41 サスパニア出張旅行 その4_21
* *
まぁ、……。私としては、女性でかつ年端のいかない者を、こうやって精神的に追い込むのは本意ではないんだよ。
でもさ、……。満腹で動けなくなった元女盗賊さんを、あれだけトッチめてくれたんだ。
だったら、私がホンのちょ~っと、小手先で仕掛けるのくらい、……全然問題ないよね?
「ほらぁ、……ほらぁほらぁ。私とホンのちょ~っと、握手してみませんかっ?」
私の笑顔を見て、踊り子の少女達は明らかに狼狽した色を濃くしていた。
「あっ、握手って! アンタ、さっきからず~っと右手じゃなくて左手を差し出してくるじゃないっ! 絶対、何か酷いことする気満々でしょーっ!!」
「……、まさかぁ~」
「ほらっ、白々しいっ! 絶対悪いこと考えているよぉーっ!!」
うぅ~ん、何だかなぁ、……。
いつまでもこうして揶揄ってないで、早いとこ、この2人からサスパニアの情報について、いろいろと訊き出したいんだけどなぁ、……。
なぁ~んて、私は少しだけうんざりしながら思った。
すると、……。
突然「一体、店の奥はどうなっている!?」と、店外から青年の声で騒ぐのが、こちらまで聞こえてきた。
意識的に耳を傾け、店の入り口の方に大勢の者が集まって騒然とした気配を窺う。
部屋の間仕切りの開いたところから覗き見ると、こちらの個室まで一直線に向かってくる一団を確認できた。
『元女盗賊さん、さっそく誰かきたようですよ!』
私はホンと数年ぶりに、元女盗賊さんの頭の中に「天啓」という名の念話を送信した。
『おほっ! 久方ぶりでやすなっ、ハルコン殿っ!』
見ると、元女盗賊さんが嬉しそうに親指をビッと立てて笑っている。
『警戒です! 問題が起こりそうなら、このまま直ぐに撤退ですよ!』
『OKでやす!』
とりあえず、お互いの意思を確認し合うと、その隙を突いて、……。
「ギャァーーッ! お助けぇーっ!」
そう叫んで、踊り子の一人が外に飛び出した。
そして、その数秒の後……。
一団の先頭に立つ青年は部下に少女を介抱させると、こちらが既に警戒して部屋で待ち構えていることを、立ち込める気配から読み取ったようだ。
青年が後の者に右手で合図を送ると、皆一斉に立ち止まった。
ふぅ~ん。なら、……こちらの次の一手は、どうしよっか?
後の先といって、相手の出方次第で私達が先手を取りにいきたいところなんだけど、……。
「ほぉう。もしかしたら、なのですが、……。先ほどあなたは、『握手落とし』をウチの部下に仕掛けようとされてませんでしたか?」
間仕切りの室内の外から、よく通る青年の声が中まで届いてくる。
なるほど。この青年は、相当な手練れだよ。
うかつに近づくのは、非常に危険だと私は思うね。
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