37 研究所の長い一日_16
* *
「カルソン教授、どうやらウイルスの除去に成功できたようです。なので、我々もこの重苦しい防護服を脱ぐとしましょう!」
「了解です」
ハルコンの言葉を聞き、その場のスタッフ達は互いに頷き合うと、それぞれ防護服を脱ぎ始めた。
「おぉっ、ホンとに子供だったのか!?」
すると、隊商のリーダー格の男が、こちらを見て驚いた表情を浮かべている。
「えぇ、まぁ。それが普通の反応ですよね?」
ハルコンもまた照れ笑いをして応じると、患者達は皆、ホッと安堵の表情を浮かべた。
さて、……と。
ハルコンは、当初の指示どおりにファルマに患者達全員に触れさせると、リモートで簡易的な診断を行った。
そうすることで、ハルコンの頭の中には、MRIで検査したように、様々な角度からの人体の断面図のイメージで、その患者の全身をサーチすることができるのだ。
しかも、体内成分の略式表記までされるので、とても心強いのだ。
うん、パーフェクト!
ちゃんとハルコンAが効いていて、全身隈なく見たけど、病気の気配すらないねっ!
思わずハルコンがニンマリと笑ったところ、毎度ながらカルソン教授も冷ややかに「ククッ」と笑った。
「おやぁ、カルソン教授。どうしましたか?」
「いいえぇ、所長が何をどうやったか、あれだけの診断を行ってしまうのに、仕草がまだまだ子供っぽいのがとてもおかしいものでして、……」
「そうですよぉ。私はまだ子供ですからねぇ」
「クッ、ククッ」
「プッ、アハハハ」
そう言って、お互いに笑い合う。
すると、先ほどまで特別隔離室の雰囲気はとても緊張していたにも拘らず、あっという間に穏やかに和み始めた。
「ハルコン所長、この度は大変感謝します。貴重なハルコンAまで使って頂き、言葉もありません!」
隊商のリーダー格の男が胸元に手を当てて軽く会釈すると、他のメンバー11人も同様に頭を下げた。
その際、「ありがてぇありがてぇ、……」とか「これで、サスパニアに帰ることができる!」とホッとした様子だ。仲間内で笑顔で話し合っているのを見て、ハルコンは今回の件も無事解決してよかったと思った。
そんな感じでホッと胸を撫で下ろしていると、ファルマがススッと傍に寄ってきて、顔を近づけてくる。
「今回も、ちゃんと回収できましたか?」
耳元にそう囁いてくるため、ハルコンはこくりと頷く。
「いつもありがとう、ファルマさん!」
「はいっ」
ハルコンがニッコリと微笑むと、ファルマもまた上機嫌な様子で鼻歌を歌いながら、診断に使った器材を手際よく片付け始めた。




