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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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42 サスパニア出張旅行 その5_12

   *         *


「ねぇ。石原中佐さんのところでは、どの程度ガラス技術は進んでいるんですか?」


 ハルコンがおもむろに訊ねると、中佐さんら他の面々は、元女盗賊さんがカチ込んでくるのを精一杯止めに入っている状態で、もうそれどころではなかったようだ。


「いっ、今はそれどころではないっ! ハルコン殿といっしょにきたこの女を、何とかしてくれぇーっ!」


 必死な声でそう訴えてくる中佐を見つつ、ちらりと憤怒の形相で暴れている元女盗賊さんに、私はさっそく彼女にだけしか聞こえないよう、そっと念話を送った。


『元女盗賊さん、私達のやり方が功を奏したようです。そろそろ、相手方も腑抜けてきましたから、こちらも笑顔で話を進めましょう!』


『了解でやす。ハルコン殿ばそう仰るでなら、……』


 元女盗賊さんは、この念話でのやり取りの後、直ぐに振り上げていた手を降ろした。


 石原中佐さんらは、漸く室内に吹き荒れた嵐が収まったことにホッとした様子で、……。

 着崩れていた制服の袖を治したり、乱れた御髪をサッと手で整え始めた。


 なるほど。基本的には「秩序」を愛する元軍人達だからな。慌ただしげに身だしなみを整えているのを見て、やはりこれが彼らの特徴なんだろうなぁと思った。


「では、もう一度お訊ねします。石原中佐さん、……貴国サスパニアでは、どの程度ガラス技術は進んでいるのですか?」


 こちらの問いかけに対し、石原中佐さんはちらりと横目で一人の青年の方を見た。

 なるほど。この人は戦時中に徴用された、元職人の工兵さんなのかもしれない。


「そちらの方ですね? 技術に秀でていらっしゃるのですね?」


 私はそう言って、鉛ガラスで作られた半透明の黄色い煙草皿を手に取って見せた。


 その青年は、ちらりと石原中佐さんを見た後、ひとつ頷かれたため、それで覚悟を決めたのかもしれない。


 青年はおもむろに、私の方を見てこう告げた。


「はい。私が工房に依頼して、これを生産しました」


「ほぅ! では、本日の午後にでも、そちらの工房を見学させて頂いてもよろしいでしょうか? ウチの技術者が、サスパニアで生み出した器材に、とても関心があるものでして、……。ぜひ、土産話にこの目で見ておきたいのですよ!」


 私が熱心にこう告げると、その青年と石原中佐さんは、小声で何かやり取りを開始した。


 しばらく、……おそらくホンの数分といったところか。

 私は元女盗賊さんを再びソファーの隣りの席に座らせ、共に並んでサスパニアの出方を伺うことにした。


 まぁ、とにかく、……。

 これで漸く、この騒動のきっかけが見えてきた感じだね。

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