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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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36 王立学校祭 その3_12

   *         *


 その時晴子が使った技を、「握手落し」という。

 道場の師範に特別に目をかけられていた晴子は、その技を「ここぞという場面で使いなさい!」と言われ、秘かに伝授されていたのだ。


 呆然とする少年達を横目に、スタスタと先程よりうずくまる入門生達の許に向かう。

 しばらく体のあちこちをさすって確認すると、ケガは大したことがないとワカった。


「「「「「オッ、オマエッ!? バケモンだぁーーっ!!」」」」」


 次々と上級生の少年達が叫び出す。

 晴子は至極冷静に、そちらの声の方に振り向いた。


「心外だなぁ。そんなワケないじゃないですかぁ!」


 ニッコリと微笑んだつもりだが、相手の顔は皆真っ青だった。


 ふふふっ。この技のイメージは、とにかく「先」を取って、肩甲骨で「波」を描くように回すことなんだよねぇ、……。


 そんなことを思い出しながら、ハルコンは特設の壇上に上がっていく。

 そして、キャスパー殿下の許に歩み寄ると、ゆっくりと左手を前に差し出した。


「「「「「!?」」」」」


 すると、……何だろう。先刻まで明朗活発だった殿下が私を前にして、極度に緊張した表情におなりになった。


 ふと背後から視線を感じ、ミラやシルファー先輩にも目を配った。そうしたら、彼女達もまた、何か不吉なものを見るような目でこちらを凝視してくるのだ。


 ありゃ。もしかしたら、技をかける前に、奥の手を見破られちゃったかな?

 

 キャスパー殿下は、心なし表情を青くして攻撃の姿勢を解いた。

 そして、正対したまま両手のひらを頭の両脇に掲げると、「降参だ!」と仰って、ペコリと一礼してきた。


「「「「「!?」」」」」


 その瞬間、会場中にドッとため息が漏れた。

 どうやら、壇上の緊迫したやり取りが観客席にまで達したことで、当てられてしまったのかもしれない。


 左手を前に差し出したまま、そのやり場に困ったハルコン。

 キャスパー殿下にこうも警戒されてしまっては、もうどうしようもない。


 まぁ、いいでしょう。ここが、落としどころですね。

 そう思いながら、ハルコンは左手を元の位置にゆっくりと戻した。


「さすがはセイントーク流合気術の『始祖』様だね、……。私は左手ではなく、正式に右手でキミと握手がしたいものだな!」


 攻撃の手をお止めになられたキャスパー殿下が、ごく自然な柔和さで、ハルコンに右手を差し出してこられた。

 ハルコンもまた、いつもの優しい笑顔で殿下の右手を恭しく拝借する。


「「「「「「「「「「ワアアアァァァーーッッ!」」」」」」」」」」


 その姿は誠に美しく、観客席から自然と拍手と歓声が沸き起こった。

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