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たな×かと  作者: 狐金百合
第一章
12/27

校外撮影会×帰り道

一日空いてしまいましたが投稿です。

すいませんでした。

 部活動の大まかな説明も終わり、その日は解散となった。

 荷物を持ち部室を出て、恵子とともに校門へと向かう。


「しかし、まさかあの2人が入ってくるとは思わなかったね」

「本当だよ! 何考えてるんだってんだ!」

「何考えてるかは明白だと思うけど?」

「……」

「ただ仲直りがしたいだけなんじゃない?」

「無理、許す気ないもん」

「意地はりすぎでしょ。 健気じゃん、ほら」


 唐突にサッと振り返る恵子。

 その視線をよけ、バッと隠れる2つの人影。


「一緒に帰りたいのかもよ?」

「知らないっての」


 昨日まで1人で帰ってたんだ。

 いきなり一緒に帰るとか言われても落ち着かない。

 何を話していいかわからないし。

 いや、別に話したい訳じゃないけどね!


「それじゃ、また明日」

「うん、またね」


 校門の前で恵子と別れる。

 恵子はバス通学、私は徒歩通学なのでいつもここでお別れだ。


 そうして1人になると同時、私は走り出す。


 後ろから「あ! 一颯!」とかって声が聞こえてきたが無視だ無視。




 ☆




「ただいま」


 玄関をくぐりながら家の中に声をかける。

「おかえり~」という母さんの声をききながら、自室へと向かう。

 ドアを開けて部屋にはいると同時に、荷物を放り出してベッドへと身を投げだした。

 制服がシワになるが、部屋着に着替える気力すらない。

 だらっとベッドにうつ伏せになると、今日の出来事が思い出されてきた。


 昼休みの告白騒ぎ。

 そして友達の逃走。

 さらに放課後には彼等が入部希望に来て、あの『キング』が暴走した。


 だが、それよりも。

 私の心に深く残るのは……。


『仲遠一颯! お前が好きだ! 付き合ってくれ!』


 片想いの相手の告白が、甦る。

 目の前で行われた告白劇。

 好きな人が、友達とは言え他の人へと愛を叫ぶのを眺めているしかなかった自分。

 あの後、一颯が逃げてくれてよかった。

 もし戻ってこられたら、普段通りに話したり、笑ったりできなかったと思うから。

 頑張って午後の授業の間に立て直し、放課後はいつも通りに振る舞ったつもりだけど大丈夫だったか。

 ちゃんと普段通りに見えていただろうか。

 自信は、ない。


 サッカー部の風神雷神。

 小城高名物の決闘コンビ。

 そして、友達の幼馴染み。


 そんな彼らへの第一印象は騒がしい人。


 一颯から話を聞いた後は最低な人。


 いきなり無視するなんて何を考えているのかと憤慨した。

 あぁ、そうだ。

 私は最初あの人が大嫌いだった。

 大嫌いになり、それまでは何とも思っていなかったバカ騒ぎがひどく鬱陶しくなった。

 それなのに、嫌でも目に入るその騒ぎを無視することもできなかった。

 そうした日々を過ごすうちに、いつからか。

 本当に自覚しないうちに。


 私は加藤京平くんを好きになっていた。




 ☆




「校外撮影会をしましょう!」


 2人が入部してからはじめて迎える金曜日。

 5人が揃った部室で、部長が唐突にそんなことを言い出した。


「校外撮影会ですか?」

「えぇ、この数日は天気もいいですし。裏山などどうでしょう?」

「確かに、加藤君と田中君も校内での撮影はやりましたもんね。ここら辺で外に出るのもいいかもしれません」


 部長の提案に恵子が賛同する。


「決まりですね! では皆さん、明日のお昼に裏山の入り口集合で」

「はい。ですが校外撮影会って、どんなことするんですか?」


 透流が部長に問いかける。


「そんな難しく考えなくても大丈夫ですよ。ただ野外での撮影を学ぶだけですから。校内だと室内光ばかりだったので、2人には自然光での撮影に慣れてもらうことが一番の目的ですね」

「へ~、光の具合とかもあるのか」

「当たり前じゃん。この数日何してたのよアンタ」

「いや、んなこと言ってもまだ現像もしてないんだぜ?」

「そうね、撮った写真を見てみないとわからないことも多いから、流石に酷よ」

「ほらほら! 黒須さんも言ってるじゃん!」

「くっ! 恵子やけにコイツの肩持ってない?」

「……一颯が理不尽なこと言ってるだけでしょうが」


 むぅ、確かにイチャモンつけただけだしな。

 腹いせにからかった恵子も、いつも通りに呆れたような澄まし顔してるし。


「それじゃ特別に用意するものもないんですね?」

「そうね、今日のうちにフィルムは多目に持って帰って、それを持ってきてくれればそれでいいわ」


 私たちのことは無視して、透流と部長が明日の準備について話し合っていた。




 ☆




「あぁ、今日も逃げられた!」

「あんまり追いかけても逆効果かもね」


 今日も一颯に逃げられた京平が毒づく。

 いやまぁ、逃げられたのは僕も一緒だけどね。


 そうしていつもの様に京平と2人で歩く帰り道。

 他愛もないことを話しながら進んでたら、ポケットにいれてたスマホが振動した。

 取り出して画面を見る。

 画面の表示が、1通のメールの到着を示していた。

 タッチパネルを操作し、それを開くと簡潔に一文。


『明日だ』


 ただそれだけなのだが、意味はわかる。

 差出人が『彼』なのだから、あの件についてでしかありえない。


「どうした~?」


 言いつつ画面を覗き込む隣の幼馴染み。


「『明日』……ね」


 京平も文面を見て察したのか目を細める。


「明日となると校外撮影会の事だろうね。となると九条院部長も協力してくれるってことだと思う」

「ま、『クイーン』だしな。そりゃ一枚噛んでるだろうな」

「ははっ、そうだね」

「……でも明日か」

「……うん」

「また、昔みたいにもどれっかな?」

「わかんないさ」

「……」

「でも、僕達は謝らなくちゃならない。一颯が許してくれなかったとしても、彼女を傷つけてしまったから。そして……思い出してもらう。僕達が1年前のあの日に何を『約束』したのかを」

「けっ、カッコつけてんじゃねぇよ。俺に負けたくせに」

「……あの時は言わなかったけど、京平ズルしてたよね?」

「な、何のことだ?」

「パンは一つずつ食べるってルールだったろ? 二つ同時に食べてたじゃないか」

「さぁな~、覚えてねえよ~」


 冷や汗をかきながら、そっぽ向いて口笛を吹く幼馴染。

 でもま、それのおかげで一颯との『こじれ』に気付けたし、怪我の功名かな。

 でも


「次は無いし、絶対に負けないよ」

「……次だって俺が勝つっての」


 しばし睨み合う。

 が、どちらともなく視線を外して呟く。


「どっちにしても明日だよ」

「だな」

「明日、必ず一颯と仲直りする」

「おう!」

「勝負は」

「それからだ」


 どちらからともなく笑い、僕達は拳をコツンとぶつけ合った。

多分次が一章の最終話になると思います。

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