表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

407/431

43 サスパニア出張旅行 その6_07

   *         *


「では、石原中佐さん。そろそろ、これで手打ちにいたしませんか?」


 ハルコンはそう言って、石原中佐さんの目の前のテーブルの上に今も置かれている、小さなガラスの小瓶に目をやった。


 その小瓶には、先ほど私が石原中佐さんらに伝えたとおり、フラワーインフルエンザに感染した鳥を仲介して、ヒトへと更に感染したそのサンプルが収まっている。


 先日、鳥インフルエンザに感染したサスパニアの隊商の一人から回収したもので、まさに毒性も強く、新鮮な生のサンプルだと言っていいだろう。


 その小瓶の隣りに、私はとある薬剤の入った小瓶を、そっと並べて置いたのだ。


「ほぅ。それが最近各国で話題の、……。ハルコンBというワケですな?」


「えぇ。仰るとおりです。今回の件、特にコリンドで蔓延した生物兵器の毒性レベルなら、継続的な衛生環境の整備と、このハルコンBだけで十分対処可能と言えますね!」


「しかも、……その薬剤で、我が国の国民をも救って頂いたというワケですな!」


「えぇ。まぁ、そうですね!」


 私がニコリと笑ったところ、石原中佐さんは眉間に皺をよせ、口角を少し上げてから、……。


「ならば、……もう我々に打つ手なし、ということですな!」


 そう言ってから、やるせないような笑みを浮かべた。

 すると、部屋全体からすぅーっと、全ての殺気が消えてなくなっていくのを私は感じた。


 私は、ちらりと隣りに座る元女盗賊さんの表情を窺った。

 彼女は裏稼業のエキスパートだ。私には感じ取れない陰気など、全てお見通しのはずだから、その専門家に意見を求めることにしたのだ。


「えぇ。もう大丈夫でやんしぃ!」


 彼女はニヤリと親指を立てて笑った。


「あぁ、なるほど。これで、この話の決着が付いたのか!」


 そう思ったら、ついホッと一息、私の口からこぼれ落ちていった。


「それでは、ハルコン殿。我々サスパニアでは、まだ噂程度にしか伝わっていないのですが、……」


 その言葉の調子から、どうやら漸く石原中佐さんから、私をサスパニアに招聘した真の理由を聞かせて貰えそうだなぁと思った。


「えぇ、お伺いいたしますよ?」


「ならば、……ハルコンAは、どの程度の薬効が期待できるのでしょうか? もしよろしければ、拝見させて頂いてもよろしいですかな?」


「はい。普段はなかなか国外には持ち出していないのですが、今回は特別です。我が国と今後『友好』関係を築いて頂けるのでしたら、継続的に供給することを約束します!」


 そう言って、私は首からひもでぶら下げているハルコンAの入った小瓶を、胸元から取り出してみせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ