44 サスパニア出張旅行 その7_16
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週明けの早朝。その日の王都の広場は、朝もやに包まれているのにも拘らず、多数の馬車、多くの人々で賑わっていた。
本日、シルファー・ファイルド王女殿下を団長とする一大旅団が、謎の国サスパニアに向けてこれから出発する。
その旅団は、総勢1000名。代表の王族1名の他、王宮からも交渉役として多くの役人や貴族達が参加し、その従者も含めると相当な人員が充てられていた。
もちろん、護衛も充実している。正規の衛兵の他、中年の一級剣士さんや元女盗賊さんの事業所に所属する傭兵達で溢れていた。
中年の一級剣士さんは、元女盗賊さんの部下のゴリネルさん、トラコさんと立ち話をしていて、私が手を振ると、気さくに笑顔で応じてくれた。
私は今回、共に参加する商人、職人、研究者達とサスパニアとの橋渡しが主な任務だ。
そのために、王立研究所からも仙薬エリクサーのタイプAとB両方を大量に用意し、今後現地でその生産を任せられるスタッフも多数同行させている。
それとは別に、サスパニアの先進的な技術に触れさせるため、付き合いのある多くの商人や職人達も、この旅団に参加させている。
そちらに関しては、中年の商人さんと一級鍛冶師のドワーフの親方が、上手く仕切ってくれるだろうと思う。
私が立ち話中の2人に手を振ると、向こうも気さくに手を振って返してくる。
「ハル坊、今から腕が鳴って仕方がねぇでさ!」
「ガラス工芸が特にお薦めですよ、親方! 現地に着いたら工房まで案内しますからね!」
「そりゃぁ、楽しみでさ!」
すると、中年の商人さんが、私の隣りに控えている元女盗賊さんをちらりと見た。
「元女盗賊殿、ハルコン殿の護衛、しっかり頼みますよ!」
「問題ねぇでやす!」
ニヤリと笑う元女盗賊さんと、くすりと笑う「半次郎」さん。
その後で向こうのシマに顔を出すと、主に従者や女性達が多くいて、何やら盛り上がっている様子。
その中心にはシルファー先輩とステラ殿下。その傍らに女占い師さんと弓使いの女エルフさんがいて、「吉報が出ました!」と叫ぶと、多くの女性達が拍手と歓声を上げていた。
傍らには、皮鎧に身を包んだミラも先輩達の傍に控えており、私が手を振ると、「ハルコンッ!」といって、ニィッと笑って返された。
「もう直ぐ出発ですね? シルファー団長!」
「ハルコン、これ程の規模の旅団、……私、初めてよ!」
「ふふっ、頼りにしてますよ、シルファー団長!」
私がニッコリと笑いかけると、「まぁ、……ハルコンがいるのなら安心ね!」といって、彼女もニッコリとお笑いになった。
「そうですよ、団長! 途中、我が国にお立ち寄りの際には、精一杯おもてなしさせて頂きますからね!」
ステラ殿下が微笑むと、シルファー先輩もニッコリと微笑んだ。
朝もやが晴れ、夏の強い日が差してきた。
すると、王宮から派遣された楽団がファンファーレを鳴らす中、その巨大な旅団は王都から東門を抜け、サスパニアに向けて出発していった。
第一部「ハルコン少年期」完
「天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生」をお読み頂き、ありがとうございます!
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