40 サスパニア出張旅行 その3_13
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「とにかく、私もシルファー殿下と共に、サスパニア出張旅行には必ず参加させて頂きますよ。だって、私だけ参加しないのだなんて、……何だかノケ者になったみたいでイヤですから!」
どうやら、ステラ殿下もサスパニアに一緒に向われるご意志のようだ。
「ここにくる前に、私は陛下から了承を頂いております。ミラの父君にも事前に話を通しておりますから、ステラ殿下は途中ご帰国された際に、皇帝陛下のご指示をお聞きになられた方がよろしいかと思うのですが、……」
「なるほど。ハルコンの仰るとおりですね!」
「はい。それがよろしいかと」
ファイルド国が掴んでいないだけで、……。実は、コリンドとサスパニアが冷戦状態にあるという可能性を否定できない。
だから、こちらから一方的に出張旅行に参加を促すのもどうかと思ったのだ。
すると、ステラ殿下はこちらの言葉に納得したご様子で、……。それから何かにお気づきになられたのか、目をパチクリさせた後に、ひとつ頷かれた。
「シルファー殿下、ミラ、ちょっとよろしいかしら?」
「「はい」」
さっそく女子3人は、シルファー先輩を中心に内輪で何やら話し始めた。
こちらとしては、表向きの話は全て3人にお伝えしたつもりなんだけどね。
でも、3人ともとても聡明で、頭の回転が非常に速いタイプだからさ。直ぐに私がお伝えしていない裏の事情に気付かれたんだろうね。
すると、シルファー先輩が「いいわね?」と仰ってひとつ頷かれると、ステラ殿下とミラもこくりと頷かれた。
どうやら、先輩が代表してこちらにお訊ねになられるようだ。
「あの、……ハルコン。ひとつお訊きしてもよろしいかしら?」
「はい。伺います、シルファー先輩!」
私は、いつもの調子で笑顔を作って先輩を見つめた。
「今回のサスパニア出張旅行って、ホンとならハルコンだけで赴くんじゃなかったの? なのに、私やステラ殿下、ミラも同行する話になった。これって、どなたが仰られたのかしら?」
その言葉の後、シルファー先輩だけでなく、ステラ殿下もミラも真剣な眼差しで、こちらをじっと見つめてこられた。
なら、私も彼女達の本気にちゃんと向き合わなければならない、とハルコンは思った。
「はい、女神様からのご提案です。私が大人の方々にそうお伝えしましたら、皆さんふたつ返事で了承して頂きましたよ!」
「「「ホンとなのっ、ハルコンッ!?」」」
「はい。サスパニア出張旅行を楽しんできなさい! とのことですよ!」
「「「キャァーッ、やった! やったぁーっ!!」」」
その言葉に3人の女子は目を輝かせると、お互いに手に手を取って喜び合った。
ハルコンは関係各所に根回しをして、着実にサスパニア出張旅行の準備を進めています。
若干11歳にして、王立研究所の所長を務めるハルコン。大人顔負けの交渉力を発揮しながら、任務にちゃんと向き合っているんですね。




