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たな×かと  作者: 狐金百合
第一章
7/27

部活×入部希望

今日はお休みだったので早めに投稿です。

 放課後になってしばらく経ち、人気のなくなった教室から荷物を回収した後部室へと向かった。


「こんにちわ~」


 部室のドアを開けながら挨拶をした。

 室内にはパイプ机が2個横に並べられて大きな机として中央に置かれ、それの周囲にパイプ椅子が置かれている。


「あらあら、イケメン二人を虜にしたお姫様の登場ね」


 部室の奥からからかい気味の返答が帰ってくる。

 うぇ、もう知ってるのか。

 厄介だな~、絶対に根掘り葉掘り訊かれる。


 机の周囲に並べられた椅子、その中でも俗にいう『お誕生日席』と呼ばれる一番奥に配置された椅子。それに座った声の主はこの部屋の長にして、我らが写真部の部長である九条院華理奈くじょういん・かりな先輩だ。

 誰もが振り返るほどの美貌を持ち、その髪はウェーブがかかって波打っている。

 背は高くもなく、かといって低くもないのだが、制服の上からでもわかるほどのボン キュッ ボンと自己主張の激しいダイナマイトボディーを持った美人さんだ。


 悔しい! 妬ましい! 

 私なんかツル ペタ ストンの起伏のない三拍子なのに!

 あの胸の脂肪の塊の一割でもあれば……!


「そんなに熱く見られても一颯ちゃんのは大きくならないわよ?」


 部長は恥じらい、両手で胸を隠す……フリをして寄せてあげて強調して見せつけてくる。

 くそっ! くそっ!


「大きなお世話です!」


 ドンっとパイプ机の上に荷物を置き、この一年の間に定着した自分のパイプ椅子に座る。

 そこは机の左側に配置された3つの椅子、その真ん中。

 両隣は卒業した先輩達のものなので今は空席。

 まぁ、埋まってる席の方が少ないんだけどね。

 3/8しか埋まってないし。


「そうですよ、胸の大きさが何ですか! そんなもの!」


 数少ない埋まってる私の真正面の席に座った恵子が、座る私と入れ違いに立ち上がり気炎をあげる。

 恵子も大和撫子的な美しさだけど、胸は慎ましやかだもんね。

 わかるよその気持ち。

 でも幼児体型の私からすれば、モデル体型のアンタも十分羨ましいけどね。


「大丈夫よ二人とも、小さいのが好きな人だっているから。ほら現に今日も幼児体型の女の子が昼休みに告白されてたらしいし」


 げ、話が戻ってきた。

 だがそれよりも!


「幼児体型って言うな!」


 身長が低いのは気にしてないけど、体型にはコンプレックスあるんだぞ!


「はいはい、幼児体型じゃないね。ごめんごめん。それじゃ気を取り直してドンドン吐いちゃおうか」


 おざなりに謝ると、部長はすごくいい笑顔でそんなことを言ってきた。

 その眼は獲物を見つけた爬虫類のような目をして私を見つめてくる。

 確かに部長の目には私は美味しい獲物に映ってるんだろうな。

 二人の男子に取り合われる女子、しかも幼馴染で三角関係ってだけでもあれなのに、相手が有名な透流と京平ってのも拍車をかけて、極上のネタ(獲物)なんだろう。




 部長はゴシップが大好きだ。

 学校中のあらゆるゴシップを集めまくっている。

 その為に写真部に入ってきたとも言っているし、筋金入りの野次馬だ。

 噂では学校内にバレないように盗聴器と盗撮カメラを仕掛けているとかなんとか、さすがに嘘だと思うけど。

 だが噂が噂を呼び、今では小城四天王の一人『クイーン』なんて呼ばれちゃってる。

 曰く『逆らうと自分の秘密にしていた情報が衆目の目に最もえげつない方法で晒される』と。

 一体どんな生活していればこんな噂が立つのやら。

 火の無い所に煙は立たないって言うし、裏でいろいろやってたり。

 ……否定できない所がこの部長の怖い所だ。

 底が知れないっていうか、掴みどころがないんだよね。

 それでも私は部長に良くしてもらってるし、何度も助けてもらってるから、私は尊敬すべき人だと思ってる。


 思ってるけども……。


「で、勝負の瞬間は見てなかったんだね?」

「えぇ、恵子と二人でお弁当食べてたんで」

「そっか、それは残念だな~。……やっぱり盗聴器仕掛けとくべきだったかな?」

「盗聴器!?」

「あぁ失言失言、忘れて。んじゃ次の質問だけど加藤君は一颯ちゃんのフルネームを呼んで告白したんだっけ?」

「……そですよ、てか細かすぎです! いつまでやってるんですか」


 昼休みの出来事を部長に全部話して聞かせたが、話し終わった後で細かい部分の質問攻めが始まった。

 部室に来てからもう20分は経っただろうか、うんざりする。

 途中で恵子が淹れてくれたインスタントコーヒーが冷たくなってしまった。


「そんなの私が納得するまでよ! こんな面白い話は細部に至るまで把握しておかなくちゃ!」


 興奮した様子で部長が詰め寄ってくる。


「二人はいつから一颯ちゃんのこと好きだったの!? 一体いつの時点でお互いの思いに気付いたの!? 勝負を始めようって言い出したのはどっちから!? 知りたい! 知りたい! 知りたい! 知りたい! あ゛ー! 我慢できない! 一颯ちゃんに訊いてたって埒が明かないわ! ちょっと今からサッカー部に行って本人たちから訊いてくる!」

「待ってください!」


 血走った目で走り出そうとした部長を必死で抑える。

 興奮すると暴走するのがこの先輩の悪い所なんだよな。

 こんな状態の先輩を行かせたら絶対に面倒なことにしかならないのは明白だ。

 その時、


 ピーピコピーピコピー


 と軽快な音が先輩の制服から流れ出てきた。


「ほら、先輩ケータイケータイ! 鳴ってるから!」

「こんな時にいったい誰よ!」


 と怒りつつポケットからスマートフォンを取り出す先輩。

 が、着信画面を見た瞬間に「おっ?」という驚きの感情を見せた。


「もしもし、君から電話が来るなんて珍しいわね。どうかした?」


 そして部室の隅に行き通話を始めてしまった。


「誰からだろう?」

「……さぁ?」


 先輩が大人しくなる相手なんて一体誰だろう。

 ともかく部長が暴走しなかったのは良かった。

 

 そうして一息ついてたら今度は、


 コンコン


 とドアをたたく音がした。

 珍しい。

 うちの部活に用がある人なんて皆無だし、勧誘期間もまだ始まってないから新入生が来るわけもない。

 となると生徒会からの連絡か、もしくは先生が何か用事あって訪ねてきたのかな?

 そんなことを考えて、


「どうぞ~」


 とドアの向こうに声を投げた。


「失礼します」


 そう言い、ドアを開けて入ってきたのは二人組。

 だいぶ見覚えのある二人組だ。

 中肉中背に眼鏡をかけた男子と長身短髪の男子の二人組。

 少し鼻が赤いそいつらは部屋に入るなりそろって言い放った。




「「こんにちわ! 入部しに来ました!」」




 そして『田中透流』と『加藤京平』と書かれた入部用紙を差し出してきた。

11/28 タイトルを部活×新入部員→部活×入部希望に修正

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