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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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44 サスパニア出張旅行 その7_10

   *         *


「それじゃぁ、ハルコン殿。アタイばこったらドレスば脱ぎて、しっから現場さ見てくるでなんしぃ。ゴリネルとトラコにアタイの不在ば任せてでけれ、ホンにやれっとっと、確認さしてけれねよ!」


「あぁワカりました。とりあえずハルコンは研究所で一日過ごしますから、後で戻ってきて下さいね!」


「ありがとなんしぃ」


 元女盗賊さんは、不在時にゴリネルさんとトラコさんの2人に、研究所の増築工事の現場を任せていた。

 サスパニアから本日こっちに戻ってきて、ゴリネルさん達2人が任せていた現場をちゃんと回していたかどうか、さっそく見てきたいようだった。


 私が元女盗賊さんを送り出すと、気が気でなかったのか、一礼するや直ぐに現場の方に駆けていってしまった。


 すると、私と「半次郎」さん、2人きりになった。

 彼女はニッコリとした笑顔で、私のことをじっと見ている。


 実を言うと、ここしばらくの間は元女盗賊さんが絶えず傍に控えていたので、こんな感じになったのは初めてだった。


「ハルコン、キミもお仕事溜まっているんでしょ?」


「えっ!? あ、いや、……そんなことないですよ。サスパニアに下見にいく前に、あらかた済ませてきましたので、……」


「ふぅ~ん、優秀なんだ!」


 ニコォ~ッと微笑む「半次郎」さんに、私も少しだけ笑顔を作って返す。


「……」


 彼女は私の人生にとって、本来なら不倶戴天の敵といえる存在だ。


 私は薬学者だ。それを前世の晴子の頃から今のハルコンに至るまで、ず~っと継続してやりがいを感じながら続けてきた。


 私はこれまでに多くの人を救け、一方で「半次郎」さんは数え切れないほど人を殺めてきた。


 私とは真逆の価値観で動いてきた「半次郎」さんだけど、……。でも、彼女に対し不思議と居心地の悪さを感じたことはなかった。


「どうして、……『半次郎』さんは、人を殺めたりするんですか?」


「……」


 気が付くと、自然と疑問が口を出て発せられていた。

 でも、「半次郎」さんは何も言わない。こちらの表情を見て、ただニコリと微笑むだけだ。


「もし、……可能なら、なのですが。私と一緒にいる間だけでも、人を殺めるのを止めて頂けませんか?」


 思わず、本音が口から漏れ出てくる。


「ん~っ? いいよぉ。ハルコンがそれで気が済むのなら!」


 その口約束が、ホンの気休めにしかならないことを、私は知っている。

 それでも、どこか心の奥でホッとするのを感じていた。

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