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拾われた先は魔王城!  作者: チャツネ
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第3話

神殿はとんでもなく快適な場所だった。

ご飯もお風呂もふかふかベッドもある。

しかもお風呂は露天風呂で神殿の周りの綺麗な景色が一望出来る最高空間だ。

過保護を抉らせた精霊王達にわちゃわちゃお世話をされながらそろそろ一週間経つ。


「ビエントー、お昼寝の時間になったよ!」

『あら、もうそんな時間?今日はルスの番だったかしら?すぐに呼ぶわね』


一週間経つ内に少々変化があった。

一つはティアが勝手に精霊王に名前を付けた事。

ヴールが火

アイルが水

ビエントが風

スエロが土

ルスが光

フォンセが闇

本人達は大層気に入っていたので結果オーライである。

ウルに確認はしていないが何とかなるであろう。

二つ目はティアの生活について。

元々ティアはあまりよろしくない環境で育って来たので望む物は少ない。

しかしそれを良しとはされず、健康優良児顔負けの規則正しい生活を余儀無くされていた。


『遅れてすみません。お昼寝に行きましょうか』


何処からとも無く現れたルスに抱き上げられてベッドルームへ連れて行かれる。

ティアが来てから精霊王達は全員神殿に居るようになった。

今までは自由気ままに好きな所へ行っていたがそれも無い。

自分が皆の行動を制限してしまっているのではと不安になったが否定された。

自由に出来るからこそティアの側に居るのだと言う。

布団に寝かせられて目を閉じると直ぐに眠気が襲ってきた。


『おやすみなさい、良い夢を』


心地よいテノールボイスが聴こえて少しすると、ティアは眠りについた。








栄養状態の良い食事、適度な運動、質の良い睡眠。

規則正しく生活をして一ヶ月が経った。


(なんて居心地が良いのでしょう!!)


ティアは朝からお風呂に入りながら感動していた。

転生前と比べても圧倒的に良い生活を送っていた。

デミウルゴスは何かをやっているらしく一度も話していない。

お風呂から出て脱衣所でスエロが用意してくれた肌触りの良い白のワンピースを着る。

大きな鏡があり、視線をそちらに移す。

人間界に居た頃は一度も見た事が無かった自分の容姿。

髪は銀色で毛先にゆるくウェーブが掛かっている。

藤紫の瞳は大きく、光に当たりキラキラと輝いている。

陶器の様に白い肌に細い手足。

顔のパーツも配置も完璧で、人形を思わせる美しさがあった。


(これはウルの趣味か…?)


髪はよく視界に入って来ていたので知っていたが、顔は見た事が無かったので初めて見た時は困惑したのを覚えている。

慣れというのは恐ろしく、可愛いならいいやと思い始めていた。

風の魔法を使って髪を乾かしてから小さい足で庭に向かう。

神殿から外へ出ると知らない人が4人立っていた。

ティアも驚いたが向こうも驚いている。

ふと、1人が視界から消えて次の瞬間、首にヒヤッとした感覚があった。


「動くな。貴様何者だ。何故ここに居る」


低く唸る様な女性の声が聞こえる。

少し考えて首に剣が当てられている事に気が付く。

ティアは慌てる事も泣く事も無く、ただまた死ぬのかと思った。


「おい、何か言え」


黙ったままのティアに痺れを切らしたのか女性が告げる。

プツッと肌が切れる感覚がした時、白く細い指が剣を摘んだ。

フワッと浮遊感がして誰かに抱き上げられ、女性から距離を取る様に少し歩いた。

上を見るフォンセと目が合い、ニコッと微笑まれる。

女性の方を見るとニコニコしているが一切目が笑っていないルスが居た。

ティアの周りに他の精霊王も集まっており、4人に厳しい視線を向けている。

フォンセがティアの首を撫でるとピリピリとした痛みが消えた。


『ティア…遅くなってごめん…傷は…治した…痛くない…?』

「いたくないよぉ。ありがとお」


眉を下げるフォンセにティアはニッコリと微笑む。

安心した様子で頭を撫でられた。


『突然ティアに刃を向けるとはどう言うつもりなのでしょうか?』


ルスが低く告げると摘んでいた剣がボロボロと崩れる。

それを見た4人は小さく息を呑みその場に跪いた。


「せ、精霊王様…申し訳御座いません。この場所に相応しくない者が居たので…」


女性が震える声で言葉を発する。

その言葉で一気に空気が冷たくなる。


『この場所に相応しくない…ですってぇ?ティアがぁ?ウフフッ』


スエロの言葉が妙に冷たい。


『ティアがどんな存在なのか見極められないくせにそんな事言うんだ〜』

『混血ってそこまで無能なんだな』

『ティアに傷を付けた事後悔させてあげるわ』


空気がビリビリと震える。


(あれ?これやばいやつでは?)


尋常じゃない殺気にティアは危機感を覚える。


「まって!だめよ!まわりのきがきずついちゃう!」


出会い頭に殺しにかかって来た人に向ける情けは持ち合わせていない。

ただ、凛と生えている木や花が傷付くのは悲しい。

精霊王達は一瞬固まったが直ぐにティアを撫で回し柔らかく微笑んだ。


『ティアは優しいわねぇ。大好きよぉ』

『あれは邪魔なのでさっさと追い出しましょう』


ルスの言葉に4人はビクッと身を固まらせる。


「あのひとたちはだあれ?」

『魔王城の人たちだよ!』


突然頭に聴こえた精霊王達ではない声に驚き、キョロキョロと辺りを見渡す。

スルリとフォンセの腕から別の人の腕へ渡る。


「うる!!」


そこには一ヶ月ほど会わなかったデミウルゴスがいた。

ティアは嬉しくなり抱き着く。


『一ヶ月ぶりだね。ら行が上手に言える様になったね。流石はティアだ』


ウルもティアを抱き締める。


「うるのなまえちゃんといえるようになりたかったかられんしゅうしたの!」

『ちゃんと見てたよ。そういう理由があったのは知らなかったから嬉しいなぁ』


皆でほっこりしていると跪いている女性がその空気をブチ壊した。


「創造神様!まさかお会い出来るとは…是非とも城へいらしてください!おもてなしをさせて頂きます!」


キラキラと表情を輝かせてデミウルゴスを見る。


『ヤダよ。ティアの事傷つけたのに反省して無いの?ん?待てよ?………』


険しい顔でペッと吐き捨てるように告げたかと思うと考え込み始めた。

少しして考えが纏まったのか笑顔になった。


『いいよ、行こう。でも君達とは行かない。僕とティアと精霊王達で魔王の所に行く。あと君はもう二度とこの地に足を踏み入れる事は許されないから』


君、と女性を指差す。

女性は困惑した表情になる。


『今日持ってきた物も全部持って帰ってちょうだいねぇ。この女が触ったかも知れない物があるなんて気分が悪いわぁ』


チラリと少し離れて跪く三人の側にある大量に積まれた木箱に目をやった。


「な、なぜそこまでその子供に執着するのですか?ただの子供ではありませんか!」


キッとティアを睨む。

ティア自身も自分に何の魅力があるのか分からないので女性の言葉は最もだと思う。

しかしデミウルゴスはその言葉を否定した。


『ティアの魂の輝きが見えない低能に話したって意味は無いよ。この子は僕の愛し子だ。ティアを否定するのは僕を否定するのと同じだ。さっさと去れ』


デミウルゴスはティアが今まで見た事もない冷たい瞳で女性を睨みつけた。

女性は自分が創造神の怒りに触れた事に今更気が付き押し黙った。


『そこの青年よ。魔王に伝えろ。明日の朝、謁見の間に顕現する。魔王と影2人だけの入室を許可する。王子や大臣などは入れるな。まあ居ても追い出すだけだがな』

「っ、畏まりました」


威厳たっぷりの視線で跪いている男性を見て声を掛けた。

声を掛けられた男性は一瞬固まったが直ぐに返事をした。


『では行け』


デミウルゴスの一声で4人はそそくさと帰って行った。


『はあぁ…やだねぇ。あんなのが居るなんて信じられない。ティア、大丈夫だよ。ティアは僕の子だ。自信を持って?』


不安になっていた事がバレていたようだ。

優しく頭を撫でられて不安は何処かへ飛んで行った。


『明日は魔王城に行くから準備しておこう。皆もよろしくね』


精霊王達も頷く。

この日はデミウルゴスと一日を過ごし、穏やかなまま眠りについた。

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