42 サスパニア出張旅行 その5_07
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「……、それで石原中佐さん。今回の私達の突然の訪問に際し、手厚くもてなして頂いたことを、心より感謝いたしますよ!」
「たっ!? たはっ、たっ、ははは、……」
相変わらず石原さんは冷や汗をかきつつ、こちらを窺う目が少しだけ怯えてそうに見えた。
私と元女盗賊さんが客間に通されて、早くも20分程が経過した。
その客間は、周辺各国の要人をもてなすことができるよう、贅を尽くした調度品が並んでいて、私達の座っているソファーセットも本革張りで申し分ない。
でも、その30畳(日本のモジュール換算しております)程の室内の天井は、いくつも無残な穴ぼこが開いていて、部分的に青空が広がって見えている現状だ。
せっかく、床には毛足の長い絨毯が敷かれているというのに、……。
先ほど私が落とした大小様々なサイズの砕石が、各所にばら撒かれたままの状態になっている。
ホンと、惨憺たる有り様なんだけどね、……。
でも、これも仕方がないことだよ、と私は思う。
だって、石原さん達は私という「神の御使い」に対し、不遜な行いをいくつもやらかしたんだからね。
まぁ、その件の申し開きについては、先程までじっくりと聞かされたからいいとして、……。
「それはそうと、……石原さん、ここ数年あなた方は隣国のコリンドを、渡り鳥の習性を利用して、フラワーインフルエンザをばら撒いたでしょ? 大変だったんですよ、コリンドの皇族の皆さんの体調を回復させるのは!」
「!? たはっ、たっ、ははは、……」
なるほど、これがぐうの音も出ないといった有り様か。石原さんは額に大汗をかいたのか、必死になって手拭いで顔を拭いている。
「まぁ、……とにかく、私達の国ファイルド国は、現在『善隣外交』を国是としております。あなた方サスパニアとコリンドの衝突はいたし方ないとして、……。でも、人が大勢苦しむのはとても看過できません。我が国が仲介に立つことも厭わないですから、そこはお考えを改めなさることをお勧めいたします」
「……、はい」
まぁ、これで猫の首輪に鈴を付けることができただろう。
後はさ、……どうして私をわざわざサスパニアに招聘したのか、……。
その辺りの話を、石原さんの口から直に伺えればなぁと思ったんだ。




