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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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41 サスパニア出張旅行 その4_06

   *         *


「ウチは、ゴリネルですだ!」


「ウチは、トラコです!」


 巨躯の獣人女子2人は所長室に入るなり、そう自己紹介を始めていた。


 ハルコンにとって、この所長室というものは、ある種の権威の象徴と捉えていた。

 大体20畳ほどの室内の床一面に、セイントーク領産のカーペットが敷き詰められ、来客用のソファーセットも革張りで、なかなか豪華だと思っていた。


 そして、来客席から南側の窓際を見ると、……。

 その窓際に所長机と椅子が設けられ、逆光のハルコンがとても神々しく見えるよう演出されてもいたのだ。

 

 だから、この所長室に訪問した客達は、皆揃って「ハルコン殿は、なかなかの雰囲気をお持ちだ。その格も申し分ない!」と太鼓判を押すのも当然と言えた。


 ハルコンとしては、穏やかで物分かりのいい好人物だと自身を認識していたものの、……。


「それでは、ハルコン所長の名折れです。初代王立研究所所長の名は伊達ではありません。ぜひ、私達の提案を受け容れて下さいっ!」


 シリア秘書長の進言もあり、王宮から支給されたインテリア一式を所長室に搬入したら、あっという間に、ここ王都でも有数の豪華な室内が出来上がってしまったのだ。


 さて、……そんな室内なのだが、……。

 現在、多人数にも対応したソファーセットは、2人の恵体の獣人女子2人に占拠され、元女盗賊さんは予備の丸椅子に座っている。


 3人を招いたハルコンは、所長席の備え付けの椅子を引っ張ってきて、それにちょこんと小さな身体を載せている。


 3人の目から見たら、これまで所長机で権威付けられていた様子は見る影もなく、……。

 おそらく、大仰な大人向けの椅子に、子供が遊びで腰かけている風に見えているのだろう。


 何とも微妙な表情を浮かべているのが、ハルコンの目から見てもはっきりしていた。


「ふふふっ、お気遣いなく。私は周りからは所長などと呼ばれて持ち上げられていますが、所詮まだ11歳の元服前の子供です。あまり私のことを恐れたり敬ったりしなくていいですからね!」


 ハルコンは、場違いな現場に通されたと思っているであろう相手を気遣って、そう穏やかに話しかけたのだが、……。


「いいえっ、とんでもないです。ウチらにとって、セイントーク家の皆さんは命の恩人ですっ! それに報いるのが、ウチらの使命、……ですっ!」


 ゴリネルが、巨体を揺らしながらそう訴えると、……。

 

 もうひとつのソファーに着座したトラコも、「そうだ、そうだ! ウチもハルコン様のお力になりてぇ~だっ!」

 そうゴリネルに負けず劣らず、強い調子で訴えてきた。


 恵体の2人から渾身の力で強く訴えられると、それはなかなかの迫力だ。

 

 20畳の部屋がとても狭く感じられ、2人の声が室内に木霊する中、ハルコンは思った。


 サスパニア出張旅行は、今回ホンとイレギュラーなことだらけで参っていたんだけどさ。

 でも、この2人が助太刀してくれるんならさ。ホンと頼もしいよ! と。


「あぁ~いっ、ちさまらぁーっ! 今ぁ誓うっちゃよ! ハルコン殿のためよば、命っちゃぁ賭けるでやすか?」


「「もちろんでさ、姉御っ!!」」


 その2人の言葉を聞いた途端、ハルコンは席を立って、2人の許に近付いた。


「今回のサスパニア出張旅行を、何としても成功させたいんです。ぜひ、協力をお願いします!」


 両手それぞれでゴリネルとトラコの手を掴むと、感極まった2人が「「ハルコン様ぁ~っ!」」と言って、抱き着いてきた。


 あまりの膂力に、思わず気絶しそうになってしまったが、……。


「お二人とも、私のチームに参加して頂いて感謝します!」


 そうハルコンは、辛うじて述べることが出来たのだった。

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