはいいのぅワシも腰が治れば行きたいのぅ」

僕「あ、ああ、うん行くよ」

母「よし決定!」

と母が半ば強引に僕を旅行へ誘った。

旅行へ出発する前日。祖父は腰の容態が悪化し旅行に行けなくなった。旅行先で事件は起きた。父の運転しているレンタカーが事故に遭ったのだ。僕は運良くエアバッグが作動。父はなぜかエアバッグが作動せず頭を打ち意識不明。後部座席に座っていた弟と母も意識不明。

気がつくと僕は知らない天井を眺めていた。体が重い。

「やっと目が覚めましたか!?先生!この子は目が覚めました!自分の名前わかります?」

と知らないおばさんが大声を出している。っていうより「は」ってなんだ?どうやら僕以外の家族は皆事故で亡くなっていた。

あまりのショックに声も出ずまた気絶してしまった。

次に起きたときは知っている天井。知っている匂い。知っている寝心地。僕の部屋だ。隣を眺めると祖父が泣いていた。

祖父「お前だけでも生きていてくれて良かった。聖人だけはおじいちゃんが死んでも守るからのぅ」

そう、家族は死んだ。父も母も妹も皆死んでしまった。頬を涙がつたっていた。数日間食事は喉を通らず、好きなお菓子でさえも喉を通らなかった。僕は途方に暮れた。一週間がたったある日ようやく食事が喉を通った。味がしない。ショックにより味覚がどうかしているのだろうか?いつもなら楽しくにぎやかな食卓も今は何の音もしない。小さな咀嚼音、箸のカチカチという音も無い。

祖父「聖人、学校、行かないか?」

きっと気分を一新せねばとおもって気を利かせてくれたのだろうが僕はいじめられていることを思い出した。しかしこれ以上祖父を悲しませるわけにはいかない。僕は黙ってうなずいた。

次の日朝から僕は学校に登校した。いじめっこのたちはまた絡んできた。

大翔「おめぇがいなかったからよぉ寂しかったぜwww」

よく見ると他の気の弱そうなやつがいじめの犠牲になっていた。

朝の会が終わり僕はいじめっこたちに呼び出された。僕は殴られた痛みは感じないが殴られる度に憎しみが強まった。怒りが込み上げてきた。事故によって亡くなった家族の憎しみをぶつける相手を僕は間違えた。

謎の声「コロセ...ソイツラヲコロセ!!」

暗い憎しみを持った黒い声が頭の中に響いた。

僕「うわぁぁぁぁぁ!!!」

と叫び声をあげながら僕はいじめっこに殴りかかった。

大翔「何すんだよ!!」

雅也「大翔!大丈夫か!?」

充「怪我したらどうすんだよ!」

そのあと雅也と充に羽交い締めにされ

大翔「お返しに一発殴らせろ。それで今日は勘弁してやる。」

ドカッ!!!

僕は頭が飛んでいくんじゃないかと思った。僕は倒れた。眼鏡が遠くに落ちている。誰のだろう。本の読みすぎで目が悪くなった僕が目を細めて見た。あれは僕のだ。うまく立ち上がれない。軽い脳震盪だ。僕は這いつくばりながらも眼鏡を手に取った。

その眼鏡は一万円以上もしたのでかなり丈夫にできている。そのため、なかなか壊れない。皮肉なものだ。僕は簡単に壊れるのに眼鏡は壊れない。僕は眼鏡にさえも負けた気がした。

その後も学校に行ってはいじめられた。そのうちクラスで僕の味方をしてくれるやつは一人もいなくなった。死にたい。そう思った。死ねば楽になる。死ねば家族のところに行ける。こんな現実からさっさと逃げたい。

月日が経った。今日は12月24日。僕の誕生日の前日だ。しばらく学校には行っていない。まただれかが僕の代わりをやらされているのだろうか。ふと枕を見ると抜け毛がたくさんあった。鏡を見ると顔もやつれていた。頭には若白髪が何本も生えていた。

ストレスがかかりすぎたのだ。

祖父「おはよう...明日聖人の誕生日じゃのう。本を買ってきてやろう。どんな本がいい?」

僕「なんでもいい」

祖父「そうか。じゃあたくさん面白そうな本を買ってくるからのぅ」

と祖父は僕に微笑んでくれた。僕はちっとも笑えなかった。

僕の誕生日当日の夕方、祖父は重い腰をあげて一番近くのショッピングセンターまで買い物にいった。僕の好きな食べ物。僕の好きな飲み物。僕の好きそうな映画のDVD。僕の誕生日プレゼントの本。

夜だ。僕が住んでいる町は田舎で街灯もない。信号すらもない。

ドオォォン!!

鈍い音が鳴った。

そのとき僕は気にしなかった。2時間が経った頃電話がかかってきた。知らない番号だった。僕は受話器を取った。

「もしもし!?加藤さんのお宅ですか!?」

僕「はいそうですが」

「あなたのおじいさんが大変なの!今すぐ○○病院に来て!」

僕「えっ!?わかりました!すぐ行きます!」

僕は運動が苦手だがそのときは世界一足が速くなった気がした。

暗い夜道を走っていた。僕はまるで黒豹のようだった。

病院についた。

僕「ハァハァ。僕の、僕のおじいちゃんはどこですか!?」

息が切れながらも僕は祖父の居場所を聞いた。

「加藤聖人さんですね?こちらです」

病室に着くと祖父の顔に白い布が被せてあった。

僕は悟った。祖父は死んでしまった。僕は僕を恨んだ。

あのとき僕が一緒に行っていれば。あのときもっと優しい言葉をかけていれば。僕は拳を握りしめた。自分の拳を握り潰すくらいに。現実から逃げ出したかった。

僕「今日はもう帰ります」

僕は震えた声でそう言った。

「あの、この手紙おそらく聖人さん宛だと思うんですが」

僕は看護師さんから手紙を受け取った。

僕は家に帰ってから手紙を開けて読んだ。


聖人へ

今は苦しいことや悲しいこと、辛いことがたくさんあるね。おじいちゃんが助けてやれなくてごめんな。抱きしめて上げられなくてごめんな。いつも余計なお世話をかけてごめんな。

覚えてるか?昔スーパーに家族で買い物にいったときに聖人がこういってくれたんだよ。

僕、今はこうしておじいちゃんに手を引かれて歩いてるけどいつか僕がおじいちゃんの手を引いて歩いてあげるからね。そう言ったんだよ。おじいちゃんそのときは涙が出るくらい嬉しかった。

そんなときがいつかくればいいね。本をたくさん買ってきたからそれを読んで今亡き家族の分も全力で人生をたのしみなさい。

お誕生日おめでとう。

聖人のおじいちゃんより。


その手紙は涙が垂れたあとがあった。手紙を読み終えた頃にはその涙のあとが大きくなり増えていた。

僕は祖父の手紙を机の上に置き、前に自殺を考えた時に用意した首吊りの紐を机の中から出した。

僕「おじいちゃん。今からそっちに行くからね」

グィッ

僕は死んだ。




ふと気がついた。

僕「ここはどこだ?あの世か?早くおじいちゃんや僕の家族を探さなきゃ」

僕は暗闇の中を歩き続けた。

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