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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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42 サスパニア出張旅行 その5_13

   *         *


「ハルコン殿、……。我々の押さえている工房ですが、貴殿の考えているほどの技術力では決してありませんぞ。ここ数年の貴国ファイルドの目覚ましい発展に比べ、我が国サスパニアのそれは、ホンの微々たるものです。おそらく、ご期待に沿うことは適いそうにありませんな!」


 ハルコンの目の前に座る中年将校の石原中佐さんはそう言って、再び作った笑顔を浮かべた。


 なるほど。情報将校だけあって、なかなかの鉄面皮だな。

 だったら、こちらにも考えがある。先日ウチの国の王宮に提出した「火薬」についても、中佐からコメントを貰おうかなぁと私は思った。


「私はね、……あなた方サスパニアの国と、今後とも友好的にお付き合いしたいと考えております。だって、ここ最近あなた方の国の隊商の皆様のご尽力によって、様々な物資が届いてきておりますからね!」


「ほぅ! と仰いますと?」


「はい。私はね、白米がウチの国に入ってきたことを、とても喜んでおります。味噌に醤油もそう。私にとって、それは『故郷の味』と同じですからね!」


「それは、全くそのとおりですな!」


 私がそう言うと、サスパニア側は、皆一様に笑顔になった。


 まぁ、……私の言葉の中に、「故郷の味」という単語を入れていたためだと言えるね。

 ただ、隣りに座る元女盗賊さんだけは、不思議そうな表情でこちらをじっと見ていた。


「私としましてはね、あなた方がウチの国の王宮に送り届けて頂いた、とある薬剤に付きましても、そのまま不問に付そうと思っています」


「はて、……。我々がお送りした物は数が多過ぎてですな。一体、どれのことをご指摘されておられるのやら、……」


「ふぅむ、……。『火薬』ですよ。あなた方は、数年前に我が国の王都で催した花火大会を、どなたかご覧になられたのではないのですか?」


 そう言って、対面に座る中佐の表情をじっと窺った。


 すると、相手はこちらの目の色に気付いたのか、ニィッと笑って返してきた。

 だから、……私は更に話を続けた。


「実はね、私は王宮から密命で『火薬』の量産を命じられてましてね。もう既に国内の数か所に、まとめて備蓄しております!」


「……」


「つまり、『火薬』の生産技術について、あなた方に優位性はない、……ということですね!」


「……、なるほど。……にべもない、な」


 そう言って、石原中佐さんは手拭いで額の汗を軽く拭った。


 この件に関しては、元女盗賊さんも知らない情報だ。

 おそらく、「火薬」とか「花火」と言われても、一体何のことやら、皆目見当が付かないことだろう。


「ですからね、……。我々は、同様に『フラワーインフルエンザ』を収納可能なガラスケース、小瓶? の製造を、あなた方が今後とも続ける場合には、対抗措置を取ることも決して厭いませんからね!」


 私はそう告げると、テーブルの上に、先日隊商から頂いた小さな金属製の収納ケースを、そっと置いた。   *         *


「ハルコン殿、……。我々の押さえている工房ですが、貴殿の考えているほどの技術力では決してありませんぞ。ここ数年の貴国ファイルドの目覚ましい発展に比べ、我が国サスパニアのそれは、ホンの微々たるものです。おそらく、ご期待に沿うことは適いそうにありませんな!」


 ハルコンの目の前に座る中年将校の石原中佐さんはそう言って、再び作った笑顔を浮かべた。


 なるほど。情報将校だけあって、なかなかの鉄面皮だな。

 だったら、こちらにも考えがある。先日ウチの国の王宮に提出した「火薬」についても、中佐からコメントを貰おうかなぁと私は思った。


「私はね、……あなた方サスパニアの国と、今後とも友好的にお付き合いしたいと考えております。だって、ここ最近あなた方の国の隊商の皆様のご尽力によって、様々な物資が届いてきておりますからね!」


「ほぅ! と仰いますと?」


「はい。私はね、白米がウチの国に入ってきたことを、とても喜んでおります。味噌に醤油もそう。私にとって、それは『故郷の味』と同じですからね!」


「それは、全くそのとおりですな!」


 私がそう言うと、サスパニア側は、皆一様に笑顔になった。


 まぁ、……私の言葉の中に、「故郷の味」という単語を入れていたためだと言えるね。

 ただ、隣りに座る元女盗賊さんだけは、不思議そうな表情でこちらをじっと見ていた。


「私としましてはね、あなた方がウチの国の王宮に送り届けて頂いた、とある薬剤に付きましても、そのまま不問に付そうと思っています」


「はて、……。我々がお送りした物は数が多過ぎてですな。一体、どれのことをご指摘されておられるのやら、……」


「ふぅむ、……。『火薬』ですよ。あなた方は、数年前に我が国の王都で催した花火大会を、どなたかご覧になられたのではないのですか?」


 そう言って、対面に座る中佐の表情をじっと窺った。


 すると、相手はこちらの目の色に気付いたのか、ニィッと笑って返してきた。

 だから、……私は更に話を続けた。


「実はね、私は王宮から密命で『火薬』の量産を命じられてましてね。もう既に国内の数か所に、まとめて備蓄しております!」


「……」


「つまり、『火薬』の生産技術について、あなた方に優位性はない、……ということですね!」


「……、なるほど。……にべもない、な」


 そう言って、石原中佐さんは手拭いで額の汗を軽く拭った。


 この件に関しては、元女盗賊さんも知らない情報だ。

 おそらく、「火薬」とか「花火」と言われても、一体何のことやら、皆目見当が付かないことだろう。


「ですからね、……。我々は、同様に『フラワーインフルエンザ』を収納可能なガラスケース、小瓶? の製造を、あなた方が今後とも続ける場合には、対抗措置を取ることも決して厭いませんからね!」


 私はそう告げると、テーブルの上に、先日隊商から頂いた小さな金属製の収納ケースを、そっと置いた。

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