鞭……そう、鞭。
初戦闘…？っぽい話です。
どうしよう…。
さっきから何回も言ってるけど、一向にいい案が浮かばない。パーティに入れてもらおうと思ったら、「は？LUCKなんかに極振りしてるバカと組む？寝ぼけてんのか」と言われトラウマになった。好きでやったんじゃないのに…。気を取り直して町で武器を見ても、100Gで買えるのなんて何もない。一番安いのでさえ1500Gだ。生産職になっちゃおうとも思ったけど、それには《鍛冶》とか《調合》とかのスキルが必要なのを思い出して断念。
どうしよう…。絶望感しか感じない……。
仕方ないので、モブのレベルが低い草原で、鞭を使ってみることにする。
～草原～
草原にいるのは、『ウィードラビット』。主に草を食べてるウサギだ。攻撃されると頭突きをしてくるが、そんなに大きいわけでもなく、たいして速くもないので簡単に避けられる。ドロップで肉が出るという美味しいヤツだ。一番弱いモブだと思う。
「とりあえず叩いてみよう、せいっ！って、あれ？」
鞭を振ってみたが、当たらなかった。何回か試してみたが、掠りもしない。
「なんで…？ただ草食べてるだけなのにあたんない……」
振り方が悪いのかな？ただ腕を振るんじゃなくて、こう、手首をくいって
ピシッ
お、いい音。こんな感じかな。よし、今度こそ！僕は改めてウィードラビットに向き直る。
「そりゃっ！やった！……？」
あれ…？確かにあたったよね？巻き付いてるから攻撃になってんだよね？じゃあなんで草食べ続けてんの？
「まさかっ！ステータスっ」
僕は嫌な予感がして、慌ててステータス画面を開く。そこには
Name:ナタ(Female)【LV1】
Race:人間
【ステータス】
HP：100
ATK：0(-10)
DEF：10
MP：10
SP：10
AGI：10
DEX：5
LUCK：100
【装備】
『麻の胴着』『革のズボン』『革のベルト』『丈夫な靴』『壊れた鞭（ATK-10)』
【スキル】
《モノマネLV1》《魅了LV1》《調教LV1》
【所持金】100G
「ATK-10って、僕の攻撃力0じゃん！！」
驚愕の事実。攻撃力0！
なんて物くれてんだよ運営！！これじゃダメージを与えられないよ！
そんな僕をしり目に、ウィードラビットは草を食べ続けている。鞭が巻き付いているのに食べ続けている。ダメージがないからなんだろうけど、こんな雑魚モブにこんな態度とられるとムカつく。腹立ち紛れに蹴ってやったよ。
「キュイッ！？」
「ん？なんでダメージ…ってああ！」
そういえば普通に殴ったり蹴ったりしても攻撃になるんだっけ。スキルがないとダメージが少なすぎるから、前は使ったことないけどね。でもこれで攻撃できるっていうのはわかった！
ウサギが突進してきた。
「キュッ！」
「ていっ！っった！？」
痛い！正面から殴ったら、僕にもダメージがあった。DEFが足りないのか、ATKが足りないのかわかんないけど、今のとこ僕のステータスはウサギと同レベルっぽい。
………悲しい。
気を取り直して、ウサギに向き合う。鞭なんて使えるか！殴った方が早い！
「ということで近接格闘だ！！」
「キュイッ！！」
ウサギも答えるように大きく鳴く。鞭をしまって軽く構える。まあ我流だけどね！
～十分後～
「やっと終わった……」
ウサギ一匹に十分かかるって、どんだけ僕のステータスは貧弱なんだ…。
ポーン『スキル《格闘LV1》を習得しました』
「これは喜ぶところなのかな…？なんか納得いかない…」
武器が使えなさすぎるのが原因だと思う。じゃなかったらウィードラビットに十分もかかんないよ。 ちなみに、今僕の前には、一つのドロップアイテムがある。肉じゃないですね、確認しよう。
【ラビットたちからの招待券】
詳細：おめでとうございます！幸運なあなたへ、ウサギたちから贈り物があります。ウィードラビットの巣の中に入って、ウサギたちの話を聞いてあげてください。上手くいけばいい物が貰えますよ♪
このクエストを受けますか？
YES/NO
※受けなかった場合、この招待券は破棄されます。
「何コレ…？」
以前ウィードラビットを倒した時には、こんなドロップはなかった。気になるのは、“幸運なあなたへ”という一文。LUCKがバカみたいに高いから出てきたのかな？
とりあえず面白そうなのでYESを選択。何がもらえるのかな？ちょっと楽しみ。
『これから、【レアクエスト】『ラビットたちの頼みごと』を開始いたします。プレイヤーをウィードラビットの巣に転送します』
「いきなり！？」
転送されました。
主人公は幸運なのです。
