表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第7章:問いかける少年・ルクジム ――星を渡す者は、かつて星を受け取った者だった。

風が通り抜ける廃ビルの屋上。 誰も来ないはずの場所に、白い毛並みの少年が立っていた。


彼の名はルクジム。 もうひとつの物語――『ナイトコードΩ』から、静かに歩いてきた者。


星を渡す少年と、夜を知る者の邂逅。 それは、記憶と問いが交差する一瞬の灯火。


初めて読む方も、この章からどうぞ。 そしてもしよければ、ルクジムの旅の始まり――『ナイトコードΩ』も、そっと覗いてみてください。


星は、誰かの夜に灯るもの。 そして物語は、また一歩進む。



その少年は、風が通り抜ける廃ビルの屋上にいた。


誰も来ないはずの場所。


白い毛に覆われた狼のような姿。


その瞳は、夜の深さを知る者だけが持つ光を宿していた。


アオトが星を置こうとした瞬間、少年はすでにそこにいた。


「君、星を渡しているんだね。」


ルクジムは、真っすぐに言った。


その瞳は、何かを知っている者の光だった。


アオトは言葉に詰まった。


星を渡す理由――それは誰にも話したことがなかった。


「それって、誰かのため?それとも、自分のため?」


アオトは答えられなかった。


星は誰かの夜に灯すもの。


けれど渡すことで、自分も救われている気がした。


「君は、昔、星を受け取ったことがあるんじゃない?」


ルクジムの声は静かだった。


その言葉がアオトの記憶を揺らした。


私は語るべき時が来たと思った。


アオトはかつて星を受け取った者だった。


幼い頃、夜の底でひとり泣いていたあの時。


両親を失い、誰にも名前を呼ばれなくなった夜に、


誰かがそっと星を置いてくれた。


その星は言葉を持たなかった。


でもアオトはそれを“希望”と呼んだ。


それが、彼の始まりだった。


「星を渡す者は、かつて星を受け取った者なんだよ。」


私はそう語った。


それは、アオトがまだ知らない“自分”の一部だった。


ルクジムはただの少年ではなかった。


彼は記憶の断片を拾い集める者。


夜の裏側の住人。


現実と虚構の境界で問いを投げかける。


「君の星は、誰のために灯ってる?」


その問いはアオトだけでなく、ヒカリにも届いていた。


ナイトコードΩの世界では、“問い”がすべての始まり。


答えはいつも、誰かの“痛み”の中にある。


アオトはルクジムの問いに答えられなかった。


けれど星を渡す手は震えていなかった。


「僕は……ただ、灯したいんだ。」


それが今の彼のすべてだった。


ルクジムは少しだけ笑った。


「それなら、君はもう“夜の使者”だね。」


そう言い残し、彼は風の中に消えていった。


私はアオトの背中を見ていた。


ポシェットの中には最後の星がひとつだけ残っている。


彼は問いに揺れながらも、星を渡すことをやめなかった。


それは誰かのためであり、自分のためでもあった。


そして私は知っている。


彼が星を受け取った夜のことを。


その星が彼の“名前”を照らしたことを。


星は渡されるたびに、誰かの記憶を灯す。


そして物語は、また一歩進む。


――過去と未来の間で、星はどこへ向かうのか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ