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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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40 サスパニア出張旅行 その3_03

   *         *


「さて、……と」


 ハルコンは一人そう呟くと、早朝の初夏の、まだ暑くない時間にセイントーク別邸を後にした。


 とりあえず、父上とローレル卿の言質を取ることができたよね。その後は王宮にいって、陛下のご理解を得られればいいんだけど。

 そんなことを思いながら王都の貴族街を抜けていくと、次第に王宮と王城が見えてきた。


 昨日、王宮からサスパニア出張旅行の命令が下った。

 その翌朝早々に参内したところ、通いの官吏達の出勤時間よりも早い時間ではあるのだけど、……とにかく人影はまばらだった。


 王城の門前にいる騎士達も、王宮にいる官吏達、また女官やメイド達に、以前のような忙しい雰囲気は特に見られなかった。


 ほんの数年前、まだ隣国コリンドと停戦中だった時、……。


 王族から下級官吏まで、誰もが全身にピリピリとしたオーラを漂わせていて、まさに臨戦態勢と表現していい状態だったと思う。

 それが、ここ最近は実におっとりしたものだ。


 すると、……ふと前世の晴子の頃のことを思い出した。

 主任教授と共に、上級官公庁に予算の申請書類を提出しにいった際、その現場で見かけた役人達の雰囲気と、どことなく似ているような気がしたのだ。


 なるほどねぇ、……。役所っていうのは、どこも似たようなもんなのだなぁと。


 でもさ、……。今になって思うんだけどさ、当時の日本は、見た目ほど平和ではなかったのかもしれないよね。


 実際の話、それからしばらくしてから、ウチの研究室は度々トラブルに見舞われるようになったんだしね。


 どこもかしこも多くの利権が介在し、既得権益の保護が優先されていた現状なワケだし、……。

 おまけに、同盟国アルメリアからの継続的な監視と、その傀儡達による国家運営が常態化していたんだよなぁ……と。


 そう考えると、何だか苦々しい気持ちになっちゃうよね。


 まぁ、たぶんだけどさぁ、……。

 ウチの研究室の動向は、絶えず日本の上級官庁を通じて、アルメリアにリークされ続けていたんだろうなぁ。


 何しろ当時の私達は、予算でず~っと研究活動を縛られ続けてきたからさぁ。

 とにかく、……全部包み隠さず、ありとあらゆることを、上級役所に報告するよう求められていたんだっけ。


 だから、私達のアイウィルメクチン(仙薬エリクサーのこと)についても、絶えずアルメリアには筒抜けだったんだろうなぁ。

 それに比べたらさ、今の異世界での研究生活は、ず~っと恵まれているんだと私は思うよ。


 すると、突然朝8時を告げる5回の鐘が鳴った。

 その途端、大勢の官吏達、女官や騎士達が一斉に出勤してきたため、館内は大変混雑してしまった。


「イケない、イケない。今の私は、あんな下らない世界にいるワケじゃないんだ!」


 ハルコンはそう呟くと、首を左右に数回振って、頭の中のモヤモヤを払拭することに努めた。

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