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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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37 研究所の長い一日_24

   *         *


「ハルコン殿、……これでよかでやすか?」


 複数の書面にサインを終え、漸く顔を上げた女盗賊が、幾分辟易した様子でこちらを見てきた。


 ハルコンはそれら書類全てを受け取ると、女盗賊のサインが指定の箇所にちゃんとされていることを、じっくり目を落として確認する。


 思わず、心の中で「よし!」とハルコンは呟くと、ひとつだけ頷いた。


「はい。お手数をおかけしました。今後、我が研究所との長期的なお付き合い、どうぞよろしくお願い申し上げます!」


 ハルコンがニッコリと笑顔を向けると、女盗賊も少し弱ったように、「たはは、……」といって笑顔を浮かべた。


「さて、これで契約完了です。ウチの研究所にはまだ正規の守衛がおらず、王宮から衛兵の一部をお借りしているところでした」


「そうでやしたか。ウチんところでも、女性の獣人連中に、もっと仕事をば与えてやりてぇと思っておりやしたので、……」


「なるほど。そうでしたか、……」


 ハルコンが笑みを絶やすことなく相槌を打つと、女盗賊もホッと一息吐いた。


「あぃ。女連中と侮らねぇで欲しいでやす。ヤツらも男さ連中同様、ガキの頃から戦闘に特化ばしてるでやすゆぇ、守衛もお手のもんでやすよ!」


「それはありがたいです。先ほど、向こうの建築現場で何人か獣人の女性作業員の方を見ましたが、男性獣人よりも細身でしなやかそうで、……」


「まぁ、……そうでやすな」


「それと、何といっても威圧感がないのが、ありがたいなぁと思っていたところでした!」


「まぁ……、それは痛し痒し、……でやすな!」


 こちらの言葉に、女盗賊はニヒヒと笑った。


「今回の女盗賊さんとの専属契約で、ウチとしましては、長期的かつ定期的に守衛を置くことができます。これで、我々研究者一同、安心して作業に励むことができます!」


「それは、よかったでやす!」


「ありがとう、女盗賊さん!」


 そう言って半身だけ立ち上がると、右手を彼女の前に差し出した。


「たはは、こちらこそ。今後ともよろしくお願いでやす、ハルコン殿!」


 女盗賊も立ち上がり、お互いにニッコリと笑顔で握手を交わした。

 

 さて、……と。

 ハルコンが窓から庭の花壇に設置した日時計を見ると、既に午後の5時を回っていた。


「もう、こんな時間か、……」


 思わず呟くと、女盗賊も契約書類の半分を鞄にしまいながら、相槌を打つ。

 こちらとしては、久しぶりの再会を祝して、これから夕飯を一緒にできたらいいんだけど。


 すると、女盗賊からこう話してきた。


「ハルコン殿、……この後どんな予定でやすか? もしよければ、街で集まりがありやして、……。共に、こられんでやすかね?」


 その提案に反応して、ハルコンは傍に立つ秘書長のシリアを思わず見上げた。


「えぇ、所長。本日はもう退所されてもよろしいですよ。後は、我々の方で手配しておきますので!」


「ありがとう、シリアさん!」


 ハルコンは子供らしく、素直にニッコリと笑った。

 今回、ハルコンの王立研究所での、とある一日をお送りしました。

 少しずつ、ハルコンの身近に危機が迫ってきておりますが、一方で力強い仲間との再会もありました。

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