50 帝都での出来事_19
* *
「ハルコン、……。ここで、父がお待ちです」
「はい」
ステラ殿下の言葉に、私はひとつ頷いた。
先ほどより、獣脂のランプしか設置されていない薄暗い廊下を抜けた先が、この部屋。
ここだけ、ポツンと一灯だけ光魔石が設置されていて、近くの壁には姿見が埋め込まれていた。
ハルコンは軽く身嗜みを整えると、喉の渇きを感じて、小さく咳ばらいをひとつした。
ふと、視線を感じた。
振り返ると、ステラ殿下が善良そうな顔で微笑みなさっておられる。
あぁ、マズい。殿下が、じっとこちらの準備が整うのをお待ちだ。
「お待たせしました。もう大丈夫です!」
その言葉に、ステラ殿下は「では、こちらに!」と仰ってから、部屋のドアを開けて、中に案内して下さった。
「お父様、……ハルコン殿をお連れ致しました!」
その部屋の中は、昼光色の光魔石が天井にいくつも設置され、室内は程よく整頓されている。
地球のモジュール換算で20畳ほどの室内には、中央に大きな絨毯が敷かれ、その上に6人掛けのソファーセットが設置されていた。
本棚にはハードカバーの書籍が並び、冬シーズンにはありがたそうな暖炉もあった。
あぁ、……。この部屋だけ宮殿の中なのに、とても生活感があるとハルコンは思った。
すると、……。部屋の奥の衝立の中から、ステラ殿下の父君、コリンド皇帝陛下が現れなさった。
「よくきてくれたね、ハルコン殿!」
その両手でトレイをお持ちになり、白い陶器の茶器が3人分載っていた。
「お父様、私がやりますのに!」
ステラ殿下が慌てて近寄ると、「いや、私にやらせてくれ!」と陛下は仰った。
それから、こちらを笑顔で見られると、……。
「狭い部屋で申しワケないが、この部屋が慣れていましてな。ハルコン殿も気を楽に、そこのソファーにでも座って下さらんか!」
「はっ、はいっ!」
こちらも背筋を伸ばしてから、さっとお辞儀をすると、ステラ殿下に手を引っ張られてソファーの席に着いた。
それにしても、……。昼の打ち合わせでは、陛下は私のことを「ハルコン卿」と仰っていた。
なのに今こうしてお会いした際には、「ハルコン殿」とお呼びになる。それに、言葉遣いも格下の私相手にとても丁寧だ。
一体、これはどういうことだろう? とハルコンは不思議に思った。
すると、陛下は茶器を載せたトレイをローテーブルに置いて、席にお着きになる。
「お父様、……。後は、私にお任せ下さいませ!」
「そうか。なら頼むぞ!」
「はいっ!」
いやいや、さすがにステラ殿下に給仕係をさせるワケにはいかんでしょ!
「いえ、ここは私が!」
「ダメですよ、ハルコン殿!」
笑顔のステラ殿下は、穏やかながらにそう仰った。
「はい、……」
慣れた調子で茶を入れなさるステラ殿下を、しばらくの間、陛下と一緒に眺めていた。
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