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たな×かと  作者: 狐金百合
第一章
8/27

幼馴染×決断

感想お待ちしてます。

 どうしてこうなった。

 頭の中をその思いだけが埋める。


 一年もの間好きな人から遠ざかり、彼女を賭けて親友と争いを続けて、それにようやく決着をつけて一颯へと告白をした。

 それなのに一颯からの返答はあまりにも予想外な拒絶。

 顔に教科書を投げつけられたあと、絶交までされてしまった。

 教科書の角が当たった鼻がまだ痛い。

 この日のためだけに毎日頑張ってきたのに。

 スポーツだって勉強だって、出来のいい親友に勝つために、そして負けないために努力をし続けなければならなかったから。

 その結果が絶交。


 どうしてだ。


 アイツは『約束』の事を忘れちまったのか?

 わっかんねー。

 頭を抱えて机に突っ伏す


「京平、部活に行く?」


 帰り支度を終えた透流が俺の席の近くまで来て、声をかけてきた。


「あぁ~、どうすっかな~」


 ハッキリ言うとどっちでもいい。

 透流とは、もう争う必要がないから部活に行って頑張ろうって言うモチベーションが湧いてこない。

 かといってこのまま帰るって言うのもなんだか違う気がするし。


 一颯と仲直りしたい。

 もっと言えば付き合いたい。


 って言う気持ちが一番大きいのだが、その為にどうすればいいのかという考えも思い浮かばない。


「おい、田中透流に加藤京平」


 とりあえず帰り支度だけはしておこうと思ったら、不意に後ろから声をかけられる。

 振り返るとそこには天然の銀髪をウルフカットにしたクラスメイト、馬場要が立っていた。

 天然の銀髪。

 サボり魔の癖に学年主席。

 背丈とは反比例した態度のデカさ。

 などなど、何かと有名な人物だが俺と透流にとっちゃ少し気になる奴だ。

 勿論、恋敵としてだ。

 一颯がたぶんこの一年間で一番仲良くしている男子生徒。

 気にならないわけがない。

 そんなクラスメイトに声をかけられたわけだが、何の用だ?


「どうしたの馬場君、僕らに何か用かい?」


 問うたのは透流。

 しかしその問いに馬場はすぐには答えず、周囲にチラッと視線を走らせた。


「テメーらに話があるんだが……ここじゃ人目がある。場所変えようぜ、着いて来い」

「は? なんでお前に着いてかなきゃなんねーのよ? こっちにはお前と話す事なんてねーし」

「京平、口が過ぎるよ。でも要件ぐらい話してもらえないかな? のこのこついて行って痛い目にあわされるのも嫌だし」


 透流の言葉に同意するように頷く。

 コイツの『通り名』知ってて、話があるってホイホイついてくバカがどこにいるよ。


「『痛い目』ね……、ククッ女にそんなツラさせられてるような奴等いじめる気はねーから安心しろや」


 小ばかにした感じで笑いながら馬場が言う。


「あ゛ぁ゛?」

「……それって喧嘩売ってる?」


 ハッハー、流石の透流も少しキレたか?

 ちなみに俺は全開でキレてる。

 前から一颯の周りウロチョロしてて目障りだったんだ、このチビ。

 こっちはただでさえモヤモヤして鬱憤貯まってるんだ。

 よしぶっ飛ばそう。

 通り名が何だ知った事か。


 座ってたイスから勢いをつけて立ち上がる。



「まぁ、落ちつけよ」



 ことが出来なかった。

 腰を浮かせた瞬間、風のようにスルッと近くまで移動してきた馬場が俺の肩に乗せた手によって、イスへと押し戻されたからだ。

 行動の起点をつぶされ、力を込めることもできずにイスに戻るしかなかった。

 そんな俺の耳元で馬場が囁く。


「話ってのは仲遠についてだ、お前らにとっても損はないはずだからとりあえずついて来い」


 隣に立つ透流にも聞こえる程度の声量だったのか、透流が馬場を見おろしながら目を細める。

 なーんかいろいろと考えてるんだろう。

 頭でっかちは大変だよな。

 その点俺は簡単。


「マジか? んじゃ着いてくわ。でもウソだったらぶっ飛ばすからな」

「嘘じゃねーけど、そん時は好きにしろよ。ま、ぶっ飛ばせるもんならな」

「っけ、言ってろ。……ちょっと帰り支度するから待っててくれ」


 そうして俺達は馬場と話をすることとなった。




 ☆




 俺の名前は奥間修介。

 小城高校の3年生。

 クラスは4組。

 部活はサッカー部。

 不出来ながら部長をやらせてもらっている。

 面白いことが大好きで、日々何か起きないかと期待している俺だけど、今日は特大の面白いことが起こった。

 部活の後輩二人が、俺も知っている幼馴染の女の子に告白して振られたらしい。

 いや~、あの二人がいっつも競争してたのは知ってたけど、まさかそれが告白権を賭けてだったなんて思いもよらなかった。

 というか2人と仲遠さんが幼馴染だったなんてことも今日初めて知ったよ。


 それは昼休みに起こった事なんだけど、彼らと同じクラスの後輩がすぐにメールで教えてくれたから早い段階で知ることが出来た。

 でも仲遠さんが半泣きで教室出てったとか書いてあったから、焦って探したけどね。

 面白いことは好きだけど、女の子の涙は見たくない。

 実際に見つけてみたらカツアゲされた相手を、逆にからかう余裕があるくらい元気だったから安心。

 本当に泣いてたら後輩2人はお仕置きだった。

 まぁ、2人とも仲遠さんがぶっ飛ばしたらしいけど。


「ぶっ飛ばして絶交しました」


 とすごくいい笑顔で仲遠さん笑ってたな~。


 そんなわけで仲遠さんはそこまで傷ついてなかった。

 だから俺の今の関心は後輩二人に移ってる。

 うちのエースストライカー。

 小城高サッカー部の『風神雷神コンビ』。

 田中透流と加藤京平はこれからどうするのかな。

 サッカー部の部室で、部員全員が今日は練習もしないで彼らが来るのを待っている。


「アイツら遅いっすね」

「まぁまぁ、副部長。彼らも傷心なんだから遅刻くらいするだろうさ。休むなら必ずメールすることになってるんだし、ゆっくり待とうじゃないか」

「んなこと言っても部長、そろそろ20分すよ。俺練習したいんっすけど」


「ウッセーだったら1人でランニングしてろ!」

「恋愛ごとなんて興味はないってか!」

「彼女持ちはこれだから……!」

「オラ行け! とっとと行け!」

「愛しのエリちゃんが美術室から覗いてるんだろ!」

「投げキッスでもしてやれば? 全力で笑ってやるから!」


 サッカー部唯一の彼女持ち、2年生の風間翼が集中砲火を受ける。

 サッカー部って結構モテるイメージもたれがちだけど、実際はこんなもん。

 彼女持ちは憎いし、フラれた奴らはみんなのおもちゃだ。

 でも確かに、練習を蔑にしすぎるのはいけないな。


「よし、あと10分待ってこなかったら練習しよう。……だから風間に『エリちゃん大好き』って書かれたプラカード持たせて外に追い出そうとするな」

 暴走してきている部員たちを宥める。

 その時。


「すいません遅れました」

「右に同じ~」


 しっかりとした挨拶をして田中が扉を開け、その後からテキトーな挨拶をして加藤が続く。


「よぉ! 来たなフラれコンビ!」

「フラれ話聞かせてくれよ!」


「そうだそうだ!」と部員たちが騒ぎ立てる。勿論俺も騒ぐ。

 そんな俺達を冷ややかに見つめ、田中が懐から一枚の用紙を取り出して渡してきた。

 その紙に書かれていたのは『退部届』。

 きっちり名前も書いてある。

 「あ、俺も俺も~」と田中の脇から加藤も同じ用紙を渡してくる。

 その用紙を受け取ったまま固まってしまう。

 そこで他の部員も異変に気付き、俺の手元の紙を覗き込みサッと顔が青ざめた。


「今日限りで、サッカー部をやめさせてください」



「「「「「からかって悪かった! やめないでくれ!」」」」」



 俺達は一斉に2人へ頭を下げた。

11/28 奥間修助→奥間修介に修正

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