41 サスパニア出張旅行 その4_18
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「お客さぁ~ん、率直にお訊ねしますけど、……」
「もしかすると、ウチ(サスパニア)の国の人じゃないよね?」
少女2人が、そう言って交互に訊ねてきた。
「「えっ!?」」
まさか、……ね。
どうやら、……私と元女盗賊さんは、とっくに罠に嵌められていたらしい。
食い過ぎで身動きのできない元女盗賊さんを見て、ホンと「しまった!」と思った。
これならスキル「マジックハンド」で、この大量の料理を本国の晩餐の席に送り出しておけばよかったと、今更ながらに後悔したよ。
「……、そげなこと、ないでやす!」
元女盗賊さんは、辛うじて少女達の問いかけを否定するのだが、……。
実は、彼女は子供の頃、絶えず飢餓と隣り合わせだったそうだ。
だから、食べられる時にちゃんと食べる。その際、限界を超えるほどの量すら腹の中に収めてきたのだそうだ。
そうしないと、今度いつ食べられるかワカらないから、……といった話を、以前彼女から直接伺ったことがある。
たとえ、それがNPCの彼女に植え込まれた偽りの記憶なのか、実際にそんな境遇にあったのかは、こちらにとって定かではない。
ただ、元女盗賊さんにとって、自身の語る過去こそホンとの話なのだと思う。
とにかく、今の彼女の胃の容量を限界突破している状態では、その表情にいつもの迫力はない。
そんな弱り切った元女盗賊さんを、少女達が拘束するのはお手の物だった。
「「クスクス、プフフ、……」」
少女達は鮮やかな手つきで元女盗賊さんを縛り上げると、冷ややかな笑顔でじっと見つめてきた。
「何ばしよるとでやすか!?」
「見るに、お二人とも、どこぞの国の間者ではありませんか?」
「……、そげなこと、なかっ!」
元女盗賊さんは、青白い美麗な顔に脂汗を浮かべつつも、何とか否定しようとする。
「ふふふっ、なら、私達からホンとの正体をお伝えしましょうか?」
「だから、……踊り子、……でやしょ?」
なるほど。元女盗賊さんは、あくまでしらを切るつもりなのか、とハルコンは思った。




