銀鳳騎士団配備機体
■銀鳳騎士団配備機体
●ツェンドルグ
主搭乗者:アーキッド・オルター & アデルトルート・オルター
装備:ランス
ハルバード
牽引索
可動式追加装甲
荷車
人馬騎士とも呼ばれる、下半身が馬の形をした異形の幻晶騎士。
この世界にケンタウロスは実在しないため、御伽噺に出てくる架空の生物を具現化したという恐るべき出自を持つ。製作に当った鍛冶師に、残らず頭を抱えさせた問題児。
その形が示すとおり、様々な性質が騎馬兵に似ている。すなわち高速の移動性能と、高い突撃能力である。立ち止まっての格闘戦よりも、移動を併用した戦法が重視されている。
幻晶騎士の大きさの馬体という、規格外に巨大な構造を維持するために魔力転換炉を2基搭載した超高額機体。
その上で機体重量のあまりの増大に装甲は薄くならざるを得なかった。ただし突撃性能を下げないため正面装甲のみ厚めに作られている。
上半身は他の機体にに比べて細身だが、これは操縦席や炉を内蔵していないためでありむしろ出力や堅牢性に長けている。
装備は場合によって様々だが、主に長柄の武器を使用。斧槍や騎槍をよく利用する。
その他に縦に細長い独特の形状をした盾を装備している。これは普通では届かない足元付近や後方の防御に用いると共に、先端が尖っており簡易の突撃槍としても使用可能なものである。
臀部には4本の牽引索を搭載。ワイヤーアンカーと同様の機構を持つこの装備は、荷物を牽く際に利用されるほか後方への攻撃手段としても利用される。
荷車とよばれる専用の台車を装着することで幻晶騎士を3機まで輸送することが可能。ただし荷車部分もツェンドルグからの魔力供給により強化しているため負担が大きく、輸送中の戦闘行動や全力疾走は緊急時のみとされ普段は使用禁止となる。
尚、試作1号機のみキッドとアディの双子による二人乗りとして建造された。
本機の運用データより制御が完成されたため、後に量産される機体は一人乗りになっている。
●アルディラッドカンバー
主搭乗者:エドガー・C・ブランシュ
装備:
銀鳳騎士団第1中隊“白き盾”中隊長であるエドガー・C・ブランシュ専用機。
ベースとなった機体はフレメヴィーラ王国の最新鋭量産機である“カルディトーレ”。それに以前、彼の乗機であった“アールカンバー”と似た外装を被せたものである。
アールカンバーに従ったため外見的にはやや地味だが、エドガー曰く「落ち着く」感じに仕上がっている。
エドガーが幻晶騎士に対して望むことは「とにかく思い通りに動く」ことであった。元々カルディトーレという機体は操縦性に優れており、彼の要求を十分に満たすものである。そのため外装を除いて調整は最低限とされ、見た目以外はほぼ同一の機体といって差し支えない。
装備も基本に忠実であり、予備を含む剣を2本と左腕に盾を装備している。
それ以外に、エドガーがテストから調整を行ってきた新兵器である可動式追加装甲を標準装備しており、干渉を避けるために盾は小型化され腕部の追加装甲、または打突兵装としての運用に特化したものになっている。
また、アルディラッドカンバーの可動式追加装甲は特別仕様となっており、最外部の装甲の裏側に魔導兵装を搭載した攻撃兼用装備となっている。魔導兵装の種類は主に爆炎系である。
上記のように装備はやや防御重視の構成ながら攻守のバランスがよく、素性の良さも合わさって非常にまとまった機体となっている。
幾度かの厳しい戦いを経て元から備わった実力をさらに磨き上げたエドガーと共に、本機はフレメヴィーラ王国最強の一角として伝説に加わることになる。
●グゥエラリンデ
主搭乗者:ディートリヒ・クーニッツ
装備:
銀鳳騎士団第2中隊“紅き剣”中隊長であるディートリヒ・クーニッツ専用機。
ベースとなった機体はフレメヴィーラ王国の最新鋭量産機である“カラングゥール”。元々カラングゥール自体が以前の彼の乗機であった“グゥエール”のコンセプトを受け継いでいるため、本機は純粋にグゥエールの後継機といえる。
ただしアルディラッドカンバーが最低限の変更に留まったのに対し、グゥエラリンデは専用機としてディートリヒに合わせてかなり手が加えられている。
グゥエールから継いだ紅の装甲はそのままだが、外見的にもより鋭く攻撃的なものとなっている。
装備はグゥエールの最終型からそのまま受け継いでおり、腰に挿した4本の剣、背面武装“風の刃”、両腕の篭手に内蔵されているライトニング・フレイルとなる。
またその他に特筆すべき点として、本機にはマギジェットスラスタが搭載されていることが上げられる。機器が搭載されているのは両肩部後面、及び腰左右と後部装甲部。
ただし、様々な理由から本機に搭載されているのは出力・機能が限定されており、前進における加速にしか使えない。
マギジェットスラスタはその驚異的な加速性能から一般機への搭載が検討されていたものの、あまりにも劣悪な燃費、制御の複雑さ、さらには騎操士自身への負担の大きさなどから結局は見送られることになった。
しかしそこで機能を限定することでの搭載が再検討され、そのテストベッドとして相性のいいグゥエラリンデに白羽の矢が立ったのである。
ごく短距離の加速にとどまっているもののディートリヒはこれを使いこなして見せ、また切り札として大きな効果を上げている。
結果として一般機よりも多機能化した本機は癖の強い機体となり、高い性能を持つ反面乗り手を選ぶ代物になっている。
アルディラッドカンバーと並び立つ、国内最強の一角を占めながら対照的ともいえる素性と構成をもっているあたり、中々興味深いところであるといえよう。
●イカルガ
主搭乗者:エルネスティ・エチェバルリア
装備:銃装剣、斧槍
銀鳳騎士団団長エルネスティ・エチェバルリア専用機であり同騎士団の旗機。
前世の記憶を保有する“元日本人”であるエルネスティがその出自に因んで設計したため、この世界で唯一“鎧武者”の姿を持つ機体となった。
あまりにも圧倒的な戦闘能力と極悪な外見から“鬼神”の異名で呼ばれる。
ベースとなった機体こそカルディトーレだが、もはや大きさの定規としての役割程度しか果たしておらず、全身くまなく再設計されている。
大きさは一般の機体とそう大差はないが、腹部に通常の魔力転換炉を、追加で背部に大型炉“皇乃心臓”を搭載した複数動力機体である。
増大した重量、劣悪な重心バランスを制御するために機体の強度を高める強化魔法の出力を大幅に上げており、形を維持して存在するだけで多量の魔力を消費し続けている。
そのため通常時は腹部の炉からの魔力供給により動くが、それだけだと歩くのが精々といった状態である。
戦闘には主動力である皇之心臓を動かす必要があるが、それが出来るのはエルネスティただ一人であった。
師団級魔獣・陸皇亀の心臓部を再生した大型炉・皇之心臓は極めて高い出力を誇っており、本機に搭載された数多の機能を支えることができる。
全身の装甲が蓄魔力式装甲であり、かつ各部がマギジェットスラスタで構成されている。
全方位に対応したスラスタにより異常そのものの機動性を持つが、すでに機械的な制御が追いつかなくなっており、エルネスティという生きた制御部が乗ることでしか操れない。
地上最強の戦闘能力を持つ、史上最高の欠陥機である。
専用武装である銃装剣は、銃床を模した持ち手がついた肉厚の大剣のような外見をしている。
剣の内部には紋章術式を刻んだ銀板が内蔵されており、剣としての用法のほか魔導兵装としても使用することができる。
持ち手のところにあるレバーにより機能を切り替える。
構造的に脆く格闘武器には向かないはずの魔導兵装としての機能を盛り込むため、強力な強化魔法の術式も内蔵されている。それを発動させることにより、無理やりに剣としての用法に適応させている。
そのため格闘・法撃どちらにおいても魔力を消費する極めて燃費の悪い武装になってしまった。イカルガのような大出力機でなければ、まともに扱うことすらできないだろう。
●金獅子
主搭乗者:エムリス・イェイエル・フレメヴィーラ
装備:大剣
魔導兵装“獣王轟咆”
東方様式にのっとったフレメヴィーラ王国の量産機“カルディトーレ”をベースとして改修が施されたカスタム機。
使用者の要望を受け高い出力を持っており、また装甲も厚めのものとなっている。
“獅子のごとく”というコンセプトが全身の意匠に反映されており、各所に金色のパーツが使われていることもあって大変に派手な機体である。
近接での格闘性能が大変に高いが、反面遠距離戦闘は苦手。スタミナも多いとは言えず扱いの難しい機体である。
それは指揮官機として設計されたため、遠距離からの攻撃に耐え、また戦うときには一気にカタをつける思想の下開発されているからである。
兄弟機として外見以外は同一の機体である“銀虎”が存在する。
魔導兵装“獣王轟咆”
背面武装と肩部装甲内部に内蔵された特殊な魔導兵装。この二箇所で一体の機能を為し、通常の魔導兵装とは異なり複数器を連動させることできわめて強力な威力をもっている。
その機能は、金獅子からの操作により指向性を持った衝撃波を放つというもの。その規模は一般的な法弾の範囲にとどまらず、ほぼ幻晶騎士と同等の大きさをもつ。
距離により大きく減衰するため、基本は近距離兵装である……というよりも、剣を交える距離から相手を吹き飛ばすことが用法の主眼。その威力は(近距離に限定すれば)重装機ティラントーをも倒すほど。軽量機ならばそのまま吹き飛んでばらばらになるだろう。
“獅子”を模した外見のみならず、武装も“咆哮”を踏まえるなどデザインコンセプトが随所に反映されている。
●ツェンドリンブル
主搭乗者:アーキッド・オルター ・ アデルトルート・オルター
装備:ランス
ハルバード
牽引索
可動式追加装甲
荷馬車
垂直投射式投槍器
人馬騎士の祖“ツェンドルグ”をベースとして再設計された量産機体。
機構の見直しと最適化、幻晶甲冑を用いた鍛冶作業の進歩などにより大幅な部品点数削減が図られており、堅牢性と生産性が上がるとともに魔力の消費が抑えられている。
それでも魔力転換炉が二基必要であることに変わりはなく、量産機としては超高額なままである。
ツェンドルグにて機体操作のための術式が完成されたため、ツェンドリンブルは一人乗りになっている。その分本機を扱うための負担は大きく、騎操士の育成が大きな課題として残った。
場合によってはいくらかの機能を削減された簡易型としての生産も考えられている。
キッドとアディが操る機体はフルスペックとも言うべきもので、機動性を高めるための可動式反動装甲や牽引索が搭載されている。
ツェンドリンブルから運用される荷馬車は出力の負担を抑えるため、幻晶騎士を二機まで輸送する形式のものとなった。
後に余剰出力や高い積載量をいかすために追加装備が検討される。中でも垂直投射式投槍器は本機の機動性、積載量、そして騎操士の制御能力をフルに生かしたもので、大西域戦争初期における唯一有効な地対空兵装として活躍する。




