36 王立学校祭 その3_05
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「では、ハルコン。一番槍はオマエだっ! 頼むぞっ、ハルコンッ!!」
「はいっ!」
ハルコンはマルコム兄の言葉に快活に頷くと、列から一歩前に出る。
その列は、第一グラウンド、大会参加者総勢1000名を前に正対するように並び、王族のキャスパー殿下、シルファー先輩を含んだ大会主催者側の者25名で構成されていた。
ふふふっ。総勢1000人の目が、私に注がれている。
ハルコンがちらりと斜め後方のミラを見ると、彼女もグッと頷き返してくる。
よし。ならいっちょ、始めますか!
ハルコンは王立研究院での訓示で、所長として大勢の大人の研究員達を前に発言する機会が多い。そのため、あまり緊張しない性質を獲得していた。
でもさぁ、……子供や学生や社会人といった様々な層で構成された大勢の人間を前に大声で話しかけるのは、なかなかのプレッシャーだね。
ふふっ。まぁ気合、……気合でいくかな。
「皆さぁ~んっ、本日はようこそ! 大会参加ありがとうございまぁ~す! 私はハルコン・セイントーク。セイントーク流合気術の師範を務めておりまぁ~す!」
「「「「「「「「「「ウオオオォォォーーッ!」」」」」」」」」」
並々ならぬ歓声に、思わず圧倒されそうだね。
「これより、恒例のハルコンズ・ブートキャンプを行いまぁーっす。今から5分間、通常の『滝汗コース』を行いますので、……ではっ、いいかっ!! 準備をしろっ! さぁっ、これより始めるぞっ!!」
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」
「私はハルコン隊長だぁーっ! ようこそ、ハルコンズ・ブートキャンプへ! 先ずは、最強の5分コース、いくぞっ! さぁ、付いてこいっ!」
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」
「さぁっ、ムーブだっ! ヤァッ、レッツゴー!」
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」
「ムーブ、ムーブ、ムーブ、ゴー、カモンッ、レッツゴー!」
さて、大会参加者達は、皆ノリ気だな。ミラも師範として上手く動いているし、王族のお二人やステラ殿下も上々! さて、……皆さん、どこまで付いてこれるかな?
「……、カモンッ、レッツゴー! 1、2、3、4、レッツドゥーイット、カモンッ!」
2、3分続けたところで、会場の参加者達の息が上がってきた。
師範位を獲得済みの兄達は、緊張した表情で何とかこなしているのだが、……まぁ、これもいい経験になるだろう。
シルファー先輩とステラ殿下も、真面目な顔で一生懸命トレーニングに付いてこられている。うん、毎日の鍛錬の賜物だね。
それと、……まぁさすがというか、やはりというか、……キャスパー殿下は初めてのトレーニングを順調にこなしているご様子。
「「「「「「「「「「殿下ぁーっ、ファイトォーッ!!」」」」」」」」」」
その言葉に、爽やかに白い歯を見せてお笑いになるキャスパー殿下。
時折、観客達から声援を受けると、笑顔で軽く手を振って返すくらい、余裕のようだ。




