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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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41 サスパニア出張旅行 その4_14

   *         *


 えっ!? 一体どういうこと!?


 頭の中を多くの疑問符でいっぱいにしていると、「『生』お持ちしましたぁーっ!」と威勢のいい声と共に、ガラスのジョッキを手に持った若い女の店員が、こちらの室内に入ってきた。


「ふへへ、『生』でやすか? 見るからに美味そうで、いいでやすな!」


 元女盗賊さんの前にはガラスのジョッキ、ハルコンの前にはガラスの小ジョッキが音もなく置かれた。

 へぇーっ! サスパニアは小国なのに、なかなかの技術力だなぁ!


 実際の話、私達のいるファイルド国でも、まだガラスの製造法は発展途上にあってさ。

 でも、今目の前には、クリアな透明度を誇るガラスのジョッキが、元女盗賊さんと私の前に普通に置かれているんだよ。


 私の分は、紫色の炭酸ジュース。おそらく、グレープの果汁入り炭酸ジュースだろうと思われた。

 元女盗賊さんを見ると、嬉しそうにジョッキの柄を掴んで目の高さまで掲げ、中には黄金色の炭酸がシュワァ~と静かな音を立てていて、……それが、こちらまで聞こえてくる。


 もしかして、これって!? 「生」ビールなのっ!?


 ムムム、とりあえず店側には、オーダーは全て「お任せ」で頼んでいるんだけど。

 でも、正体も知らずに、この「生」を元女盗賊さんに飲ませるワケにはいかないよね!


「姉さん、この『生』っちゃぁ、一体なんぞね?」


 すると、興味津々な顔をして、元女盗賊さんがさっそく店員さんに訊ねていた。


「私にもワカんないです。でも、店の支配人が、この冷やした炭酸入りのエールを『生』って呼べっていうものですから!」


「ほへ~っ、姉さんでもワカらんちんかいね!」


「すみませぇ~ん!」


「よかよか、これ、……ちゃんと美味かね?」


「はいっ! それはもちろんですっ!」


「なら、よかっ!」


 その20歳くらいの年齢の女店員は、そそくさと逃げるように部屋を出ていった。


「ちぇ~っ、何でやんすか、『生』って、……」


 そう少しだけボヤくと、元女盗賊さんはニコリとこちらをじっと見た。


「『生』っていうのは、……おそらく一切熱処理せずに、酵母をろ過して取り除いていることを言うんですよ!」


「ほへ~っ、さすがハルコン殿! 何でも知ってやすな!?」


 すると、元女盗賊さんはとても驚いたといった表情で、こちらの顔をまじまじと見てきた。

 さすがに、その表情にはちょっと辟易したんだけど、……。


「いいえ、……私は、この世の中で知らないことの方が、ず~っと多いんですよ!」


「……、そうでやんすか?」


 こちらの言葉や態度とかに、気持ちとか実感がこもっていたのだろう。

 元女盗賊さんは、不思議そうに目を丸くしていた。

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