36 王立学校祭 その3_04
* *
『それでは皆さぁーんっ、これより王立学校武術系2大サークル「東方盾の会」、「セイントーク流合気術研究会」合同で、体術と演武の大会を開催いたしまぁーっす! 選手入場ですっ! どうか、万雷の拍手を以てお迎え下さぁーいっ!!』
王立学校の第一グラウンドに、大会開催を告げるアナウンスが飛んだ。
もちろん現代日本とは違って、マイクも拡声器もない世界だ。
でも、そこはさる者しかる者。両サークルから選ばれた声量豊かな者が、朗々と晴れやかに高らかなる声で叫ぶと、会場中に鳴り響いた。
その瞬間、大会に参列する者、観客席から事態を見つめる者、会場中全てのボルテージがマックスとなって、拍手と大歓声が沸き起こった。
「いよいよ始まったね、ハルコン!」
「うん。何だか、思った以上に盛り上がってる!」
選手入場の列最後尾で、ミラが少し驚いた表情で話しかけてくる。
ハルコンは列の中盤で、頭一つ背が高くすらりとした、でも膂力のありそうな両肩を持つキャスパー第一王子殿下の後ろ姿に注目する。
なるほど。ラスキン国王陛下の次代は、この方が担うワケか。
キャスパー殿下は全身に会場中の拍手と歓声を浴びながら、悠然と、でも若者らしくしなやかに列を進んでいく。
時おり周囲に手を振ると、観客席からの声援は更に高まっていった。とにかく凄いカリスマだと、ハルコンは思った。
なら、第二王女殿下であらせられるシルファー先輩も、気が気でないだろう。
そう思って先輩とステラ殿下の方を見ると、自身が少女で、かつ可憐なルックスだという特徴を最大限に活かすおつもりらしい。
お二人とも軽装服がよくお似合いになり、笑顔で周囲に愛想を振り撒いていらっしゃった。
確かに、お二人とも細身でしなやかな肢体の持ち主だ。
でも、必ずしも華奢で非力なワケではない。
何を隠そう、お二人には、私自らが「セイントーク流合気術」を伝授しているんだからね。
シルファー先輩は快活な体育会系の雰囲気をお持ちだが、ステラ殿下は一見すると文系タイプだ。とはいえ、「ハルコンB」を常日頃、欠かさず摂取されている。
お二人とも、必要最大限の筋肉を構成し、無駄のないバランス、体幹を既に獲得されていらっしゃるのだ。
そのおかげもあって、常人の感覚を遥かに超えた研ぎ澄まされた「先鋭さ」を、まさに獲得していると言えた。
主催者共同代表である兄達やイメルダらは、キャスパー殿下やシルファー先輩といった王族、隣国の姫君のステラ殿下まで参加していることを、とても光栄に思っているようだ。
その表情は、とても晴れやかで爽やか。大会がこれまで以上に盛り上がりそうな手ごたえを感じているのか、笑顔が眩しかった。




