41 サスパニア出張旅行 その4_05
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ハルコンは、先ほど建築現場近くの敷地で騒ぎを起こしていた面々を連れて、所長室まで向かっていた。
その途中、ハルコンの後方で元女盗賊さんがず~っと獣人女子2名にお小言を言い続けているのを見ていたら、……。
「やっぱりこの人って、何だかんだ言って、随分面倒見のいい人だよなぁ」と、思った。
それにしてもだ。この廊下の天高は、ざっと2メートル70センチほどなのだが、……。
この2人の妙齢女子の獣人達の背丈では、ふとしたはずみで天井に頭がぶつかってしまうのではないかと、さすがに心配になった。
私は、……「昔」、よく神社仏閣巡りを好んでしたものだったけど。
寺院の入口に、阿形と吽形の仁王様が二体一組で配置されていて、……。まぁ、それを見ているみたいで、とってもおかしいなぁ、……なぁんてさ。
「ふふっ、くすす、……」
すると、思わず声を漏らしていたらしい。
「どうされましたでやすか? ハルコン殿?」
そう言って、元女盗賊さんとゴリ子とトラ子の3人が、不思議そうにこちらの表情を伺ってきた。
「い、いいえ。ちょっと、『昔』のことを思い出したものですから」
「ふへぇ~っ。ハルコン殿、『昔』? のことでやすか?」
「はい。『昔』のことです!」
すると、元女盗賊さんも女獣人の2人も、なおさら不思議そうな表情を浮かべた。
おそらく、彼女達は私がまだ11歳の子供なのに、「昔」などと述べたものだから、「一体この子は何を言ってるのだろう? 背伸びをしたいお年頃なのかな?」とでも考えたのだろう。
すると、直ぐに3人とも満面の笑みを浮かべ始め、先ほどまでの険悪な雰囲気がどこかにいってしまった。
まぁ、私の思い出し笑いが、少しでもこの場の雰囲気を和ませたのなら、それも良しとしよう、とハルコンは思った。
そう言えば、寺院の入り口に配置されてある仁王像だが、阿形には「物事の始まり」、吽形には「物事の終わり」を表現しているらしい。
どうしてだか、よくはワカらないのだけど、……。
今回のサスパニア出張旅行に恵体の獣人2人が加わったことで、今後の私にとって、とても重要な意味を持つことになるんじゃないかなぁと、……ふと、ハルコンは思った。




