プロローグ
初投稿です、至らない点は見逃してください。
「私」こと仲遠一颯には幼馴染が二人いる。
田中透流と加藤京平。
家が近所(というか我が家の右隣に田中家、左隣に加藤家の形で並んで建っている)ので、小さい頃からよく遊んでいた。
最初に会ったのはいつ頃だっただろうか、記憶にない。
ただ小学校に入る前にはもう二人と一緒だった気がする。
私達はいつでも一緒だった。
登校も下校も、授業中も休み時間も。
長期休暇の間だって誰かのうちに集まって遊び、時には外に繰り出した。
こう言ってはなんだが私はあんまり女の子らしくなかったので男の子二人と遊ぶのは全然苦じゃなかった。
むしろ私と京平の、元気のあり余った悪ガキ二人に付き合わされた透流の方が苦労していたと思う。
私と京平は外で遊ぶのが大好きだったから日に焼けた肌にいっつも生傷作っていたけど、透流はあんまり日に焼けていなかったし傷もなかったように思う。
なぜなら透流は体力的に三人の中で一番弱く体も小さかったから。
無茶する私たち二人を少し遠くから眺めながら「やめときなって~」とかいつも言っていた。そんな透流を私と京平は「弱虫毛虫~!」「根性なし~!」といつもからかっていた。
でもまぁ、そんな透流がいてくれなかったら私達二人は無事今まで生きてこれなかったと思うね。
私達が無茶してどうしようもなくなった時に助けてくれるのはいっつも透流だったから。
あれはいつの事だったかな。
確か小3の夏休みの事だったと思うけど。
私達3人は近所の裏山に探検しに行ったんだ。
そして遭難した。
お昼ぐらいに山に入ったのに自分たちがどこにいるかもわからなくなって、ぐるぐる歩き回りいつの間にかあたりは真っ暗になっていた。
心細くなって、怖くなって、私は泣いた。
「泣くなよ、大丈夫だって」とか言ってた京平の目だって潤んでいた。
でもそんな中透流1人だけは「暗くなったおかげで街の明かりが見えるようになったね、これで帰れる」と笑顔で私達を引っ張ってくれた。
いざって時は頼りになる奴、それが田中透流って奴だ。
ん? それじゃもう一人の加藤京平って奴はどんな奴かって?
こいつを表す言葉は一言で十分。
バカ。
これに尽きるね。
いや、まぁ、すごくいいやつなんだよ。
困ってる人を見かけたら助けずにはいられないし。
ただ、なんて言うかな……考えなし?
後の事なんて考えずその場の勢いでやっちゃうんだよね。
それを証明する逸話がある。
小学校4~5年生の頃、私が同じクラスの女子生徒に絡まれたことが発端だった。
「仲遠さんって男子みたいだよね~、全然可愛くな~い」
そういったのは当時クラスの女王様として降臨していた石田だったか石野だったか言う女の子。
周りの子からは「愛ちゃん」とか呼ばれてたと思う。
まぁ、その愛ちゃん(仮)はなぜか私の事を嫌ってたんだ。
だからちょくちょく見えないところで嫌味を言われてたんだけど、私は徹底的に無視した。
だっていちいち相手にするのめんどくさいし。
そんな私に腹を立てたのか、その日はクラスメイトも結構いる昼休みの教室で嫌味を言われた。
その時の私が思ったことは「またか」というウンザリしたもので、いつも通り無視しようと思ったんだけど、その教室には運悪く“バカ”がいた。
京平は教室をさっと抜け出し、戻ってきたときには手にバケツを持っていた。
透流がそんな京平に気付き止めようとしたが間に合わず、バケツの中に入ってた水を愛ちゃん(仮)の頭上へと被せた。
そして、全身ずぶぬれになった愛ちゃんを見下ろしながら一言。
「お前カッパみたいだな、可愛くね~よ」
一気に教室が大騒ぎになった。
ずぶぬれ愛ちゃん(仮)は呆然としてるし、その取り巻きは喚きながらハンカチなどで彼女を拭き、関係ない生徒は唖然として遠くから眺めている。
透流は額に手を当て悩んでいたが、口元だけは笑ってた。
そんな中私と京平だけは肩を組んで大笑いした。
騒ぎを聞きつけた先生が爆笑してた私と京平を引っ張っていき、私と京平のお母さんが呼ばれた。
愛ちゃん(仮)の暴言が発端とはいえ、やったことが過激すぎたため私たちは厳しいお叱りをうけ、実行犯の京平は反省文と罰掃除一週間をくらった。
勿論、私も罰掃除手伝いましたよ。
だってバカなりに私のためにやってくれたことの罰なわけだし。
透流も「止められなかった責任が……」とか言いながら手伝ってくれた。
そんな日々は中学校に入っても変わらず、私たちはいつも一緒だった。
ただ私の身長が小学校五年生の時点で止まったにもかかわらず、二人はにょきにょきと成長して身長格差は生まれてしまったけど……。
私達はいっぱい喧嘩もしたし、それと同じ数だけ仲直りもした。
中学に入って勉強が何だ、部活が何だと忙しくなったけれども私たちは離れることなく一緒だった。
思春期特有の男女間の不和だって私達には関係なかった。
私達はいつだって一緒だったし、いつまでだって一緒だと信じてた。
まぁ、そんな感じで私たちは面白おかしく仲良く日々を過ごしていた。
高校に入学するまでは。