41 サスパニア出張旅行 その4_17
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「いやぁ~、何だか凄い盛り上がりでしたね?」
「全く、……そうでやすな」
踊り子2名による即興のライブが終わった後、店内は再び酔客達のざわめきに支配されていった。
だけどさぁ~っ、……。それにしても、……。
私と元女盗賊さんの2人がかりで、再び大量に出されたご馳走を何とか胃に納め始めていたのだが、……。
でも、こちらは若い女と11歳の少年だ。余程の食いしん坊でもない限り、こんな2人で食べられる量などたかが知れている。
「さて、……どうしますかね?」
「ふひひ、そうでやすな、……」
元女盗賊さんも、顔色が優れない。いくら百戦錬磨の彼女といえど、これだけの物量で攻め込まれてしまっては、もう為すすべがないと言えた。
それでも、「うんにゃ、出された料理ば残すなど女の恥っ! アタイば、ぶっ倒れても、食い切るでやんしぃっ!」といって、何とか脳みその満腹中枢に必死の抵抗を試みた。
「元女盗賊さん! ムリして食べては、体に毒ですよ! 残った分は店に頼んで箱に詰めて貰って、持ち帰りましょう!」
「だども、スープばどうしるでやんすか?」
「それは、……」
さすがに、こちらとしても口ごもらざるを得ないのだが、……。
すると、部屋の外から、酔客達のざわめきとは別に、鈴の鳴るような少女達の声が聞こえてきた。
「ほらほらっ、先ほどのお大尽様の個室だよっ! しっかり営業して、たくさん稼ぐんだよっ!」
「「はぁ~いっ!」」
そんな店員達の声がする。先ほどまでステージで踊っていた少女達かなぁ? と、ハルコンは思った。
そうしたら、にゅっと、……。ほんのり薄化粧を施した少女の顔がふたつ、間仕切りの間口から現れたのだ。
「「お客さぁ~ん、これから伺ってもよろしいですかぁ~っ?」」
そんなことを笑顔で訊ねてくる、踊り子の少女達なのだが、……。
でも、彼女達の目に、私と元女盗賊さんの様子は、一体どう映ったのだろう?
「おんやぁ~っ、……クスクス」
「丁度、難儀してる最中でしたね、……うふふっ」
うぅ~ん。ちょっと、カッコ悪いとこ見せちゃったかな?




