44 サスパニア出張旅行 その7_02
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「では、さっそくですがハルコン殿。貴殿の言うサスパニアの『国体』とは、一体何だったというのか、我々にも教えてくれませんか? それと、……そこにもう一人お連れしたお嬢さんについても、詳しくお聞かせ頂けますかな?」
宰相様の言葉に、私は隣りに座るもう一人の人物の方をちらりと見た。
「良い。ハルコン、この件は私からラスキン国王陛下と宰相殿に、直にお伝えさせて頂こう!」
「よろしいのですか、姫殿下? 私にお任せ頂いても構いませんよ?」
「いや、良い! 我は既にイッシャラー(石原)らに皇籍を剝奪された身であるも、我がサスパニアの正当なる皇統であるのは変わりのない事実。ならば、我から説明申し上げるのが筋と言えよう!」
なるほど。確かに仰るとおりだと、私は思った。
「では、姫殿下から宰相様にお伝え頂けますか?」
「うむ。我は既に平民と同じ身。ハルコン、そなたも我のことを思うのであれば、今後メリッサと呼び捨てで構わぬぞ! これから、我らは夫婦になるのだからな!」
そう言って、ニヤリとされるメリッサ姫殿下。
「何と!? そちらの少女が、メリッサ姫殿下だと申されるのか!」
そう仰って驚きなさるラスキン国王陛下に、私は「はい。コリンドに滅ぼされかけたサスパニアを、イッシャラー氏らが預かって、戦後の統治を行っていたと聞いております」と正直にお伝えした。
「我々は、現在のサスパニアが戦後に民主共和制? を布いていると理解している。ならば、現在首相を務めているイッシャラー・カァーンズィがメリッサ姫殿下の後ろ盾となり、現サスパニアを統治していた、……。そういう理解でよろしいか?」
「はい、ラスキン国王陛下。そのご理解で間違いございません!」
「ふむ、……。なら、ハルコン殿が調査していた鳥インフルエンザ? とやらをコリンドに撒いたというのも、あながち報復という意味で理に適っていたということなのか、……」
そう仰ってから、陛下は複雑な表情で顎髭をいじりなさった。
「仰るとおりです、陛下! イッシャラーに我が国の運営を認める見返りに、コリンドを地の底に落としてくれと、私は申しました!」
「ふむ、……。だが、しかし、……」
メリッサ姫殿下の仰ることは尤もだけど、今回コリンドだけでなく、隣国の私達ファイルド国の各産業にまで被害が及んでしまっている。
親兄弟を殺されただけでなく、国まで滅ぼされかけた姫殿下が復讐心でコリンドに報復したのは、まぁ、……気持ちはワカらないでもない。
でも、そのとばっちりが私達のファイルド国にまで及んでしまうのは、何だかなぁと、……。
私は、横でメリッサ姫殿下の話を伺いながら、ふと思った。




