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龍姫イリスの異界現代ぶらり旅  作者: 龍翠
第一話 異界:初めての人類交流
2/98

01

壁|w・)第一話、なのです。

地の文の丁寧語終了。

 イリスたちが住む世界は巨大な大陸一つがある世界だ。正確に言えば、巨大な大陸二つが隣接して並び、その間を小さな小島が繋いでいる。その小島には、この世界で最も高い山がそびえていた。

 その山こそドラゴンが唯一支配している山、果て無き山だ。


 その山の麓には、人族と魔族が共存している小さな集落がある。ドラゴンの庇護下にある集落で、ドラゴンを自分たちの上位者だと信仰している人々が集まっている。もっとも、ドラゴンを実際に目にしたことのある者はごく少数なのだが。


 ――というわけで、あれがその集落なんだって。山には入ってこないから、あまり気にしなくていいってお父さんが言ってた。

 ――へえ……。ところで、魔族ってなに?

 ――んー? 人類の一種だよ。人族、魔族、ほかにも獣族、森人族、いろいろいる、はず。

 ――へえ! 森人ってあれだよね、エルフだよね! 見てみたい!

 ――うん。まあ、いずれね。


 人族と魔族はこの大陸に住んでいるが、他の多くの種族は大陸の周辺にある大小様々な島で暮らしている。大陸に行くことはあるが、あまり関わり合いになろうとしていなかったはずだ。

 それもそのはずで、人族と魔族の仲は決して良好というわけではない。ずっと昔から、もう今となっては発端も分からなくなっているのにも関わらず、戦争を続けている。


 大陸のうち、東側が人間の領土であり、西側が魔族の領土だ。あの山の周辺でよく彼らはぶつかっていたのだが、それが百年近く続き、見かねたドラゴンが果て無き山を占領してからは睨み合いが続いている。ずっと昔の話なのだが、今も伝説としてそれが残っているのか、どちらも果て無き山には近づこうとはしない。唯一の例外に麓の村があるが、それでも山に立ち入らないことは同じだ。

 余談だが、山の南北の海は猛獣が船を沈めてしまうとのことで誰も船で渡ろうとはしない。この猛獣も海に住むドラゴンだったりするのだが。


 ――今はお互いに干渉しないってことになってるけど、それでも山がなかったらやっぱり戦争するんじゃないかな。

 ――そう、なんだ……。どこでもそういうのはあるんだね……。


 どこでも、ということはハルカの世界でもやはり戦争はあるのだろうか。イリスとしては、みんな仲良くすればいいのに、としか思わない。

 正直なところ、これから世界を見て回る時に巻き込まれなければそれでいい。


「あ、見えてきた」

 ――わあ、大きな山だね。


 そんな話をしていると、果て無き山が見えてきた。まだまだ距離があるにも関わらず、その姿がはっきりと分かる。山といっても、塔のような垂直の山だ。一応わずかに傾斜はあるが、それでも登ることは難しいだろう。

 横幅も広く、ちょっとした島ならすっぽり入ってしまうほどの大きさだ。山頂は雲を突き抜けており、どこまで伸びているか目視では分からない。

 下のわずかな部分は一般的な山の形をしている。この形の部分だけでもそれなりの高さがあるのだが。


 ――私たちはどこに行くの?

 ――中だよ。

 ――中?


 果て無き山は、実は中がちょっとしたダンジョンになっている。確かに外から登ることは難しいのだが、いくつかある洞穴から中に入り、洞窟を進めば山の中を登っていくことができる。もっとも、あまりに広大なため、人類では山頂までたどり着くことはできないだろう。


 ――その中だけど、ドラゴン専用の入り口があるんだよ。お父さんが作ったんだけどね。


 ほらあれ、とイリスは指を指す。そこには山のど真ん中に巨大な穴があった。龍王レジェディアが余裕を持って出入りできるほどの大きさだ。そこから中に入ると、さらに広い部屋に出た。巨大な空間で、レジェディアほどの巨躯であっても自由に動き回れるほどの広さだ。


 ――出入り口は東西南北に一つずつ。占領当初はそこから監視していたらしいよ。

 ――歴史的なものだね。ちょっと規格外だけど。


 イリスは部屋の真ん中に降り立つと、一息ついた。

 ここがイリスの拠点になる。しばらくは使い続けることになるだろう。とりあえず真っ暗なので、魔法で小さな光の玉を作ってそれを浮かばせておく。真昼のような明るさになり、洞窟内を照らし出した。

 広い空間。そして何もない。ドラゴンたちもここで暮らしていたわけではないので、当たり前ではある。父からは自由に使っていいとの許可をもらっているので、いずれ色々と用意したいところだ。


 ――この後はどうするの?


 ハルカの問いに、イリスは特訓、と短く答えた。


 ――変身魔法。人間に変身しないと、さすがに下には降りられないからね。

 ――ああ、確かにそうだね。でも、特訓が必要なの?

 ――油断して寝てる間に変身魔法がとけたら?

 ――うん。納得。とても楽しい大惨事になるね。


 二人でそれを想像して、笑いたくても笑えなかった。良好な関係を築くことはまずできなくなるだろう。せっかくなので人間とも仲良くなりたいので、さすがにそれは避けたいところだ。


 ――あともう一つ問題があってね……。

 ――うん。

 ――私、人間の姿ってはっきりと分からないんだよね。


 遠目から見ることはあっても、間近ではっきりと見たことはない。細部まで再現するのはなかなかに難しい。そう思っていたのだが、


 ――ああ、それだったら、私の姿を使えば?


 ハルカがそう言った。首を傾げるイリスに、ハルカが言う。


 ――魂の取り込みは止まってるけど、少し繋がっているのはそのままなんだよね?

 ――うん。

 ――だったら、私の記憶とか見れたりしない? 私の姿も分かるんじゃないかな。


 なるほど、と意識を集中させる。確かに、しっかりと記憶を探せば、ハルカの記憶がまじっているのが分かる。それを見ると、ハルカの姿もすぐに分かった。しっかりとその姿を思い浮かべ、魔法を組み立てる。イリスの全身を光が覆い、そしてその体をどんどんと小さくさせていった。

 やがて光が消えて現れたのは、小柄な少女だ。十代中頃に見える姿で、悪く言えば少し貧相な体つきだ。どこがとは言わないが。


「これっていわゆる、ひんにゅ……」

 ――イリス?

 ――な、なんでもない!


 ハルカの声からものすごい怒気を感じた。触れない方がいいと本能的に察して、イリスはこの話題は封印しようと心に誓った。


 ――少しぐらいあるもん……。


 小さく文句を言っているハルカに関わらないようにしつつ、イリスは髪の毛に触れる。髪は背中まで届く程度の長さで、こちらの色は白銀だ。そのことに、思わず首を傾げていた。黒色をイメージしていたはずなのだが。

 だが髪も黒ではハルカの姿そのままだ。さすがにハルカに失礼だと思ってしまうので、このままにしておくことにする。


 ――気にしなくていいのに。でもまあ、イリスはやっぱり白色が似合うね。

 ――そう?

 ――うん。かわいい。

 ――そ、そう? えへへ……。


 人の姿とはいえ、褒められて悪い気はしない。イリスはだらしなく相好を崩して、機嫌良く洞窟を歩く。体の調子を、動かし方を確かめるように。

 しばらく歩いてから、うんと頷きを一つ。


「寒い!」

 ――裸だしね。


 ハルカの姿のことばかり意識し過ぎていて、服のことをすっかり忘れていた。というよりも、ドラゴンに衣服を着るという発想がそもそも出てくるはずがない。衣服もハルカが着ていたものを使おうか、と思っていると、そのハルカから待ったがかかった。


 ――さすがに私の服はだめだと思う。異世界の服だし、デザインとか全然違うと思うよ。

 ――そうなの? じゃあどうしよう。

 ――こんなのは、どう?


 ハルカから衣服のイメージが流れ込んでくる。なるほどと頷きながら、魔力を集めてそのまま形成。そうして魔力で作った衣服は、白いローブだ。全身を覆うローブで、これなら中に何を着ていても見咎められないだろう。

 いそいそと外套を着込み、少しだけ暖かくなって一息つく。けれど、まだ少し寒い。


「あ、これいい」


 何かないかなとハルカの記憶を少し見てみると、寒い季節の防寒具というものがあるようだ。それらも異世界のものだが、これはいいかもしれない。


壁|w・)自分の姿にかわいいと言うハルカさん。

……これはあれです、白銀の髪がかわいいってことです。きっとそうに違いない。


次話は6時までに投稿予定、なのです。

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