表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

402/431

43 サスパニア出張旅行 その6_02

   *         *


「なるほど、……。それは、いささか心外ですね!」


 ハルコンは、もう何の隠し立てもなく、本心を率直にサスパニア相手にぶつけていた。

 すると、石原中佐さんは「ほぅ、……」と、少しだけ感心したような表情を浮かべた。


 今回、私達の突然の訪問から始まった電撃会談なんだけどさ。

 その会談は、最初から最後まで互いに腹を探りつつ、その懐に潜り込んで切り込むようなやり取りだったと私は思う。


 そんな喧々諤々なやり取りの後に齎された感覚は、実に不思議なことに、……「和解」そのものだった。


 私は、聖徳晴子の時代から今のハルコン・セイントークに至るまで、あまり議論というものをしたことがない。


 そもそも、ヒトとは同じレベルの者同士でないと理解することはできないし、ましてや議論などは成り立たないのが普通だ。

 

 その点、今回は私達ファイルド国側の方に理があったため、その議論は終始攻撃することに徹することができたのだけど、……。

 でも、防御側のサスパニア政府の元日本人達の手練手管も、今思えばなかなか優れたものと言わざるを得なかった。


 おそらく、このファルコニアと呼ばれる異世界において、他の国々の官僚達に、今回私達の行ったレベルの議論ができるのか否かと問えば、おそらくそれは不可だろう。


 それだけ、この近現代の元地球人達のインテリジェンスは先進的であり、この中世ヨーロッパ風の異世界の文明レベルでは、到底追い付けないほど離れた距離で、私達は玉の取り合いを行っていたのだと、……私はつくづく実感する。


 だから、あえて本音を言わせて貰うとさ、……。

 正直、かなぁ~り気持ちよかったのだ。


「ねぇ、石原中佐さん。こうしてお近づきになることができたのですから、……。せっかくですから、女神様のお言葉どおりに、『皆、仲良く!』していきませんか?」


 私は、本心からそう相手に提案した。

 すると、石原中佐さんは、「えぇ、喜んで!」といって、……。彼もまた、一人の友人として、私にその「右手」を差し出してきたのだ。


 もちろん、私は直ぐに「右手」で握手を返した。


「おや? 小水戸中尉からは、握手をすると突然放り投げられると聞いていたのですが?」


「ふふっ。それは『握手落とし』ですね。私は左利きのため、相手が私の差し出した左手に応じてくれた場合には、投げて差し上げております!」


「はははっ。それは愉快ですな、ハルコン殿!」


「ふふっ。お互い、異世界での生活に苦労した者同士、今後とも仲良くして頂ければと思います!」


「えぇ、こちらこそ! どうぞよろしく!」


 石原中佐さんの目に、もう嘘もブラフも感じられない。お互いに似た境遇の者同士、今後とも仲良くやろうと、肚に決めたように思われた。


 ならば、いっそのこと、……。

 お互いに気心を知る関係となったため、私はここで更に一歩前に進もうと思った。


「私の地球での前世は、聖徳晴子。女だてらに、薬学で世界を救おうと思っていました!」


 私が笑顔でそう告げると、石原中佐さんは優しい表情を浮かべて手招きする。


 テーブルの前に身を乗り出すと、私の耳元にだけ聞こえる声で、……。

 この場にいる12名の元日本人達。その本名と組織での正式な役職、任務内容を、端的に教えてくれた。


 それは、私がこの世界に訪れるきっかけとなった、……。あの事件を連想させるのに十分な、まさに最高機密と呼ぶに相応しい一次情報だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ