44 サスパニア出張旅行 その7_14
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「ねぇーっ、ハルコン、……。これから私が何を訊ねてもさ、気を悪くしないで聞いてくれる?」
「構わないよ、ミラ。いいから、言ってごらん!」
「ホンとかなぁ?」
「ほらっ、どうぞ!」
私はミラに、いつもの調子で軽く返事をした。
すると、ミラの傍らでシルファー先輩とステラ殿下もこくこくと頷き合うと、3人揃って私のことをじっと見てくる。
それで、私は「おやぁ?」と思った。
もしかすると、結構際どい質問でもしてくるつもりなのかなぁと、……少しだけ身構えた。
「ねぇ、……。ハルコンってさ、男の子なのに、いつもいい『匂い』がするよね?」
いきなり、「匂い」とは!
でも、傍のシルファー先輩もステラ殿下も、大真面目な顔をしてうんうんと頷いているのだ。
「ぶはっ! くくくっ、年頃の女の子達から『匂い』だってさ……」
私の隣りに控えている「半次郎」さんが、堪らず吹き出している。
「『半次郎』さんっ!」
「ぷくくっ、……ごめん、ごめんっハルコンッ、ぷふっ!」
「……」
私は、ミラ達3人は年頃の女の子なんだから、そんな細かいところが気になって仕方がないんだろうなぁと思った。
彼女達が親しく接することができる異性は、私だけだ。
だから、……何だろうなぁってね。
「まぁ、……私は、ファイルド貴族の一員として、身だしなみには気を付けているからね!」
そう言って、ミラ達3人にニコリと笑いかけ、うんうんと親身になって頷いてみせた。
「そう、……そこなのよ!」
「「うんうん」」
「えっ!? どういうことです?」
私は、目の前の着飾った3人の美少女達が、一体何を考えているのだろうと、不思議に思った。
「何かさ、……ハルコンって、私達と同じ年齢に思えないの。性別も見た目は男の子なんだけど、……。どこか冷静というか、無駄がないというか、……」
「何ていうか、そうだなぁ、……。ハルコンって、男の子っていうより、女の子。それもず~っと年上でさ、……」
「そうそ、女の子っていうよりも、まるでお母様とお話をしているみたい!」
「うんうん」
「……」
少女達3人が、揃って私のことをじっと見つめてくる。
その目つきは真剣そのもので、本来なら年長者である私は、彼女達に誠実に接しなければならないと思った。
でも、……さ。
もし、私の正体が聖徳晴子という妙齢の薬学者だと、正直に伝えたとしたら、……。
その時、彼女達は急速に私から興味を失っていくとしたら、どうだろうか?
「ハルコン、その子らはキミのフィアンセなんだろ? そろそろ、『ホンとのこと』を正直に伝えてもいいんじゃないの?」
ちらりと「半次郎」さんを見ると、ニコリと頷き返された。




