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天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生  作者: 西洋司
第一部「ハルコン少年期」

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36 王立学校祭 その3_08

   *         *


「「「「「「「「「「キャァァーーッッ、危ないっ!!」」」」」」」」」」


 観客席の女性達から、多くの叫び声が上がった。


 でも、キャスパー殿下の体捌きは、まるで常人のそれを凌駕していた。

 次々と繰り出される掌打や蹴りの軌跡を、スルスルと舐めるように避けながら10数名の演者達に肉薄していくのだからね。


「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」


 演者達は咄嗟のことで、何が何やらワケがワカらない様子だ。

 自分達の繰り出した手技、足技を、ギリギリの線で搔い潜りながら肉薄してくる白き野獣。


 その敏捷性の高い獣は変幻自在に姿勢を変化させると、演者達の額を人差し指で「トン」、「トン」と続けざまに押していく。


 すると、バランスを一気に崩した演者達は、膝から崩れ落ちるようにへなへなと尻もちを衝いて倒れ込むのだ。


「「「「「「「「「何ぃぃ、これぇぇぇーーっっ!?」」」」」」」」」」


 観客達にとって、それはまさに神秘的な「舞踊」に近い何かに見えていたようで、……。

 その次の瞬間!


「「「「「「「「「「ワアアアァァァーーッッ!」」」」」」」」」」


 もう会場中、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。


「凄いね、ハルコン! キャスパー殿下のあの体捌きって、……一体、何なの?」


「うぅ~ん。そうだねぇ、……」


 ミラの言葉に、ハルコンはひとつだけ心当たりがあった。

 やっぱり、殿下の体捌きってさ、……「カポエラ」なのかなぁと。


「カポエラ?」


 ミラが素直に、小首を傾げて訊ねてきた。

 あぁ、……しまった。どうやら、口からその単語が自然とこぼれてしまっていたらしい。


 地球の南米で盛んな「武術」の一種で、一見すると「舞踊」に見えなくもない。

 庶民が侵略者からの圧政に抵抗するため、踊りを模した武術を編み出したと言われているのだが、……。


 もしかすると、このファルコニアの世界でも、同様の理由で人々の合間に広がっていたのかもしれないね。


 すると、皆の疑問に答えるかのように、女子マネージャーの明朗なアナウンスが、会場中に鳴り響いた。


『皆さぁーーんっ! キャスパー殿下の体術、大変驚かれたかと思いまぁーーっす! これは、殿下が近隣諸国を移動中、偶然現地で教わった体術のひとつでぇーすっ! 「ワンフル」と呼ばれ、主に犬狼族の獣人の間で広まっている、娯楽を兼ねた武術とされておりまぁーーすっ!』


 なるほど。やはり、獣人の技のひとつだったか。

 この「ワンフル」って、おそらく「カポエラ」と同じような経緯の下で、何とか部族を存続させるために開発されたものかもしれないなぁと、ハルコンは思った。


 そして、特設の壇上には、もう全ての演者達がひれ伏してしまい、立っている者はキャスパー殿下ただ一人だ。


 すると、……殿下は笑顔のまま、こちらを指差してこられた。


「もしかして、私のことですか?」


 そうハルコンが自身の胸元を指差しながら訊ね返すと、殿下はひとつ頷かれて、……それから、ニカリとお笑いになられた。

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